東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2015」 選考結果について


助成先一覧 | 選考総評 | 助成概要と選考理由 | 選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)

東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2015-被災地の生活再建に取り組むNPOの人材育成-」の新規助成ならびに継続助成の選考を行い、下記の通り決定いたしました(助成期間 2015年10月~2016年9月)。

大和証券フェニックスジャパンプログラム このプログラムは、大和証券株式会社による「ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.3-フェニックスジャパン-」の信託報酬の一部をご寄附いただき、日本NPOセンターが現地NPO応援基金の特定助成として、市民社会創造ファンドと協力して2012年度より実施しているものです。年1回の公募により、プログラム開始から5年にわたって実施する予定です。

助成先一覧

【新規助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
15特
1-1
 共育プログラムの発展と継続のための基盤づくりと
 その担い手となる若手スタッフの育成
 一般社団法人 おらが大槌夢広場
 岩手県
 大槌町
492
15特
1-2
 被災地の障がい者、要介護高齢者等の持続的支援のための
 運営管理者養成
 特定非営利活動法人 愛ネット高田
 岩手県
陸前高田市
270
15特
1-3
 被災地の障がい児を楽しく療育するイベントの企画力向上のための
 若手スタッフ育成
 特定非営利活動法人 奏海の杜
 宮城県
 南三陸町
387
15特
1-4
 被災地の女性による起業と事業継続の支援力向上のための
 スタッフ育成
 特定非営利活動法人 ウィメンズアイ
 宮城県
 登米市
461
15特
1-5
 被災地で暮らす障害者の
 素敵な生き方・はたらき方を支援する人材育成
 特定非営利活動法人 ポラリス
 宮城県
 山元町
420
15特
1-6
 線量が高い地域における発達障がい児サポートの支援力向上
 のためのスタッフ育成
 特定非営利活動法人 みんなのひろば
 福島県
 伊達市
459

【継続助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
15特
2-1
 被災地における若者定住者創出のための
 若年無業者支援の専門家育成(2)
 一般社団法人 SAVE TAKATA
 岩手県
陸前高田市
298
15特
2-2
 浦戸寒風沢コミュニティハウスの管理業務を担う
 農業指導員の育成(2)
 特定非営利活動法人 浦戸アイランド倶楽部
 宮城県
 塩釜市
325
15特
2-3
 障がい児者家族支援サポートのための専門スタッフ育成事業(2)
 特定非営利活動法人 ふよう土2100
 福島県
 郡山市
318

※このほかに助成対象団体の合同研修会の開催費として250万円
※助成対象件数  10件(新規助成6件、継続助成3件、合同研修助成として1件)
※助成総額 3,680万円(合同研修助成金250万円を含む)

選後総評

選考委員長 須田 木綿子

 本助成プログラムは、東日本大震災で被災した地域の再建支援に取り組む現地NPOのスタッフの育成を支援するものである。被災地のNPOが真に地域のニーズをくみ取り効果的な支援活動を持続的に行えるかどうかは、スタッフの人材育成と人材育成を通しての組織基盤の強化が不可欠と考え、2012年から開始された。

[今年の申請案件の特徴]
 「今年度の審査は例年に増して難しかった」という感想が、複数の審査員から寄せられた。難しさの要因として、次の3点が考えらる。
 ひとつは、被災地の状況が復興期から平時に移行することにともなって、団体が取り組む課題も変わりつつあることである。障がい者や高齢者等の社会的に不利な立場にある人々への支援、街づくり、地域おこしなど、被災地以外の地域にも共通する課題の重要性が増している。しかし同時に、原発事故やPTSDに関わるものなど、変わらずに存続し続ける被災地特有の課題もある。今回の応募の全体像は、このような被災地の課題の重層性を如実に反映していたといえる。
 ふたつ目は、現地の状況がこのように変わる中で、活動する団体にも変化が求められることである。とりわけ収入源は、そのような変化を象徴している。被災直後には助成金や寄付金などが多く寄せられるが、それらは一時的な資金である。一般論としては、復興期から平時への移行とともに、より恒常的な収入(委託契約に基づく収入やそのほかの事業を通じて得られる収入)への切り替えが必要となる。とりあえずは目の前の事柄に向き合うことで精いっぱいであった被災直後から、中・長期的な展望を持った持続可能な組織への転換をいかにはかるのか。それに向けての試行錯誤や葛藤が、今回の申請書類から伺われた。
 三つ目は、継続助成に関連することである。中・長期的な展望と組織の存続可能性が問われつつあるのは新規助成の場合と同様で、継続助成の場合は、その重要性がさらに拡大されるようにみえる。被災地との関わりのみでは、もはや十分な説得力は持ち得ず、その活動の社会的意義が広く問われる段階に入ったと感じる。

[選考過程と結果]
 今年は、助成件数10件、助成総額3,680万円の助成を決定した。このうち新規助成では、21件の応募に対して6件、2,489万円を採択した。
新規助成の選考の過程は、次のとおりである。まず、応募書類の全件について、選考委員それぞれが目を通し、本プログラムの趣旨をもとに評点をつけるとともに、コメントを記載し、事務局はそれらの評点とコメントの一覧資料を作成し、それをもとに、選考委員全員が一堂に会しての選考委員会を開催する。
 そこで採択候補案件を絞り込むとともに、それぞれの候補案件について、さらに情報収集が必要と思われる事項を細々と確認を行う。事務局はそれらの事項ひとつひとつについて、該当する団体を訪問したり、電話で聞き取りを行う。続いて第二回目の選考委員会では、これらの情報をふまえて最終決定がなされる。
 継続助成では、5件の応募に対して3件を採択した。助成額は941万円であった。選考では、応募団体に活動状況についてのプレゼンテーションを行ってもらい、選考委員からの質疑を行った。
 選考委員は、どの案件を落とそうかと思って選考委員会に臨んでいるのではない。できれば、すべての案件を応援したい。選考の過程は、難しい決断の連続である。このような中で評価の分かれ目となったのは、以下のポイントであった。
 まずは提案されている活動の実現性で、この中にはスーパーバイザーの適格性や育成スタッフとの組み合わせも含まれる。次に、育成の目的と方法が一貫性をもって計画・実行されているか。外部研修とOJTとの組み合わせなどもカギとなる。また、先述のように、収入源も重要な視点である。収入源の多様性とバランスが問われるところである。情報公開がなされているかどうかで、評価が定まる場合もある。そして最後に、助成をバネに、どのように活動に弾みをつけようとしているのかという、展望の有無である。助成期間の終了とともに活動が減速してしまうようでは意味がない。助成金を最大限に「生きた」ものとするには、どうすればよいのか。それが、選考の全過程を貫いて選考委員が知恵をしぼった点であった。
 また今回も昨年と同様に、助成団体を対象とした合同研修助成を市民社会創造ファンドの申請案件として採択した。これは本プログラムの助成対象団体を対象に、本プログラムの趣旨である“人材育成による組織基盤強化”に対する理解を深め、今後の活動の糧となる情報収集や交流の機会となるよう、合同で年2回の研修会を行うものである。昨年と同様に、スーパーバイザーと育成対象スタッフに分かれて研修を行う。また、フォローアップとして助成の中間時点において事務局が現地に赴き活動状況のインタビューを行い必要に応じてアドバイスを行う予定である。

【選考委員】
委員長 須田 木綿子(東洋大学 社会学部 社会福祉学科 教授)
委員   市川 斉 (公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会 常務理事)
委員   佐久間 裕章(特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 代表理事)
委員   手塚 明美(特定非営利活動法人 藤沢市市民活動推進連絡会 理事・事務局長)
委員   横山 正浩(大和証券株式会社 広報部 CSR課 担当部長(CSR課長))
委員   新田 英理子(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 事務局長)

助成概要と選考理由

【新規助成】

テーマ 共育プログラムの発展と継続のための基盤づくりとその担い手となる若手スタッフの育成
団体名 一般社団法人 おらが大槌夢広場
代表者 代表理事 臼沢 和行
助成額 492万円
選考理由 この団体は、生活再建、産業再生のための独立起業支援や、町民のコミュニティ再構築を目的として、2011年11月に設立された。これまで「おらが大槌復興食堂」、「復興資料館」、「コミュニティスペース」の運営、「週刊大槌新聞」の発行などを通して、町内外の多様な人たちが集うプラットフォーム的な役割を果たしてきた。
本助成では、修学旅行や大学・青少年団体など県内外から若者グループを岩手県大槌町に誘致。大槌の中高生との交流事業を企画し、互いの思いや考え方、将来への夢を語り合う機会を創出するという「共育プログラム」の企画・運営を担う若手スタッフの育成を目指す。
大槌町は被災地の中でも、街の中心がもっとも壊滅的な被害を受けた自治体のひとつであり、その復興には、若い担い手の主体的な参加が不可欠である。交流事業を通して、地域が活性化し、それがさらなる人材育成につながっていくことを期待したい。
テーマ 被災地の障がい者、要介護高齢者等の持続的支援のための運営管理者養成
団体名 特定非営利活動法人 愛ネット高田
代表者 代表理事 千葉 丑實
助成額 270万円
選考理由 この団体は、2002年に岩手県陸前高田市のNPO法人認証第一号として、さまざまな団体との連携を大切にしながら、福祉や社会教育の充実を図る活動を行ってきた。また、具体的に地域の福祉ニーズにあった福祉支援活動を目指して、障がい者や要介護高齢者の車両での移動支援活動や、介護保険事業を展開している。発災時には団体自身も被災し、中核的なメンバーを亡くしながらも、地域のために残ったメンバーで活動を継続させてきた。
団体の将来ビジョンとしては、岩手県沿岸南部の福祉ネットワークの中核となり、地域に信頼され、地域に対応したサービスや支援を安定的に実施することを目指している。そのために、組織運営をしっかりと管理するスタッフの養成は急務と認識しており、団体の組織運営の中心となる人材育成を必要としている。
今回の助成では、組織運営にかかわる社会保険労務士の資格やファイナンシャルプランナーの資格など具体的な資格の取得や、行政が実施している経営者養成講座などの受講を通じて、組織運営のノウハウの取得を目指している。組織運営は、その団体独自の文化も反映されるものであるから、外部講座のノウハウをただ自団体に当てはめるのではなく、組織内部にどう落とし込むのかについてもよく話し合いながら進められることを期待している。
テーマ 被災地の障がい児を楽しく療育するイベントの企画力向上のための若手スタッフ育成
団体名 特定非営利活動法人 奏海の杜
代表者 理事長 太齋 京子
助成額 387万円
選考理由 この団体は、震災直後より、被災者支援を積極的に実践し、特に障がい児・者への支援実績は高く評価され、地域や利用者からの信頼は厚い。活動の目的に、障がい児・者への支援を通じた地域づくりを掲げていることを特徴の一つとして、地域の理解も進んでいるようだ。
今回申請されたスタッフ育成にある、地域に根付くための実地研修や、イベントを中心とした企画立案研修は大きな効果が期待できる。また、対象スタッフのキャリアを活かす研修計画は無理・無駄がなく、確実にスタッフの成長につながると考えられる。
本助成を通じて、地域に根ざした障がい児・者施設として地域ニーズを受け止め、継続的な運営のできる足腰の強い組織となることを期待する。
テーマ 被災地の女性による起業と事業継続の支援力向上のためのスタッフ育成
団体名 特定非営利活動法人 ウィメンズアイ
代表者 代表理事 石本 めぐみ
助成額 461万円
選考理由 この団体は、2011年5月に災害ボランティア有志による活動を開始以来、女性たちのコミュニケーションの場づくり、女性グループの地域活動支援などを行なってきた。2013年6月に法人化以降は、広域生活圏におけるテーマ型コミュニティ育成事業に取り組んでいる。
本助成では、事業を通して、シングルマザーの親子の会の参加者である女性の雇用創出に注力するため、食ビジネスを事業化する試みである。具体的には、宮城県南三陸町において、アレルギー対応食の商品化をサポートし、シングルマザーの働きやすい職場づくりを行うことで、被災地で特に弱い立場に置かれやすい女性のための雇用創出を目指す。
パン作りの起業支援を本助成プログラムの対象として実施して良いのか、選考委員会では議論を費やしたが最終的には、女性の職場が限られている南三陸町において、スキルを活かして起業を応援することにより、当事者が自信をつけ、地域にとって働き方のモデルになると判断し、採択した。ついては、事業地だけではなく、他の地域にも波及するような、モデル事業となるよう期待する。
テーマ 被災地で暮らす障害者の素敵な生き方・はたらき方を支援する人材育成
団体名 特定非営利活動法人 ポラリス
代表者 代表理事 田口 ひろみ
助成額 420万円
選考理由 震災後、町営の施設で活動をしていた関係者の強い想いで2012年より活動を開始し、2015年5月に宮城県亘理郡山元町では初となる民間の障がい者施設を立ち上げた。就労継続支援施設であることから、一定の収入を得ることができ、障がい者が被災地での生活の安定を支えることができると期待する。
しかしながら、設立間もないことから、組織としての安定性に若干の不安要素があるため、任意団体として活動してきた前身組織の経験を充分に活かし、継続的に従事するスタッフを育成することは大変重要なことと考える。
各地で活躍する先進事例を参考に、組織運営に必要な知識を身に付け、山元町になくてはならない組織としての成長を望む。そして、団体設立の目的である、障がいを持つ人も持たない人も生きがいを持ち、輝きながら暮らすことができるよう、また、地元の福祉に寄与できるよう、強固な基盤を持つ団体への成長を期待する。
テーマ 線量が高い地域における発達障がい児サポートの支援力向上のための
スタッフ育成
団体名 特定非営利活動法人 みんなのひろば
代表者 理事長 齋藤 大介
助成額 459万円
選考理由 この団体は、不登校で悩む児童生徒とその保護者を支援するためのフリースクールとして2004年に設立された。震災以降、特に発達障がいがあることで不安定になり不登校になってしまった生徒の利用が増えている。これまでは、常勤は1名で活動していたが、震災後の支援によりアルバイトスタッフ2名を迎え、活動を提供することにより地域からの信頼も増し、ニーズの広がりがみえている。
団体の将来ビジョンとしては、今年度より「放課後デイサービス」を開始できるように準備を進めており、さらに地域に根差した信頼度の高い法人運営を目指している。そのためスタッフの障がい児支援のスキルアップが急務と認識しており、近い将来に団体の中核を担う人材を必要としている。今回の助成では、組織内部の研修、障がい児への学習支援をしている団体へのフィールドワークや外部の組織基盤強化に関する研修の参加を通じて人材を育成する。
長期的な事業の持続のために、ひとつひとつの研修に目的と成果を意識し、それらを組織内部の知見として蓄積していくことを期待している。

【継続助成】

テーマ 被災地における若者定住者創出のための若年無業者支援の専門家育成(2)
団体名 一般社団法人 SAVE TAKATA
代表者 代表理事 佐々木 信秋
助成額 298万円
選考理由 この団体は、震災後、岩手県陸前高田市において、復興を通じて「挑戦の陸前高田で、日本の未来を創る地域づくりを目指す」を理念に、同市出身者や被災者の若者が中心となって設立された団体である。
本助成では、陸前高田市における高齢化や人口減少、若者流出の課題解決事業として若年無業者への自立支援事業を進めるにあたり、若年無業者自立支援の専門家としての個人及び組織の育成を行い、陸前高田における若年無業者自立支援プログラムの構築を目指す。そのパイロットモデルとして、2015年10月より就農体験と運転免許合宿を組み合わせた「自立支援型運転免許合宿プログラム」の実施を予定している。
今回の助成では、首都圏を中心に若者無業者支援を行っている認定NPO法人育て上げネットの協力を得ながら、対象スタッフが若年無業者の的確なニーズを把握する手法を学び、事業の構築と検証を行う。地域事情や地域ニーズに合わせてアレンジし、地域での雇用創出も可能となる事業が展開されるよう大いに期待する。
テーマ 浦戸寒風沢コミュニティハウスの管理業務を担う農業指導員の育成(2)
団体名 特定非営利活動法人 浦戸アイランド倶楽部
代表者 理事長 大津 晃一
助成額 325万円
選考理由 この団体は、宮城県の浦戸諸島のひとつである浦戸寒風沢島にて、2008年から島の豊かな自然環境の復元と自然と共生する農業と漁業の再生に取り組んできた。震災後は、壊滅した農漁業の再生と島の持続可能性のために様々な取り組みを行っている。
今回の助成では、固有の自然環境と自給自足をベースとした島の食文化の発信と、都市との対流“グリーンツーリズム”の運営側の人材育成を行う。
島の新たな交流施設「ステーステーション」を拠点として、島の人々と島外の人々を繋ぐ農漁業を活かした様々な企画立案や、地域市民に対する自給自足の体験の提供、子供たちへの食育の指導等、幅広い知識を習得し、「島外交流」の視点から島の持続可能性に貢献する人材を目指す。
研修については、余裕を持った育成計画の再構築を行い事業の中核的なスタッフが育つことを期待する。
テーマ 障がい児者家族支援サポートのための専門スタッフ育成事業(2)
団体名 特定非営利活動法人 ふよう土2100
代表者 理事長 里見 喜生
助成額 318万円
選考理由 この団体は、2011年に子どもや障がい者の教育・学習支援、地域・まちづくりなどを目的に設立された。2012年には、福島県郡山市に障がいの種類や年齢を問わず子どもたちとその家族を支援する「交流サロンひかり」を開設し、原発事故避難家族も含めた支援を行っている。
昨年度は、障がい児のデイサービス事業および日中一時支援事業の立ち上げのために、スタッフの専門知識や技術の向上と、同サロンの中長期的な運営を目指した。2015年1月には対象スタッフが児童発達支援管理責任者の資格を取得しており、当初の計画どおりに成長していることを確認できる。
研修の実績および計画もOJTと外部研修をバランス良く組み合わせており、評価できる。地域の切実なニーズに応えるサービスの着実な立ち上げに大きく貢献しており、継続助成が対象スタッフの一層の成長につながることを期待したい。さらに、団体の経営面についての視野も広げてほしい。