東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2017」 選考結果について


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 東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2017-被災地の生活再建に取り組むNPOの人材育成-」の新規助成ならびに継続助成の選考を行い、下記の通り決定いたしました(助成期間 2017年10月~2018年9月)。

大和証券フェニックスジャパンプログラム このプログラムは、大和証券株式会社による「ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.3 ―フェニックスジャパン―」の信託報酬の一部をご寄附いただき、日本NPOセンターが現地NPO応援基金の特定助成として市民社会創造ファンドと協力して実施するものです。2012年より開始し、年1回の公募により実施しています。

助成先一覧

【新規助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
17
1-1
対象者の事務局長就任を目的とした資金調達面能力を主軸とする人材育成
認定特定非営利活動法人 桜ライン311
岩手県
陸前高田市
391
17
1-2
被災者の生活再建を迅速に行うための防災ボランティアリーダー育成事業
特定非営利活動法人 いわて連携復興センター
岩手県
北上市
420
17
1-3
活動の自立のための中核人材育成事業
特定非営利活動法人 未来図書館
岩手県
盛岡市
300
17
1-4
地域活性化を目的とした羊飼育の担当スタッフのスキル向上
一般社団法人 さとうみファーム
宮城県
南三陸町
374
17
1-5
持続可能な障害児支援を行うチームのマネジメントの視点を養う
特定非営利活動法人 奏海の杜
宮城県
南三陸町
387
17
1-6
組織基盤強化のための事務局力育成
一般社団法人 日本カーシェアリング協会
宮城県
石巻市
455
17
1-7
運営体制整備のための人材育成事業
特定非営利活動法人 ビーンズふくしま
福島県
福島市
363

【継続助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
17
2-1
和グルミからの経済復興を担う中核人材の育成(2)
一般社団法人 SAVE IWATE
岩手県
盛岡市
222
17
2-2
中核スタッフの総合力強化による事業充実と組織強化プロジェクト(2)
特定非営利活動法人 故郷まちづくりナイン・タウン
宮城県
登米市
241

※助成対象件数  9件(新規助成7件、継続助成2件)
※助成総額  3,153万円

選後総評

選考委員長 須田 木綿子

 本助成プログラムの目的は、東日本大震災の被災者の生活再建に取り組む現地NPOの人材育成を支援することである。被災地のNPOが地域のニーズをくみ取り、効果的な支援活動を継続して行えるかどうかは、スタッフの育成とそれを通した組織基盤の強化が不可欠であると考え、2012年から開始された。今年は6年目となる。

[今年の応募案件の特徴]
 このプログラムは、被災地に関わる皆様とともに、震災後の年月を過ごしてきた。被災地の状況の変化に応じて、応募される団体も、活動内容も、選考委員会で議論される内容も変わった。変わらないのは、できるだけ多くの団体を応援したいというプログラム関係者の意欲と、選考過程の白熱ぶりである。
 このプログラムに応募書類が寄せられると、応募要件を満たしているか等の形式的なチェックを通過したすべての応募用紙を、全選考委員が目を通して審議を行う。こうして採択候補を絞り込むのだが、この第一段階の選考では常に、多めに候補を確保する。事務局担当者は、これら候補団体を訪問し、選考過程であげられた疑問や追加情報を収集する。この新たな情報をもとに第二段階の選考委員会をもち、最終的な決定がなされるのだが、今年度はその第二段階での選考結果が、第一段階での結果と異なるケースが目立ったように思う。
 今年度の選考で評価の別れ目となったのは、次の3点である。ひとつは、組織の持続可能性。このプログラムは人材育成がテーマであるので、育成された人材には、助成の成果を応募団体で発揮していただき、ひいては被災地に貢献していただきたい。そのためにはまず、その人材が落ち着いて活動に専念できるような環境を応募団体に整えていただかなければならない。
 応募団体の活動内容が意義の高いものであり、育成対象として申請書に記載されている方にも期待が持たれるのに、応募団体の持続可能性に確信が持てないがゆえに助成に至らないケースがある。非常に残念である。
 評価の分かれ目のポイントの二点目は、組織の潜在力。第一段階の選考では評価が分かれていた団体に事務局が訪問をして、書面では十分に表現されていなかった応募団体の活動の意義や可能性が把握され、一転して満場一致で採択されるケースもあった。
 最後は、哲学や理念である。多くの応募団体が、財政的自立を目指して、各種の事業活動を企画・実施している。しかし、それらの活動の目的は何だろう。被災地における経済活動は、悪質なものを除けば、担い手が企業であるのかNPO法人であるのかに関わり無く、地元に何らかの貢献を成すだろう。そのような中で応募書類を通じて私たちが探しているのは、記載されている事業活動によって、被災地内外の人々や組織がどのようにつながり、どのような夢が共有され、金銭で換算される成果に加えて、どのような豊かさが実現されるのか、という物語である。非営利の組織が取り組む経済活動の意義と言い換えてもいいだろう。精緻なビジネスプランが組み立てられていても物語性が感じられない活動は、残念ながら、この助成プログラムの支援の対象とはなりにくい。
 現地の復興が進み、応募団体の活動も、震災に直接関連する事柄から、平時の日常的な課題に移行しつつある。それに伴って、応募団体の長期的な持続可能性と物語性が重要性を増している。あわせて今後は、自分たちの活動の良さを書面で十分に表現できるような技能を高めていただけると、各方面からの応援をより得られやすくなるだろう。

[選考過程と結果]
 今年の助成対象は、助成件数9件、助成総額3,153万円であった。このうち新規助成では24件の応募に対して7件、2,690万円を採択した。
 新規助成の選考の方法は、上に述べたところである。書面では判断が難しかったケースの多くは、育成計画や育成方法の書き込みが十分ではないことに由来する。事務局が訪問した段階で、書面では表現されていなかった育成方法が計画されていたことを知ったり、あるいは採択後の事務局からのフォローによって大幅に育成過程の改善が見込める場合には、積極的に採択した。助成を機に、事務局からの支援を大いに引き出し、このプログラムによる助成事業のためだけでなく、団体の今後の一層の発展に役立てていただきたい。
 継続助成の選考では、応募3団体に選考委員会の場にお出でいただき、新規助成による活動の進捗と継続助成の計画に関するプレゼンテーション、および選考委員との質疑を行っていただいた。こうして、2件の応募を採択した。助成額は463万円であった。2年目のスタッフの育成目標や方法として、応募内容が説得力を持っていたかどうかで、明暗が分かれた。選考委員は、助成開始直後の合同研修会で育成対象のスタッフの皆さんにお会いしている。ほぼ1年を経て継続助成の選考委員会の場で再びお目にかかり、力強さを増した様子を拝見するのは、選考結果の如何に関わらず、喜ばしいことであった。

【選考委員】
委員長  須田 木綿子(東洋大学 社会学部 社会福祉学科 教授)
委員   市川 斉 (公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会 常務理事)
委員   佐久間 裕章(特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 代表理事)
委員   手塚 明美(特定非営利活動法人 藤沢市市民活動推進連絡会 理事・事務局長)
委員   横山 正浩(大和証券株式会社 広報部 CSR課 担当部長(CSR課長))
委員   吉田 建治(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 事務局長)

助成概要と選考理由

【新規助成】

テーマ 対象者の事務局長就任を目的とした資金調達面能力を主軸とする人材育成
団体名 認定特定非営利活動法人 桜ライン311
代表者 代表理事 岡本 翔馬
助成額 391万円
選考理由  この団体は、次の大震災で人命が失われることのない社会を目指し、東日本大震災を後世に伝承し次世代の命を守るために、津波到達ライン上に桜を植樹して風化を防ぐとともに、全国に防災、減災について意識喚起をすることを目的としている。これまでに陸前高田市内248か所に1,227本を植樹。今後も、地域住民や全国からのボランティアとともに17,000本の植樹を計画しており、全事業費として8億円が必要になると試算している。
 本助成では、上記を実現できる組織となるべく、代表理事が事務局長を兼任している現在の状態を解消し、次期事務局長を育成するものである。事務局のマネジメントと寄付に関する広報戦略作りのスキルを習得し、育成対象者とともに、他のスタッフも成長することを目指す。震災から6年半が立ち、ファンドレイジングに苦労するNPOが多い中、寄付に重きを置いたNPOとして、成功事例になることを期待したい。

 

テーマ 被災者の生活再建を迅速に行うための防災ボランティアリーダー育成事業
団体名 特定非営利活動法人 いわて連携復興センター
代表者 代表理事 鹿野 順一
助成額 420万円
選考理由  この団体は、岩手県内の中間支援NPOが集まり、東日本大震災後の2011年4月に立ち上がった組織である。設立以降「震災復興に特化した地元の中間支援NPO」として、外部支援と被災地を繋ぐマッチングや支援団体の課題解決等の後方支援活動を行ってきた。
 2016年度より活動の柱を「中間支援」「防災」「震災伝承・アーカイブ」とし、同年8月末に発生した台風10号被害においては、県内外6つのNPOと「いわてNPO災害支援ネットワーク」を組織。特に甚大な被害を受けた岩泉町において支援団体・行政・社会福祉協議会との連絡会議の開催や、ボランティアセンターの運営補助等の活動を行った。そのなかで特に「平時からの行政・社協・NPOの連携体制の構築」と「緊急支援フェーズにおける支援のノウハウの不足」については、喫緊の解決課題であると痛感した経緯がある。
 今回の助成により、「復興支援のその先」を見据え、行政・社協との顔の見える関係づくりを行い、今後の大規模自然災害時において被災者の一日も早い生活再建に向けたNPO等のボランティア活動をけん引する中心的な人材が育成されることを期待する。

 

テーマ 活動の自立のための中核人材育成事業
団体名 特定非営利活動法人 未来図書館
代表者 理事長 古澤 眞作
助成額 300万円
選考理由  この団体は、2004年に設立され、子どもに対するキャリア教育を実践してきた。特に、東日本大震災後は、岩手県内の被災地の小中高校において、のべ2,000名の児童生徒対象にキャリア教育支援プログラムを実施した。
 本助成では、実施事業による社会的経済効果の検証を見える化し、その価値を伝えていくことが団体の自立につながることを確信し、育成対象者自身の検証力、情報発信力の育成を目的とする。さらに、先進地事例への視察を通して、「子どもと大人の学びあい」のパッケージ開発力を強化していく。
 岩手県における生活再建は徐々に落ち着いてきているが、いまだに「こどもの生活再建」が途上の地域や家庭もあり、沿岸部では不登校の子どもが多いという報告もある。このように子どもたちが自分の未来をイメージしにくい環境の中、キャリア教育支援プログラムを通じて、子どもたちに将来への希望やビジョンを持つ機会を提供できることを期待したい。

 

テーマ 地域活性化を目的とした羊飼育の担当スタッフのスキル向上
団体名 一般社団法人 さとうみファーム
代表者 代表理事 金藤 克也
助成額 374万円
選考理由  この団体は、東日本大震災の直後から漁業を中心に復興支援活動を始め、各種イベントの開催、子ども達への遊びの提供等を実施した。2014年1月には、南三陸町歌津寄木に羊牧場を開設。施設のほとんどが手作りで、自分たちが伐採した木を利用して遊具やウッドテラス等も整備している。ここは、遊び場の少なくなった地域の子どもたちの遊び場として認知されるなど、地域への浸透度は高い。また、震災から6年が経ち、県外からのボランティアが減少傾向にある中、この団体のボランティア定着率が高いことも、団体活動の魅力故ではないかと思われる。
 今回の助成対象である羊の飼育のスキル強化事業は、南三陸という地域色をより濃く出すため、特産であるワカメを混合した飼料を活用するなど、地域への根付きに既に効果を発揮している。羊飼育担当スタッフのスキルアップにより今後の組織活動の発展的な継続につながるとともに、地域全体にそのスキルが還元されること、そして引き続き地域に愛される牧場となることを強く望む。

 

テーマ 持続可能な障害児支援を行うチームのマネジメントの視点を養う
団体名 特定非営利活動法人 奏海の杜
代表者 理事長 太斎 京子
助成額 387万円
選考理由  本団体は、宮城県南三陸町で設立され、放課後等デイサービス事業等を手掛けている。社会的弱者に対するセーフティネットが脆弱であり、障がいを持った人々に対するケアが望まれる地域において、特に子どもの将来にフォーカスした活動方針は、同地域の未来を考えると、多いに共感できる。
実際に、放課後等デイサービスの拠点を登米市として以降も、南三陸町からの利用者が減らないことは、地域に必要とされている存在である証左であろう。言うまでもなく、子どもの将来を見据えた事業には、組織の持続性が特に重要であると考えられる。
 今回の助成により、外部研修により若手スタッフのマネジメント力を強化するとともに、スタッフ全員を巻き込んだチームビルディングのワークショップを通じて組織内のチーム力を強化する。
 様々なステークホルダーとのコミュニケーション能力の向上に加え、どう経営を安定させるかも、獲得すべき重要な視点であろう。利用者に寄り添いつつ、経営の舵取りを行う中核となるべく、バランスのとれた育成計画の実行を期待したい。

 

テーマ 組織基盤強化のための事務局力育成
団体名 一般社団法人 日本カーシェアリング協会
代表者 代表理事 吉澤 武彦
助成額 455万円
選考理由  この団体は、東日本大震災直後から、宮城県石巻市において、生活者の必需品といえる移動のための車を提供するプロジェクトを開始した。企業や個人の寄付により車を調達し、被災者や地域住民がルールをつくり共同利用するという「コミュニティ・カーシェアリング」という仕組みは、被災者の生活再建のみならず、コミュニティの再興に向け有効な仕組みだったであろう。更に、外出困難な生活弱者へも波及し、車の共同利用の需要は高まったままであると推察できる。
 団体としては、レンタカー事業、カーリース事業、保険代理店事業などを広く展開しており、些少の収益をもって支えている。カーシェアリング事業だけではなく、これらの事業は、展開している地域にとって、なくてはならないものとなっており、今後の経営を支える事務局の育成は急務と受け止めた。
 本助成により、税理士や社労士等、専門家のアドバイスを受け、安定した経営管理体制を確立し、生活支援とコミュニテイの活性化に寄与し続けることを期待する。

 

テーマ 運営体制整備のための人材育成事業
団体名 特定非営利活動法人 ビーンズふくしま
代表者 理事長 若月 ちよ
助成額 363万円
選考理由  この団体は、不登校の子どもやひきこもりの青年などに対して安心できる居場所を提供し、ゆるやかな社会参加を促すことで、その自立を支援している。震災後は仮設住宅で暮らす子どもたちが勉強したり遊んだりできる環境を自治会や地域コミュニティと協力して作る活動や県内外避難をしている親子の状況把握や心のケア、避難先から戻ってきた母親が地域の人たちと緩やかにつながり合う拠点運営などを行ってきた。
 本助成では、震災以降の急激な組織規模の拡大に対応すべく、「現場と一体感を持って対象者に沿った事業展開をしていける組織」というビジョンを持ち、現場の実情を理解しながら、管理の視点も持った、組織運営ができるスタッフを育成する。また、対象スタッフの育成だけではなく、その後に残る人材育成プログラムづくりも視野に入れている。
 長期化する避難生活の中で、刻々と変化する状況を現場の活動を通して捉え、必要な支援を展開し続けられる組織となることを期待したい。

 

【継続助成】

テーマ 和グルミからの経済復興を担う中核人材の育成(2)
団体名 一般社団法人 SAVE IWATE
代表者 代表理事 寺井 良夫
助成額 222万円
選考理由 この団体は、東日本大震災を契機に設立された。現在では、盛岡を拠点に、地域資源である和グルミを活用とした事業(以下、本事業)によりビジネス創出のほか、縫製や樹皮細工による手仕事、被災地支援の物産販売、盛岡へ避難された方への相談受付等を実施している。
 新規助成では、研修や先進地訪問を通して和グルミの製品づくりの技術力向上や販売の知識を得ることにより育成対象者のスキルアップを図るものであり、育成対象者自身が団体の中核的な人材として意識が高まってきたことが報告された。継続助成では、商品の生産から販売出荷までの責任者として、チームのとりまとめができるように、リーダーとして育成することを目指す。
 本事業の事業収支は過去数年間は、赤字が続いておりまた、材料である和グルミの安定的な確保など課題も多い。震災への関心や支援が減少する中、被災地での「生きがい、やりがい」のためのモノづくりにも陰りが見え始めた。しかし、課題を抱えながらも、復興支援における地域資源を活用した物販のあり方について、モデルケースとなることを期待したい。

 

テーマ 中核スタッフの総合力強化による事業充実と組織強化プロジェクト(2)
団体名 特定非営利活動法人 故郷まちづくりナイン・タウン
代表者 理事長 小野寺 敏
助成額 241万円
選考理由  9つの町が合併してできた登米市。内陸に位置する同市には、東日本大震災後、多くの人々が沿岸部から移り住んできている。また、観光資源もあまりなく、現状としては交流人口も多くはない。
 このような状況下で、「まち」としてのアイデンティティをどう形成していくか、人々のつながりを保ち、あるいは再構築するかは重要である一方、きわめて難しい課題であろう。
 こうした環境下において、「協働のまちづくり」を目指して、活動を続けている同団体であるが、極めて失礼ながら、徒手空拳という言葉さえ浮かぶ。しかし、今、登米市の鮮やかな星空の観察を突破口に、地域の子どもたちをはじめ、様々なつながりを生み、育成スタッフも殻を破った。 
 継続助成においては、星空観察会などの実践を通じて広報力やファンドレイジングのスキルを磨いていく。さて、これからである。このきっかけを生かし、地域課題のさらなる解決と活動の持続性につなげるよう取り組んで欲しい。