東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2016」 選考結果について


助成先一覧 | 選後総評 | 助成概要と選考理由 | 選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)

 東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2016-被災地の生活再建に取り組むNPOの人材育成-」の新規助成ならびに継続助成の選考を行い、下記の通り決定いたしました(助成期間 2016年10月~2017年9月)。

大和証券フェニックスジャパンプログラム このプログラムは、大和証券株式会社による「ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.3 ―フェニックスジャパン―」の信託報酬の一部をご寄附いただき、日本NPOセンターが現地NPO応援基金の特定助成として市民社会創造ファンドと協力して実施するものです。2012年より開始し、年1回の公募により実施しています。

助成先一覧

【新規助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
16
1-1
和グルミからの経済復興を担う中核人材の育成
一般社団法人 SAVE IWATE
岩手県
盛岡市
446
16
1-2
中核スタッフの総合力強化による事業充実と組織強化プロジェクト
特定非営利活動法人 故郷まちづくりナイン・タウン
宮城県
登米市
264
16
1-4
被災地の障がい者・難病者支援力強化
認定特定非営利活動法人 いわき自立生活センター
福島県
いわき市
370

 ※新規助成は採択後に1団体より辞退の申し出があったため、助成番号に欠番を含む。

【継続助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
16
2-1
共育プログラムの発展と継続のための基盤づくりとその担い手となる若手スタッフの育成(2)
一般社団法人 おらが大槌夢広場
岩手県
大槌町
343
16
2-2
被災地の障がい者、高齢者等の持続的生活支援のための運営管理者育成(2)
特定非営利活動法人 愛ネット高田
岩手県
陸前高田市
250
16
2-3
被災地で暮らす障害者の素敵な生き方・はたらき方を支援する人材育成(2)
特定非営利活動法人 ポラリス
宮城県
山元町
354
16
2-4
線量が高い地域における発達障がい児サポートの支援力向上のためのスタッフ育成(2)
特定非営利活動法人 みんなのひろば
福島県
伊達市
380

※助成対象件数  7件(新規助成3件、継続助成4件)
※助成総額 2,407万円

選後総評

選考委員長 須田 木綿子

 本助成プログラムは、東日本大震災の被災者の生活再建に取り組む、現地NPOの人材育成を支援するものである。被災地のNPOが地域のニーズをくみ取り、効果的な支援活動を継続して行えるかどうかは、スタッフの育成とそれを通した組織基盤の強化が不可欠であると考え、2012年から開始された。今年は5年目となる。

[今年の応募案件の特徴]
 今年は助成条件に、育成対象となる職員は応募団体に1年以上雇用されている者という変更を行った。育成したスタッフが定着してくれなければ、本助成の目的も達成されない。そのため、育成対象スタッフの定着が見込める団体に助成をしたいという意図であった。これが直接の理由かどうかはわからないが、選考委員会での論点は例年とは異なるものとなった。
 まず、人材育成の意味の変化である。このプログラムの初期には、新しく雇用するためのスタッフの研修経費と、その間の雇用を確保するための人件費を賄うことを目的とする応募内容が多かった。しかし今年は、上記のような新しい助成条件に変更した結果、すでに応募団体で雇用され、一定の役割を果たしているスタッフが育成の対象となった。
 人件費のハードルをクリアした実績を持つ団体からの応募であるので、研修内容と経費が助成の焦点となる。このプログラムが目指していた、団体において長期にわたり中核的に活動する人を育てたいという、本来の目的に近づいたといえる。
 同時に、すでに雇用されているスタッフの育成であるから、申請書では、そのスタッフが関わる事業の資金の助成を求めるものではない(いわゆるプロジェクト助成ではない)ことを明示する必要がある。しかし、その点が必ずしも十分とは思われない申請書が少なからず見られた。人材育成を目的とするこのプログラムの、応募する側にとっての難しさが改めて推察された。
 あわせて、応募団体の活動内容が、震災に直接関連する事柄から、平時の日常的な課題に移行しつつある様子もうかがわれた。この傾向は昨年からもすでに見られていたが、今年はそれが一層強まったようである。現地の復興が、決して十分な速度とは言えずとも少しずつ進み、被災による課題に直結するようなニーズが減少したのかもしれない。あるいは、スタッフを雇用できるような比較的規模の大きい団体の応募が増える一方で、住民の手作り感にあふれるような団体からの応募が相対的に減少し、現地との密着感が薄れた可能性もある。

[選考過程と結果]
 今年の助成対象は、助成件数7件、助成総額2,407万円であった。このうち新規助成では18件の応募に対して3件、1,080万円を採択した。
 新規助成の選考の過程は例年通りの手順で進めた。まず、応募書類の全件について選考委員が事前に目を通し、評点とともにコメントを記した。事務局は、その評価内容のすべてを一覧できる資料を作成し、それをもとに選考委員全員が一堂に会して議論を行った。ここで採択候補案件を絞り込むとともに、それぞれの候補案件について、さらに情報収集が必要と思われる事項を整理した。これらの事項は多岐にわたり、事務局はそれらについて、該当する団体を訪問したり、電話での聞取りなどをして、確認作業を行った。その後、第二回の選考委員会を開催し、事務局からの報告をふまえて、最終的な決定を行った。
 新規助成については、先に述べたように、比較的規模が大きく、活動経験の豊富な団体からの応募が多かったため、このプログラム以外の複数の組織から助成金等の資金を得ているケースが少なからず見られた。こうして予算規模が拡大すれば、助成金の管理や、そのための組織のガバナンスのあり方も問われることとなる。今回は、この点も選考の重要なポイントのひとつとなった。
 継続助成の選考では、応募4団体に選考委員会の場に来ていただき、新規助成による活動状況と継続助成の取り組み内容についてのプレゼンテーションと、選考委員との質疑を行った。こうして、4件の応募すべてを採択した。助成額は1,327万円であった。こちらは、応募団体の経験知の高まりが実感された。プレゼンテーションでは、パワーポイント等を活用しての視覚的な情報も豊富で、楽しく様子をうかがわせていただいた。初年度のスタッフ育成の進捗状況と、助成を継続することによって期待できるさらなる成果が説得力をもって示され、応募いただいた団体全てが採択に至ったのは喜ばしいことであった。
 応募団体の皆様が、多忙な日々の業務の中にあっても、支援力と事業の継続性を高めるために、人材育成とそれを通じた組織基盤強化に努めておられることを、選考の全過程を通じて実感した。採択に至ったかどうかに関わりなく、皆様のお取り組みに深く敬意を表する。

【選考委員】
委員長 須田 木綿子(東洋大学 社会学部 社会福祉学科 教授)
委員   市川 斉 (公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会 常務理事)
委員   佐久間 裕章(特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 代表理事)
委員   手塚 明美(特定非営利活動法人 藤沢市市民活動推進連絡会 理事・事務局長)
委員   横山 正浩(大和証券株式会社 広報部 CSR課 担当部長(CSR課長))
委員   新田 英理子(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 事務局長)

助成概要と選考理由

【新規助成】

テーマ 和グルミからの経済復興を担う中核人材の育成
団体名 一般社団法人 SAVE IWATE
代表者 理事長 寺井 良夫
助成額 446万円
選考理由  この団体は、東日本大震災の復興支援を目的に立ち上がり、盛岡を拠点にボランティアを募り活動を始めた。被災者の就労支援と被災地の産業振興に力を注ぎ、2012年には岩手県内に49組の新規事業や業務を立ち上げた。現在も、盛岡へ避難している被災者に向け、支援を続けている。
 本助成では、4年半前から事業展開してきた、地域資源である和グルミを活用した事業の継続的な発展により安定した雇用の促進を図るものである。和グルミの加工や販売に関する研修や先進地の現場訪問などを通してスタッフ2名の育成を行う。育成対象スタッフ自身も避難者であり、長く担当してきた本事業の発展が安定した日常生活を取り戻すきっかけになることが見込まれる。また、和グルミの事業の発展が、組織の安定的な運営につながり、活動目的である地域経済の発展と地域産業の振興に寄与することを期待している。

 

テーマ 中核スタッフの総合力強化による事業充実と組織強化プロジェクト
団体名 特定非営利活動法人 故郷まちづくりナイン・タウン
代表者 理事長 小野寺 敏
助成額 264万円
選考理由  この団体は、9(ナイン)つの町(タウン)が合併し登米市が誕生したことを契機に、「協働のまちづくり」を実践するNPOとして、2009年に設立。東日本大震災では、隣接する南三陸町への支援を開始し、緊急支援の炊き出し、物資提供をはじめ、子ども支援プログラム、商店会復興事業、地域情報紙の発行を行った。
 この間、地元ボランティア希望者が増加しているにも関わらず、コーディネーター力が不足していることから、人材を適材適所に生かしきれていない現状を克服したいという強い思いがある。本助成により次世代のリーダーとなる中核スタッフを育成することを目標として、OJTによる実務研修やファンドレイジングなどの外部研修に取り組む。
 地域密着型のまちづくりNPOとしての役割が地域から一層求められている。特に、登米市は、南三陸町や気仙沼等の沿岸部からの移住者が1,000人を超え、受入れ体制を早急に整える必要性に迫られている。目先の活動に追われるだけでなく、10年先のビジョンを見据えた展望を持って、活動していくための人材育成になることを期待したい。

 

テーマ 被災地の障がい者・難病者支援力強化
団体名 認定特定非営利活動法人 いわき自立生活センター
代表者 理事長 長谷川 秀雄
助成額 370万円
選考理由  この団体は福島県いわき市において、障がい者の自立支援を掲げ、約20年間活動してきた。また、3.11直後から被災者支援にも取り組み、NPOネットワークの形成を下支えしてきた。これらの実績が評価され、国庫補助を受け、障がい者地域生活支援施設を建設中である。また、ALSや筋ジストロフィーなど人工呼吸器をつけ、在宅生活を送る人への訪問介護事業を、県内4拠点で展開している。福島県は、震災後、人口減少に拍車がかかり、介護人材の確保が極めて厳しい状況となっている。そのような中、同団体では、設立から20年が経過し、リーダー層の世代交代が課題となってきている。本助成では、上記の施設建設に伴う障がい者介護事業の規模拡大と経営の安定化を着実に図りながら、なおかつ被災者支援などの地域課題に取り組むために、個々の事業責任者であったスタッフ2名を組織の中核となるリーダーとして育成することを目標とする。団体内部でのNPOマネージメントに関する研究会や、環境、子ども支援といった他分野の団体訪問を通して、経営・人材育成等のスキルアップに取り組む。
 今回の助成が組織基盤強化につながり、震災・原発事故避難者等への被災者支援や、高齢者・障がい者の介護ニーズといった社会的課題の解決につながることを期待したい。

 

【継続助成】

テーマ 共育プログラムの発展と継続のための基盤づくりとその担い手となる若手スタッフの育成(2)
団体名 一般社団法人 おらが大槌夢広場
代表者 代表理事 臼沢 和行
助成額 343万円
選考理由  この団体は、岩手県大槌町において生活再建、産業再生のための独立起業支援や、町民のコミュニティ構築を目的として、2011年11月に設立された。これまで、「おらが大槌復興食堂」、「復興資料館」、「コミュニティスペース」の運営、「週刊大槌新聞」の発行などを通して、町内外の多様な人たちが集うプラットフォーム的な役割を果たしてきた。
 本助成では若手スタッフの育成を目指しており、町外の若手世代と町内の中高生との教育交流事業であり、さらに将来の大槌を担う次世代育成として位置付けている「共育プログラム」の担当者として、修学旅行や大学・青少年団体などの若者グループを、大槌町へ誘致する取り組みの企画・実施が一人でできるようになるため、OJTや外部講座の受講などを通じた育成を行ってきた。継続助成では、「共育プログラム」のスキルの定着を図るとともに、育成対象スタッフ自身が「自分の強みを認識する」ことで独自のスタイルの確立を目標としている。
 大槌町は、震災前から若者の流出があり、震災を機にさらに加速化している。そのような中、地元に残った若者が様々な困難を抱えながらも、このプログラムが、街の再生と新たな地域の活力創造の機会になることを期待したい。

 

テーマ 被災地の障がい者、高齢者等の持続的生活支援のための運営管理者育成(2)
団体名 特定非営利活動法人 愛ネット高田
代表者 代表理事 岡本 幸子
助成額 250万円
選考理由  この団体は、2002年に岩手県陸前高田市のNPO法人認証第一号として、さまざまな団体との連携を大切にしながら、福祉や社会教育の充実を図る活動を行ってきた。また、具体的に地域の福祉ニーズにあった福祉支援活動の実施を目指して、障がい者や要介護高齢者の車両での移動支援活動や、介護保険事業を展開している。震災時には団体自体も被災し、中核的なメンバーを亡くしながらも、地域のために残ったメンバーで活動を継続させてきた。団体として、組織運営をしっかりと管理するスタッフの育成は急務であり、本助成により団体の組織運営の中心となる人材の育成を目指している。
 新規助成では、総務・経理・人事等の運営管理業務に関してOJTを行うとともに、外部研修や資格取得を通した知識中心の基礎力向上を行ってきた。継続助成では、その知識を活用・応用できるよう、さらにOJTや研修等を通して実践力や応用力を身につけ、「知っている」から「できるようになる」ことを目標としている。
 本助成により事務局体制が整備され、助成金・補助金が獲得できるようになるなど、着実に人材育成の進捗と効果がうかがえる。継続助成により、団体のさらなる組織基盤強化と成長を期待したい。

 

テーマ 被災地で暮らす障害者の素敵な生きかた・はたらき方を支援する人材育成(2)
団体名 特定非営利活動法人 ポラリス
代表者 代表理事 田口 ひろみ
助成額 354万円
選考理由  この団体は、震災後、町営の施設で活動をしていた関係者の強い想いで2012年より活動を開始し、2015年5月には宮城県亘理郡山元町では初となる民間の障害者施設を立ち上げた。
 本助成では事務局長の育成を目指しており、新規助成時には、法人設立間もない時期のため、まず団体運営の安定に重点を置き、労務・総務・会計のスキル向上に力を入れて人材育成を行ってきた。同団体の総会資料は充実しており、情報発信、事務局体制がしっかりしてきたことが実績としても確認ができた。
 今回の継続助成では、事務局業務のさらなる効率化と、地域における障害者支援を担うリーダーとしての成長を目指している。利用者や保護者との丁寧な関係構築に向けて、OJTによる「保護者カフェ」も企画している。視察研修も3か所組まれており、それぞれバラエティに富んだ視察先で、地域の実態に合ったサービスについて幅広い知見を持ち進めていくことを期待している。

 

テーマ 線量が高い地域における発達障がい児サポートの為のスタッフ支援力の向上
団体名 特定非営利活動法人 みんなのひろば
代表者 理事長 齋藤 大介
助成額 380万円
選考理由  この団体は、福島県伊達市で2004年に設立され、不登校で悩む児童生徒と保護者を支援するため、フリースクールを運営している。東日本大震災以降は特に発達障がいを抱えた不登校の児童・生徒が増加しており、ニーズに対応して雇用したスタッフ2名が、本助成の育成対象者となっている。
 現在の主軸の事業であるフリースクールに加え、今後、放課後等デイサービス事業の開始を企図しており、より地域社会のニーズに応えるとともに、既存事業の基盤を生かしつつ制度事業を行うことで、団体運営の安定化も期待できるとしている。
 新規助成では、その準備としてスタッフの育成を行ってきた。スタッフは、社内研修、他施設における実務研修等を通じて、それぞれ得た気づきを今後の運営にどのように生かしていくか、各々が果たす役割について真摯に考察している。また、スーパーバイザーも2人のスタッフの個性に応じた指導をきめ細かく行っており、継続助成による育成効果についても期待できると考える。内部でのコミュニケーションも活発で、地域のニーズに応じた団体としてのさらなる組織基盤の強化を期待している。