第2回 まずは社会的な理解を-NPO塾の開講と「基礎講座」・「実践講座」各3部作の出版


センター設立後の最初の事業は、NPO塾の「基礎講座」開講にあった。第1回は設立翌年、97年の2月から3月にかけてのことである。

その頃、96年12月の総選挙による与党3党の枠組みの中でNPO法案の国会提出が漸く本決まりになり、いよいよ97年の通常国会で本格的な議論が始ま ろうとしていた。そこで何よりも重要なことは、NPOそのものに対する社会的な理解を広げ深めることであった。すでに私自身も請われるままに各地に出かけ てその社会的な意義について語る機会をもっていたが、現在の日本社会におけるNPOの役割といった文脈で広く多くの人に理解してもらえる系統的な知識の体 系は持ち合わせず、またそれを的確に表現したテキストもまだ無かった。本来ならその知識の体系を整えてテキストの編集に取り組むのが本筋ではあろうが、そ の時点ではそのような時間的余裕は無い。

そこでともかくセンター設立に係わった人たちを中心にして7~8シリーズの講座を開講し、広く聴講者に直接訴えかけるとともに、その記録を出版する形で 講座に出席できない多くの人たちにも伝えることにした。出版社も決まらないまま出版を前提とした講座を開講することにし、12月からその準備を始め、1月 中旬にはチラシを配布して広く呼び掛けた。会場は企業会員でもある朝日生命保険(相)の協力により、東京駅北口の八重洲東海ビルの会議室を使うことができ た。

初回2月10日の私の講義を皮切りに、早瀬昇、田代正美、片山正夫、久住剛、雨宮孝子がほぼ毎週水曜日の夜に講義。50名余りの聴講者が熱心に耳を傾 け、それに講師も熱心に呼応する。3月26日は特別編としてセンターの最初の理事会にあわせて理事数名による鼎談も企画したが、それらのすべてに同席した 私にとっても、仲間たちの話しにじっくりと耳を傾けることができ、よき思索と理論武装の機会となった。

企画準備とともにいくつかの出版者へ打診を始めていたが、初回に聴講した田中泰さん(ぎょうせい編集部)から是非出版をとの申し出があり、何度か打合せ をしてその線で具体化することになった。こうして講座の熱気が1冊の本にまとまったのは97年9月。NPO法は衆議院を通過したが、参議院での議論が始ま る前であった。翌年3月には成立するが、その間の啓蒙書として大きな役割を果たしたと思う。その後もロングセラーとして多くの人に親しみ読まれたようであ る。基礎講座は98年と99年の春にも開講、それをそれぞれ『NPO基礎講座2』『同3』として秋に出版した。活動分野別の組織の概要や特性を扱ったもの と、現場から見たマネジメントに関するものである。こうして〈基礎講座3部作〉が完成する。

これで講座は一段落と一旦は考えたが、新しいNPO法人誕生の勢いから「基礎」に次いで「実践」の必要性を感じ、00、01、02年とそれぞれ春に講座 を開講し、秋か冬に出版してきた。基礎と実践の講座と出版を通じて最も学んだのは私であろう。それぞれの立場で活躍されている第一人者の全講義を生の声と 身振りで傾聴するだけでなく、そのすべての記録に細かく目を通し一定のまとまりある書物に編集していく作業は、多忙の中で非常に辛いものではあったが、一 人一人の思いがよく理解でき、NPOの多様性を実感するよい機会となった。現場の気持ちが身についた、と言ってもよいであろう。

故・田代正美氏による講義「NPOと企業の社会貢献」

聴講者たちの熱気があふれる第一回の基礎講座