【開催報告】NPOと行政の対話フォーラム2015【実践編】~NPOと共に考える地方創生~


2015年7月23日(木)~24日(金)、かながわ県民センターにて、NPOと行政の対話フォーラムを開催いたしました。ここでは、24日に開催した【実践編】の概要をご紹介します。

【基調対談】協働を通して考える地方創生

24日挨拶
オープニングでは木津川市長の河井規子さん、当センター副代表理事の萩原なつ子による基調対談を行いました。
24日対談
萩原【左】、河井さん【右】
まずは、河井さんからまちづくりの基本である協働の原則、情報共有の原則、参加・参画の原則を実現した「木津川アート」の事例を紹介いただきました。この「木津川アート」は、平城遷都1300年祭を契機に、木津川アートのプロデューサーとなった佐藤けいこさんから、アートで町を盛り上げないかという提案から始まったもので、これまで4回開催されています。「地域を自分たちの足で回り知る」ことも重視しています。アーティストや市外の人の視点が入ることで、まちの価値を発見することにもつながり、市民の自発的な活動にも派生しているといいます。行政はあくまで黒子として徹し、あくまで主体を地域住民にすえて展開していることが特徴です。さらに市町村の合併後に始めたとされるこの取り組みによって、当初苦労したポイントやそしてアーティストを巻き込み、地域の魅力を発信していくことで生み出されたものについてお話いただきました。
どのようにすれば地域住民の思いを具現化できるのかについては、「失敗を恐れない行政職員を育て、どんどんやってみる」精神が必要であるということをメッセージとしていただきました。

(参加者のアンケートから)
・行政は前面に出ずに黒子に徹する、担い手の発掘のきっかけを作る、信用支援をするという話が、今後の仕事を進める上で、大事なキーワードになると感じました。(行政職員)
・私たちの仕事は、できない理由を探すのではなく、住民の思いをかなえるために、まちの人たちと一緒に動いていくことだということがよくわかった。「ワクワクする!」と言われる市長が素敵だった。(行政職員)
・構想は市民、交渉は行政。市民がやりたいことを実現させる市長としてのご意見だからこそ、意味が深いと思いました。(行政職員)
・自分のまちの魅力を自分たちの言葉で伝える。地域の人たちと対話しながらアクションにつなげチャレンジすることが大切だと学びました。(NPO職員)
・「マチはヒトでできている」という言葉が印象に残っています。(NPO職員)

(参考URL)
○ 木津川アート
○ 木津川市 

【分科会】分科会は、「ひとづくり」「しごとづくり」「まちづくり」の3つに分かれて、それぞれの切り口から、「NPOと共に考える地方創生」について考えました。

分科会1 【ひとづくり】地域の人の湧き出る思いをいかに活かすか

■登壇者
・阿部 巧さん
[公益社団法人 中越防災安全推進機構ムラビト・デザインセンター センター長] (新潟県長岡市)
・井東 敬子さん
[鶴岡ナリワイプロジェクト チームリーダー](山形県鶴岡市)

■聞き手
新田 英理子
[認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター事務局長]

分科会1講師
井東さん[左]、阿部さん[右]

まずは、中越防災安全推進機構ムラビト・デザインセンター長の阿部巧さんから、都市部の若い方を対象に、農村部で1年間住んでもらって地域活動に取り組んでもらうという「にいがたイナカレッジ」の事例を紹介いただきました。中越復興基金を原資にしたこの事業は4年目を迎え、実績が評価され、現在では地域おこし協力隊など、複数の事業を組み合わせながら展開しています。毎年8名程度の参加者枠に対して応募が上回る状態が続いています。

次に、鶴岡ナリワイプロジェクト チームリーダーの井東敬子さんよりスモールビジネスの複合体を生み出す「鶴岡ナリワイプロジェクト」を紹介いただきました。具体的には、リスクの少ない範囲での小さな起業を支援し、それら一つ一つのビジネスを鶴岡ナリワイプロジェクトから誕生したビジネスとして横軸展開することとして発信しています。集団化によって、互いの信頼関係、自己肯定感が生まれ、主体的に動くひとが増えるという効果を生み出しています。

コーディネーターの新田は「住むところと仕事があっても、人は来ない」をこの分科会のキーワードとして挙げ、予算があることよりも、地元のNPOと協力して創意工夫をすることが重要だとまとめました。

(参加者のアンケートから)
・特効薬がないことがよくわかった。地元の団体との対話にもっと時間を割くようにしたい。評価軸と費用対効果についても整理しないといけない。(行政職員)
・はじめから道筋があるわけではなく、手探りでやりながら人も育っていくと思った。「答えは簡単に見つからない」と改めて言われて、自分たちで、自分のまちのやり方で、手探りで進むしかないと思った。近道はない!(行政職員)
・他自治体の担当者さんと意見交換ができたことが何より良かった。(行政職員)

(参考URL)
○ イナカレッジ
○ 鶴岡ナリワイプロジェクト

分科会2 【しごとづくり】地域にある資源を生かしたしごとをいかにつくるか

■登壇者
・上垣 喜寛さん
[特定非営利活動法人持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会  事務局長](東京都新宿区)
・若菜 多摩英さん
[特定非営利活動法人母と子の虹の架け橋 理事長](岩手県花巻市)

■聞き手
田尻 佳史 [認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター常務理事]

分科会2では、「しごとづくり」をテーマに2つの事例を紹介しました。事例発表後は、それぞれの事例について、会場からの質疑を通じて深めていきました。
24日分科会2

持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会事務局長の上垣喜寛さんからは、衰退産業といわれてきた林業を、持続可能なスタイルで実践してきた取り組みを紹介いただきました。

大掛かりな設備や開発を必要とせず、間伐により山を残しながら質の高い木を育てる持続可能な“自伐型林業”は、収入源となるだけではなく、自然環境改善効果も高いといわれています。高知県での取り組みでは「仕事があるから移住する」と移住者が急増し、気仙沼では林業従事者が1名(震災前)から60名に増加しました。各地での取り組みを通して自治体との連携も活発になり、企業との連携(自伐者向けの保険商品開発)も進んだという事例も報告いただきました。

母と子の虹の架け橋理事長の若菜多摩英さんは、東日本大震災における避難所で困難を抱えた妊産婦をサポートしたいという助産師の要望に応えて活動を開始しました。出産後の母子サポートのための「ママハウス」を釜石で開設しました。さらに、働きたい母親のサポートとして「虹の家」「ベビーホーム虹」を開設しました。「虹の家」では子どもの一時預かり、母親のスキルアップ講座や、ストレスケアにつながる講座を開設し、母親たちの居場所やネットワークづくり、自己実現をサポートしています。活動を通して行政から小規模保育所開設の提案を受け、「ベビーホーム虹」を開所しました。自組織での保育者養成講座修了生が市の認定を受け、保育者として「ベビーホーム虹」にも就職しています。団体として4年間で29名の雇用を創出しました。

困難な状況に置かれているといえる「林業」「育児世代の母親」が生き生きと活躍する姿は、“創生”と呼ぶに相応しい取り組みであり、参加者からは多くの意見、質問が寄せられました。

コーディネーターの田尻は上垣さんの事例報告から「兼業のススメ」、若菜さんの事例報告から「やさしい働き方ができる場所」というポイントを挙げ、「創生と再生」をこの分科会のキーワードとしました。地域の中にこれまでなかった女性の活躍の場を女性の視点で創生していくことと、自伐型林業のような、昔存在していた今なくなりつつある働き方をもう一度再生していくことが地域の中での仕事づくりにつながるとまとめました。

(参加者のアンケートから)
・地域に目を向け、声を聞くことから始める事をどこか忘れていたような気づきがありました。施策を練ることを主眼に置いてきたが、出発点はまず現場にあることを再確認させていただきました。(行政職員)
・いずれの事例も、スーパーマン1人の成功事例ではなく多くの雇用がうまれていることが特に良かったです。(NPO職員)

(参考URL)
○ 持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会
○ 母と子の虹の架け橋

分科会3 【まちづくり】地域の人が気付かない地域の魅力=資源をいかに見つけるか

■登壇者
・米田 佐知子さん
[子どもの未来サポートオフィス代表/横浜コミュニティカフェネットワーク世話人](神奈川県横浜市)
・石井 晴夫さん
[公益社団法人大磯町観光協会 事務局長](神奈川県大磯町)

■聞き手
椎野 修平
[認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 特別研究員]

分科会3では、「まちづくり」をテーマにした2つの事例を紹介しました。2つの事例発表後、参加者を交えたディスカッションを通じて、まちづくりにおける行政の関わり方のヒントを探りました。
分科会3会場

子どもの未来サポートオフィス代表/横浜コミュニティカフェネットワーク世話人の米田佐知子さんからは、コミュニティカフェを活用したまちづくりの事例の紹介をいただきました。コミュニティカフェの要素を「敷居の低さ」「働きかけ・受け止め・わかちあい」「参加の機会・孵化装置」と整理し、目的・運営組織・店舗スタイル・運営資金によって多様な形態のコミュニティカフェの事例を紹介しました。カフェはあくまで「手段」であり、コミュニティが可視化される場所として、参加のしやすさと居心地の良さのバランス、運営を持続するための規模感の想定、運営資金を得るための工夫と指摘しました。
24日分科会3講師
米田さん[左]、石井さん[右]

大磯町観光協会事務局長の石井晴夫さんからは、漁港を活用したまちづくりの事例を紹介いただきました。大磯町が衰退していくことへの危機感から始めた「大磯市(おおいそいち)」を例にして、漁港に留まらず町内や商店街と連携して大磯町全体を「市(いち)」とする仕掛けづくりや、企画運営に若者の参画を促し、まちづくりロードマップを基に戦略的・長期的かつ主体的な活動を促す取り組みを紹介しました。

まちづくりにおける行政との協働のポイントについて、米田さんは「立場で向かい合うのでなく、一緒に考えること。行政も課題をオープンにし、市民と一緒に考える姿勢を示すことが大事」と指摘され、石井さんは「許認可の運用における実現可能な方法の模索や、精神的な後ろ立てとして大変お世話になっている。市民による柔軟な運営を維持するためにも、資金支援にこだわらず、地域でのコラボレーション、マッチング支援等、横串を通す役割を期待している」と指摘されました。

コーディネーターの椎野は2つの事例を「スーパーマン」がいるのではなく、「普通の人たち」が動いた事例だとし、思いを形にする仕掛け、多様な関係者の巻き込みがポイントだったとしました。「もともとそこにある資源の再定義と再利用」をこの分科会のキーワードとして挙げ、NPOと行政は一緒に考える仲間だと認識することが重要と強調しました。

(参加者のアンケートから)
・行政が黒子的役割の方が上手くいく。行政職員は「まちのために」と提案されたものに真摯に向き合う意識を持つことが必要かと思った。(行政職員)
・まちづくりについて実際の例を聞き、アイデア等に感心した。また、様々な立場の方と意見を交換でき、とても興味深かった。(行政職員)

(参考URL)
○ 大磯市

【クロージング】

クロージングは、各分科会の聞き手から、議論の内容のの報告をした上で、参加者のみなさんがそれぞれ気付いた視点や学びを小グループで議論しました。
地方創生を実現するために重要なこととして、参加者からは「地方創生を進めるのは難しいが、まずやってみること」、「地域の中にはいろんな意見があるが、いいことも悪いことも、よくよく話してみること」などの意見がでました。
クロージング

(参加者のアンケートから)
・他の自治体やNPOの方と意見交換できて有意義でした。地方創生は「ひとづくり」だねと意見が出ました。(行政職員)
・他の分科会の事例も詳しく聞いてみたくなりました。分科会とは違う出会いがあって楽しかった。(行政職員)
・地方創生は、一人ひとりが元気にならないと創生にならないと思いました。(NPO職員)
・参加者の方といろいろお話しできてよかったです。全国の多くの方が参加していることが改めてわかりました。(NPO職員)

(関連書籍)

「知っておきたいNPOのこと」シリーズや会計基準に関する書籍など、フォーラム会場で販売しておりました書籍は、以下からご注文できます。ぜひご利用ください。
○ 「取扱い書籍のご案内」のページ 

※アンケートからいただいたご感想は、読みやすさなどを考慮し、事務局が趣旨を変えない範囲で一部修文しています。