日本NPOセンター早瀬昇顏写真
認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター
代表理事 早瀬 昇

2014年度年次報告書より

 この1年も、お蔭様で、NPOの社会的基盤強化と企業や行政との新たなパートナーシップの確立に向けて、様々な事業を活発に進めることができました。温かいご支援、ご協力をいただき、本当にありがとうございました。
未曾有の大惨事となった東日本大震災から4年4か月を経たものの、被災地の復興は遅々として進まず、原発事故の避難者は全国に離散し、苦難の日々を送られています。この事態に対し、被災者、避難者自身も含めた市民が各地で、課題克服に向けた挑戦を続けています。日本NPOセンターは、そうした取り組みに対し、多くの市民や企業などからご協力を得て事業資金の支援を続けるとともに、全国の市民活動支援センターなどと連携して、その組織基盤整備とスタッフの能力開発に力を入れました。
この「NPOの組織基盤を整備する」という点は、震災に関わる対応だけでなく、他の事業においても大切にしている視点です。そしてこの組織基盤整備の中でも、特にボランタリーな「市民の参加」を進めることを重視してきました。というのも市民の参加を広げることは、1.貴重な人材として活動を支えることはもちろん、2.ボランタリーな人々の関わりで組織に活力をもたらし、3.必要な専門性を獲得できる上、4.寄付者やファンドレイザーとして財政的基盤の強化に資することも多く、5.多くの人々の納得を得る努力の過程で意思決定の質が向上し、6.ミッションに共感する人々が支えることで対価的な収入が得にくいアドボカシーも展開しやすくなり、7.市民が社会課題解決の担い手としての意識を高め、市民主導の民主主義社会を築いていく…など、とても大きな意味があるからです。
そこでセンターは、NPO法人と略称されることの多い特定非営利活動法人だけでなく、市民が主体となって、参加と連帯を重視しながら、市民社会へのシフトを意識して活動している非営利志向の組織(そこには公益法人や社会福祉法人、協同組合やボランティアグループなど様々な団体が含まれます)を、法人格の有無や種類、活動分野にとらわれず応援してきました。この取り組みは、民主主義社会にとって不可欠の存在としての「市民セクター」を強化することでもあります。
もっとも、すべての特定非営利活動法人を対象に実施された2013年の内閣府調査によれば、事業活動に参加するボランティアが一人もいない法人が31.7%に達し、個人からの寄付を1件も得ていない法人が59.6%に達するなど、ボランティアや寄付という形で「参加の受け皿」となっていない団体が少なくありません。市民活動団体というより、単なる「事業者」の一つとみなされているNPOも増えてきています。当初は市民活動法人として構想された法人格であるだけに、大変、残念な状況です。
とはいえ、NPOは多元的に様々な人々の手で運営されるがゆえに社会課題に対して多彩な活動を展開し、それぞれが自己責任のもとで試行錯誤を繰り返す中で創造的な問題解決策を生み出しています。その上、市民の参加の受け皿となれば、前述のように市民が公共サービスの消費者としてだけではなく、社会課題解決の担い手となっていく機会も作り出す重要な存在だといえます。
また、かつてはテーマ型NPOとエリア型NPOという形で、有志が作るNPOと地縁組織とも呼ばれるNPOとは異質な存在と見られがちでした。しかし近年は、住民が自発的・主体的に地域課題を解決する動きが広がり始め、連携も進み始めています。地域社会でも市民の主体的努力による課題解決の動きが広がってきました。対話を重ね、連携を進め、「課題先進国」とも言われる日本社会の課題群を市民の創意で解決する取り組みが進められています。もちろん、市民の活動は国内だけにとどまるものではありません。2015年9月の国連総会で最終合意に至る予定の「持続可能な開発目標」(SDGs)に照準を合わせて国内外で活動計画を練っている団体も多く、地域レベルから地球レベルまで、多様なNPOの活動が注目されています。
なお、こうした中で、安全保障体制の転換やTPP締結交渉などのように、市民が十分に意見を出し合う機会がないままに、重大な政策変更がなされかねない状況があります。特に安全保障体制の転換に対しては、「戦争をしない国」としての日本への信頼を基盤に活動してきた海外協力団体をはじめ、多くの市民団体が懸念を示しています。特定秘密保護法の施行状況の検証なども含め、論点を出して語り
合える関係を築いていくことも、センターの大切な役割だと考えています。情報の公開と熟議による合意形成を基本に、自由で創造的な市民社会を築くために努力したいと思います。
さて、2014年度は「中長期ビジョン2013~2017」の2年目にあたる年でした。この中長期ビジョンでは「日本NPOセンターが取り組むべく役割」として、 1.多様な手法による人材育成の充実、2.各地域との連携の強化、3.地域のNPO支援センターとの連携の強化、4.調査研究の充実と政策提言の強化、5.海外のNPO等との連携の強化、6.メディアを通じての情報発信の強化の6つの役割を柱に掲げていますが、この柱をもとに精力的に事業に取り組みました。
中でも、2年ぶりの開催となった市民セクター全国会議において、社会福祉法人、生活協同組合、労働組合、経済団体の登壇を得て、市民セクターを広く捉え、今後の当センターの方向性に示唆を与える議論を展開できたこと、2014年8月から2名の常務理事(田尻、今田)と新田事務局長、坂口事務局次長による次世代を見据えたマネジメントに向けた取り組みが始動したこと、20人の職員で広範な事業を企画運営したが、NPOへの助成金も含めると全経費の3分の2が震災関連事業であり、本来事業へのシフトが今後の鍵になっていることの3点は、特に強調しておきます。
このセンターの事業は、「情報部門」「企画部門」「震災部門」「総務部門」の4部門で取り組みましたが、その概要は以下のとおりです。
「情報部門」では、中期ビジョンに基づき新たに「NPOのためのICT支援者ネットワーク」を設立しました。一方、NPOの情報化支援として取り組んでいる「テックスープ」事業では、一部人気ソフトの入荷が止まったものの、第4四半期に集中的に広報を実施し、利用者の拡大が図られました。さらにホームページでの「視点・論点」、会員向け機関誌「NPOのひろば」の発行などにも取り組むとともに、英語での発信充実にも取り組みました。
「企画部門」では、「マルチステークホルダー・プロセスの推進と定着」、「地域主権の推進に合わせた市民の社会参画の機会の増加」、「NPOの財源の多様化(自立)の促進」に重点を置いて各事業を組み立てました。特に「NPOと行政の対話フォーラム2014」「市民セクター全国会議2014」などのフォーラムにおいて、上記を強く志向したテーマを設定。議論を促すとともに、多様な主体が交流する場づくりを行いました。
「震災部門」では、多くの皆さまのご支援を得て、9つのプロジェクトを進めました。プロジェクトそれぞれの特色を出した運営は時間と手間がかかりますが、被災地でNPOが持続した活動に取り組めるための一助になることを願って実施しています。
「総務部門」は、以上の事業を円滑に進めるための組織整備として、労務関連の各種規程の策定整備を図り、スタッフがいきいきと活動できる組織基盤を整えました。また、会員・支援者の拡大を進めるため、会費の自動引き落としやコンビニ決済制度を導入したほか、国税庁の認定期間終了前に東京都の認定を取得するため、年度末に申請を行いました。
2015年度は、これらの実績を土台としつつ、全国の市民活動支援センターや政府・自治体、企業、財団、組合等の関係機関と連携をさらに深め、市民・NPOが主体となって社会の課題解決を進める社会づくりに努力したいと思います。皆さまのご指導、ご鞭撻をお願いいたします。

2015年6月