東日本大震災現地NPO応援基金(一般助成・第3期)第1回助成審査結果について


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東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]第3期第1回助成の審査を行い、
下記の通り決定いたしました。

助成先一覧

No. 団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
1 特定非営利活動法人応援のしっぽ 宮城県
石巻市
300
2 特定非営利活動法人居場所創造プロジェクト 岩手県
大船渡市
280
3 特定非営利活動法人海の自然史研究所 宮城県
南三陸町
250
4 公益社団法人みらいサポート石巻 宮城県
石巻市
300

*助成件数:4件  助成総額:1,130万円
*第3期は、本基金[一般助成]第2期および[特定助成]に該当する公募プログラムで助成実績がある団体を対象に実施し、2016年7月25日~8月1日までのエントリーについて事前審査および本審査を行い助成が決定したもの。
*助成期間は、応援のしっぽが2016年10月1日から2017年9月30日までの1年間。居場所創造プロジェクト、海の自然史研究所、みらいサポート石巻は2016年11月1日から2017年10月31日までの1年間。
*各助成対象団体の本基金における助成実績は以下のとおり。
応援のしっぽ:[特定助成]東日本大震災復興支援JT NPO応援プロジェクト/第4回
居場所創造プロジェクト:[特定助成]「しんきんの絆」復興応援プロジェクト/第1回(一般公募枠)
海の自然史研究所:[特定助成]東日本大震災復興支援JT NPO応援プロジェクト/第3回、第7回
みらいサポート石巻:[一般助成]第2期/第5回、第7回、第9回。

審査総評

東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]第3期
審査委員(座長) 早瀬 昇

東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]は、2016年7月より、『未来をつくる持続的な組織をめざした組織基盤強化』を助成する第3期の募集を開始した。8月1日の応募締切までに9団体のエントリーがあり、8月上旬に事務局担当者で事前審査を実施した。事前審査では、「今回の助成で何を解決したいのかが見えない」「組織課題に関する現状分析が不十分」などの理由で5件が不採択となり、結果通知の際に各団体にフィードバックを行う一方、組織基盤強化の志向が強いと考えられた4団体を本申請の対象とした。

「計画段階から事務局がフォローしつつ組織基盤強化に取り組む」という寄り添い型の今期助成では、4団体に対して助成事務局が本申請に向けた企画提案書作成のフォローを行い、これを審査委員が本審査することとなった。ただし、いわゆる「ドナードライブ」、つまり助成者側の志向・関心で助成対象団体を操作することのないよう、団体の主体性を尊重した企画提案づくりに心がけた。

こうして本申請がなされた4件について9月中旬に本審査を行った。4件中1件は提案内容を評価して助成を決定し、3件は「過去の助成成果を基にした事業展開を検討するべき」「ビジョンに照らして組織基盤強化で取り組むべき優先課題を明らかにすべき」などの理由で提案内容の修正を依頼した。審査結果を受けて、3団体と助成事務局で提案内容の修正を図り、再提出された企画提案書による再審査の結果、3団体とも助成を行うこととなった。各団体の助成事業の概要は以下のとおりである。

「応援のしっぽ」のテーマは、「収益性の改善による組織基盤強化」。被災地で生まれた多くの“手仕事コミュニティ”の販売・相談窓口を担ってきたが、販売管理システムの改善、活動実績の広報物作成、手作り品の商品開発力の向上により、互助組織としての力量形成を進めようという取り組みだ。目標が実現できれば、被災各地での“手仕事コミュニティ”の活性化にもつながり、大きなインパクトが期待できる。

「居場所創造プロジェクト」のテーマは、「居場所ハウスに於ける新たなコミュニティの形成のための組織基盤の強化」。被災後、大船渡に拠点を生み出したが、1.拠点利用の多様化による財政基盤の確立、2.運営スタッフの増員・研修による事務局の基盤強化と後継者育成を目指す。目標が実現されれば、単なる場所の維持ではなく、地域の再生に向けた拠点としての機能が充実されると期待される。

「海の自然史研究所」のテーマは、「南三陸自然史の学び舎構想を進める中でのビジネス展開部分の構築」。事業委託に収入の大半を依存している状況に甘んじることなく、自立的な「自然史の学び舎企画オフィス」として機能を向上するため、マーケティング力、企画開発力、実践力、収支管理力などの向上を進める。被災地で暮らす人々の幅広い参画が見えづらい点は残念だが、被災地復興の一つのモデルとして期待される。

「みらいサポート石巻」のテーマは、「復興祈念公園における震災伝承につなぐ ~石巻で震災後設立した公益法人として持続的な運営の実現に向けた組織基盤強化」。1.専門家の助言による体制の見直し、2.自由度の高い資金獲得、3.震災伝承事業の行政施策の中での位置づけ獲得を目指す。これらの目標が実現すれば、市民目線での復興推進の要となることも期待できる。

なお、今回の申請全般を通じて、ボランティア活動や寄付などの「参加の機会」を提供する力を高めて自立的運営を目指すという、NPO特有の経営形態に対する関心・理解が低い点は気になった。現地NPO応援基金は、被災地の市民が主体となった復興を後押ししようとしている。それだけに、今後、ボランティアマネジメント力やファンドレイジング力の向上など参加型の組織基盤整備についても、努力するよう期待したい。

【参考:応募、審査のプロセス】
○募集開始: 7月14日(木)
事務局よりエントリー対象の48団体に対し、メールにて応募要項とエントリーシートを送付。
○エントリー期間: 7月25日(月)~8月1日(月)、エントリー件数: 9件
○事前審査(事務局4名による書面評価および事前審査会を実施)
本申請対象として4件を選出
○本申請期間: 8月29日(月)~9月2日(金)
団体と事務局が対話を重ねながら企画提案書を作成
○本審査会: 9月14日(水)
1団体(応援のしっぽ)については提案内容に基づき助成を決定、3団体(居場所創造プロジェクト、海の自然史研究所、みらいサポート石巻)については提案内容を精査し、再審査に諮ることとなった。
○再審査: 10月28日(金)~11月4日(金)
修正版の企画提案書に基づき再審査を実施し、3団体いずれも助成を決定した。

*   *   *

[審査委員]
早瀬 昇   認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 代表理事  ◎座長
栗田 暢之  認定特定非営利活動法人レスキューストックヤード 代表理事
山岡 義典  特定非営利活動法人市民社会創造ファンド 運営委員長

[助成事務局]
認定特定非営利活動法人日本NPOセンター
特定非営利活動法人市民社会創造ファンド

助成概要と推薦理由

組織基盤強化テーマ 収益性の改善による組織基盤強化
団体名 特定非営利活動法人 応援のしっぽ
主な活動地域 宮城県石巻市
推薦理由 本団体は、人や組織を「応援したい」という思いの実現のために、震災後に宮城県石巻市で設立された。被災地で活動に取り組む小規模団体への継続的支援を目指して、主に被災地で作成されている「モノ」の販売の仲介をする団体である。
5年の月日の流れは、各地で東日本大震災の風化を広げ、生きがいや仕事づくりとして進められていた「モノづくり」による売り上げにも陰りが見え始めてきた。その打開策として、本団体ではカタログ販売やネット販売などに力を入れた事業を展開してきている。
今回の助成では、その販売スキルの向上と販路開拓、在庫管理などのシステム整備と充実を図ることで、個々の団体の売り上げの向上につながり、それにより本団体の自立を促す効果を期待して助成することとした。計画型助成の仕組みである第3期の助成において、助成事務局もしっかりと団体に伴走し、十分に効果が上がるように支援されることを期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 居場所ハウスに於ける新たなコミュニティの形成のための組織基盤の強化
団体名 特定非営利活動法人 居場所創造プロジェクト
主な活動地域 岩手県大船渡市
推薦理由 本団体は、岩手県大船渡市末崎町において、2013年の設立以来「居場所ハウス」の運営を通して、地域住民が自分にできる役割を担いながら互助の仕組みを築くことを目指している。
今回の助成では、近隣には災害公営住宅や防災集団移転住宅が建設され、被災者が新たな生活へと移転するなか、人々の生活再建やコミュニティ形成のサポート拠点としての「居場所ハウス」の機能強化を目標としている。単なる場所の維持ではなく、地域の再生に向けた拠点としての機能を充実させるため、地域内外の様々な人々が運営に参画することや将来的な自立にむけた財政基盤づくりに取り組む。
利用者を増やすということは、住民ニーズを五感でとらえ、それを具体化する企画力にかかっている。移転してきた住民と以前から住んでいた住民が新たなコミュニティを形成するためには、このタイミングでの取り組みが非常に重要である。「居場所ハウス」が、地域の多世代交流施設として定着し、交流と復興の拠点となることを期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 南三陸自然史の学び舎構想を進める中でのビジネス展開部分の構築
団体名 特定非営利活動法人特定非営利活動法人 海の自然史研究所
主な活動地域 宮城県南三陸町
推薦理由 本団体は2005年に設立され、「海に学ぶ」を基本理念とし、沖縄に拠点を置き、全国を対象に海の科学教育や海の研究に取り組んでいる。
震災前は南三陸町と連携して海を学ぶための教育プログラムや指導者の養成に取り組んできた。震災後は南三陸町にも現地拠点を置き、被災した南三陸町の海や自然の価値を再発見して貰うため、「南三陸自然史の学び舎構想」を軸に“食”と“もの”からアプローチした事業に取り組んでいる。
本助成では、団体のミッションを実現するには行政依存の体質から脱却し、自主事業力を蓄えることが重要であるとの認識の下、専門家の力を借りて、JT NPO応援プロジェクトで新規に立ち上げた「味わい開発室事業」と「いであるミュージアムショップ事業」に関わる若手スタッフの企画開発力、運営力の強化に取り組む。
計画の内容は大変具体的であり、着実な成果が上がることを期待したい。また、本助成を通じて、団体の市民参加力が高まるよう期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 復興祈念公園における震災伝承につなぐ
~石巻で震災後設立した公益法人として持続的な運営の実現に向けた組織基盤強化~
団体名 公益社団法人 みらいサポート石巻
主な活動地域 宮城県石巻市
推薦理由 本団体は、震災後に石巻青年会議所の関係者が中心となり、地元で支援活動に取り組むNPO等への情報提供や連絡調整を担う中間支援団体として活動を開始した。現在は、震災伝承や地域の防災に関わる事業を実施している。
ミッションには、「災害発生時に市民一人ひとりが自分の命を守ることが出来る社会を創ること」が掲げられており、その手法として震災伝承が重要であると考え、資料館の施設運営や語り部のプログラム等に取り組んできた。今回の助成では、持続可能な形の実現に向けて組織体制の見直しと震災伝承に関するノウハウ構築を図りながら、委託事業に頼らず市民活動として継続していくための自由度の高い資金の獲得と、行政施策の中に復興祈念公園(2020年設置予定)における市民参加型の維持管理運営の位置づけ獲得を両輪で目指す。
今回の取り組みを通じて、震災後に設立された現地の公益法人として、地域を支え、地域に支えられる組織の実現に向けた基盤強化が図られることを期待したい。