【開催報告】パブリック・フォーラム 「地域再生に挑戦するアメリカと日本のイノベーターたち」その2


日時:2018年10月29日(月)13:00~17:00(12:30開場)
主催:特定非営利活動法人日本NPOセンター、共催:Japan Society
フォーラム 協賛:米国大使館、協力:聖心女子大学グローバル共生研究所
プログラム 後援:独立行政法人国際交流基金 日米センター、Mitsubishi Corporation (Americas)、R&R Consulting、ANAホールディングス株式会社、United Airlines


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あいさつセッション1 │セッション2 │セッション3
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セッション2:日本の地域の訪問を通じた経験・学び

本セッションでは、今回訪問を受けた日本側が自分たちの活動を語り、その後、米国側イノベーターたちが日本の訪問先での気づき、学びなどを語りました。地域に継承されてきた豊かな知恵や自然の恵みと外部からの新しい風との融合。地域に向けられる眼差しや地域内部の関係性に、実践を通じて向き合ってきた日本のイノベーター達はどう新しい形の地域コミュニティをつくり始め、米国側イノベーターはどう感じたのでしょうか。

一般社団法人Next Commons Lab 理事 / 株式会社遠野醸造 取締役
田村 淳一さん
岩手県遠野市

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Next Commons Lab(NCL)は、日本の地方で外部から移住した起業家と現地の人とコミュニティを各地で形成し、そのネットワーク化を目指している。起業家を地域に送り込み、自治体や国、新規事業を立ち上げようとしている民間企業などいろいろなプレイヤーに関わってもらっている。個々の地域課題の解決は重要だが、それが解決されても次の課題が出てきて全体が良くならない。全体(社会構造)を見ていく必要がある。国や資本主義の上にもう一つのレイヤーを作って、自分たちの欲しい働き方や暮らし方、未来を作れないかと考えている。

遠野では10個のプロジェクトを立ち上げた。色々な経歴の人が、自分のテーマをもって起業し、地域住民と地域課題に取り組んでいる。なるべく集団で移住することを大切にしている。「地域おこし協力隊」の制度を活用しているので、各々毎月基本所得を受けながら、自分たちがやりたい地域の課題解決を行う。立ち上げ時は、まず地域の資源の可視化を行う。ただ、自分の事業だけでなく、地域とコミュニケーションを取り、色々な人を巻き込んで地域課題を解決しようというのがポイント。

2018年11月に株式会社遠野酒造を設立したが、クラウドファンディングを使い、色々な人の支援を集めた。メニュー・椅子づくりなども地元の人に手伝ってもらった。大手企業(キリン)と連携した農業生産法人や、民間主導でまちづくりの会社を作ったりした。NCLは、遠野の他、全国10カ所の拠点で展開。それをネットワーク化し、新しいレイヤーとなっている。

米国側イノベーターからのコメント・質問と日本側イノベーターの返答①

アメリカ側が、日本側の取り組みについて、今回の訪問の感想を含めコメント・質問をした。

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テイラー:ホップや醸造所だけでなく、ツーリズムなど付加価値をつけて他の活動に繋げるNCLの総体的アプローチに感銘を受けた。アメリカではクラフト醸造所と大手ビール会社に大きな分断があるが、NCLは大手企業と繋がったのはすごいと思った。

田村:もともとキリンは契約栽培で遠野のホップを買っていて、自社のPRになっていた。ただ企業戦略を超えた部分で、日本のビール文化を盛り上げたいという同じ目的・ビジョンを持っている。

コニー:遠野では革新的で協働的なエコシステムがあり、若い女性も参加していた。起業家を育てつつ、出産時のケアや家族サポートといったシステム作り。すべての人が夢に向かえるような包括的な見地で起業家を育成していくには。

田村:NCLで起業家として地域に飛び込んでいく半分が女性。これはかなり珍しいことだと思う。我々は所属保障をしながら、テーマ設定してサポート。我々がメンバーの子どもの面倒を見たりもする。起業家の支援側が仲間や家族のように一緒にやっていくのが大事だと思っている。

テイラー:もう一つ感動したのは、インスピレーションを得るため、つねに地域外を見ていること。

田村:地域にずっといると同質化が起こり、新しい発想が起こらなくなる。我々は他の地域に行くことで、新しい知見や考えを手に入れている。NCLがネットワークを形成しているのも、我々がいずれは他の拠点を転々として、他の地域の知見やノウハウが流動していくことを目指しているから。

一般社団法人日本食べる通信リーグ 専務理事
江守 敦史さん
日本全国35地域

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元々20年近く編集の仕事をしていたが、日本各地で地域が衰退しているのを見て、企画・デザインといった編集の力を活かしたいと思い、食べもの付きの定期購読紙「食べる通信」の取り組みに参画。「東北食べる通信」から始まって5年以上経ったが、各号、一人の農家や漁師を特集。人生やこだわりについて書かれており、それにその人が作った・採った農作物・海産物がついてくる。

日本の人口における生産者と生産者の割合は1.5%:98.5%。1970年に1000万人以上いた農業生産者は、現在180万人を切ろうとしている。このことを生産者だけが悩んでいることが日本の問題。都市の人間も生産者が分からない物を食べていたり、自然と切り離されて生活している。我々は、「読む、食べる、つながる」の三つを通じて、生産現場と都市の両者を繋げ、顔の見える関係を作ることで両者の問題を同時に解決できないかと考えている。「食べる通信」で体感してもらうことで「共感」し、そこからオンラインや、イベント、現地ツアーなどで「参加」する。顔が見え、繋がった消費者は行動に出る。情報や食べ物を届けることでコミュニケーションが起き、そこから生産者・消費者双方に変革が起きる。「食べる通信」は現在日本全国35カ所で発行、台湾などアジアにも広がっている。東北から始まった取り組みが、全国に活動が広がることで、多くの消費者の価値観を変えていきたい。 

米国側イノベーターからのコメント・質問と日本側イノベーターの返答②

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サバンナ:「食べる通信」は、物語と情報で、生産者と消費者との新しい繋がりを作った先駆者だと思う。生産者と消費者の関係について何を学んだか。

江守:日本には地縁や血縁といった旧来のコミュニティがあったが、今はそれを持たない人が増えている。都市も地域も孤独になっている。私たちが「地図にないコミュニティ」と呼ぶ新しいコミュニティを構築することで、もっと違う世界が構築できるのではないかと思っている。SNSは当初計算して使ったわけではないが、新しい繋がり方が生まれた。実はみんな出会えていなかっただけ、ということに気づいた。特に地方だと出会う機会が少ない。このモデルは他の地域でも通用すると思っている。

コニー:あなたの取り組みは体系的に強い結びつきを作っているが、ネブラスカでこのモデルを活用したいと思っているが、第一歩として何を始めたらよいか。

江守:一定程度の経済成長を遂げ、横ばいもしくは下降線に入った国で、同じような課題を抱えた国であれば、このモデルは通用すると思っているし、ノウハウもある。ただ大事なのは、自分たちの地域のため、自分たちでこのメディア・サービスをやるんだ、という人が生まれること。「ネブラスカ食べる通信」を作るには、自分事とする地域の人が必要。

特定非営利活動法人かみえちご山里ファン倶楽部 元専務理事 / 総務省地域力創造アドバイザー / 総務省RMO研究会委員
関原 剛さん
新潟県上越市

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 毎年 300カ所の集落が消えている。総務省がRMO(地域運営組織)を提唱しているが、うまくできていないところが多いため日本の田舎は没落してしまった。適正規模の人口と土地、人間、出来事と日本型(J)のRMOという組織構造が合わさった時に、半自立的な「KUNI」というものが生まれる。コミュニティの規模、人口500~2000人程度のコミュニティ規模の自治がこれからは重要な課題になってくる。我々は最も充足性の高い人口規模を探らないといけない。

RMOには12の機能がある。1. 生活保全、2. 民族文化の保全、3. 高齢者の健康年齢の伸長、4. 小さな公共交通、5. 児童生徒のUターン教育、6.自然農地の保全、7.地域資源による産業創出、8.公的事業の委託運営、9.都市と地域を行ったり来たりする外に住む協力者、つまり往還者の創出、10.嫌なものは入れず、良いものは入れるというフィルターとしての塞ノ神機能(統一窓口)、11.総合事務機能、12.人材育成機能。上越市にある60人の集落に住む高齢者は、都市部の高齢者より要介護3になるのが平均5年遅いという結果が出た。行政コスト換算で7億円の経費節約なる。

地方行政縮小の中、ある程度地域のことを担えるRMOと関係性が作れる地方都市と、作れない地方都市では、未来に差が出てくる。地方は縮小することによる問題を、都市は人口増加で多くの問題を抱えることになる。我々は適正規模のコミュニティを策定し直し、実稼働するための組織と構造を始めないと、都市から溢れ出る人も行き場がなくなり、縮小する田舎は安楽死するしかないという深刻な状況に陥る。そのためには12の機能をもつ組織構造が必要だ。 

米国側イノベーターからのコメント・質問と日本側イノベーターの返答③

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サバンナ:食もコミュニティを作るためのツールとして考えていると思うが、12の機能に「食」の概念はどう紐づくのか。新潟の訪問で高齢者サロンを訪ねたが、食を介して人と繋がるといった活動を行っていたが、食がどう高齢者に貢献するのか。

関原:食に関してはあまりやってはいないが、話に出た高齢者サロンに我々が行くと逆に励まされる。高齢者は生活者としてのスキルがとても高い。食に関わることで一番良いのは頭を使うこと。

リチャード:訪問した高齢者サロンは、こだわり、美学、デザインという面で、またそれを地域の皆が価値だと思っているところも素晴らしい。これを大きな都市部で行った時にどうなると思うか。

関原:これは田舎だけのコミュニティ・デザインではない。都市部にこそ、KUNI的なコミュニティが必要かもしれない。衰退した中心市街地も過疎の一種だ。

株式会社FoundingBase 共同代表取締役
林 賢司さん
島根県津和野町

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FoundingBaseは、コミュニティづくりのプロジェクトで、外部の人間が関わっていることが特徴。地域に入る仲間を都会で集めて、チームで移住してもらうが、そのメンバーをサポートして取り組みを推進させつつ、コラボレーションによって事業を大きくしようとしている。2012年4月から4名から活動をスタートしたが、地域おこし協力隊や任期終了後、町に残ったメンバーもいる。自分たちの好きな、理想のまちを自分たちが作る。これまで11の自治体と仕事をしている。津和野では主に教育、観光、農業、林業など多くのプロジェクトを行ってきたが、一番の強みは教育。活動にはいろいろなバックグラインドを持ったプレイヤーが入ってきている。重要なのは、FoundingBaseが間に入って、彼らの個別のプロジェクトをリンクさせていること。私たちの存在意義は、それぞれの取り組みを重ね合い、新しい価値を生み出すことにある。

まちづくりで大事なのは、町民と歩みを共にしていくこと。まちづくりや地域活性とは、結局はそこに住む人が自分の生活が好きであるか、そこに生きたいと思える仕組みがあるかどうかが重要。僕たちが良いアイディアを持っていて、これに続け、というコミュニティは魅力的ではない。皆で作り合って、最終的にここにいると毎日刺激的で面白いと思えるまちづくりを目指している。量から質へ、数から価値への転換。数ではなくて自分がそのコミュニティを好きになれるかを日々模索しながらやっている。

米国側イノベーターからのコメント・質問と日本側イノベーターの返答④

ジョナサン:津和野は小さな地域だが、観光客も多く訪れているし、収益は上がっている。その収益を何か地域コミュニティに使えるなら、どんなプロジェクトをやりたいか。

林:観光の観点では、海外からの観光客をどう取り込んでいくかという話になるが、住民が英語を喋れるようになるわけではないので、英語の翻訳機を使ってみようといった話は出ている。ただ津和野は、もともと観光で食べていたわけではないので、逆にジョナサンにアイディアをもらいたい。

ジョナサン:訪問客として津和野がユニークだと思ったのは、オーセンティシティ(本物)の体験があったこと。地方には、それぞれユニークな価値や体験がある。美しいコミュニティをきちんとアピールできれば、ポテンシャルは高いと思う。

林:いま中国人とツアーを試している。彼はカウチサーフィンで津和野に来て、津和野が好きになり3か月滞在した。日本語を勉強して、自分たちを通じて町の色々なコミュニティに入っていった。彼が津和野で見つけたのは、多様な生き方。中国は経済発展しているがゆえに、勉強して金持ちになるという王道を外れたら負け組になってしまう。津和野で色々なキャリアを持って活動している同世代の人を見て、こういう人たちがいるということを中国の同世代に伝えたいと思ってくれた。そういうスタディツアーをもっと拡大していけないのかなと考えている。

リチャード:私たちが各訪問先で見た共通要素のひとつが「地域おこし協力隊」の存在。もしこのプログラムを変更できるとしたら、何を変更するか。

林:変更できるとすれば、FoundingBaseやNext Commons Labといった団体とのコラボレーション。地域おこし協力隊は、ネガティブな評価もあるが、使い方次第だと思う。関原さんの説明にあった住民による協力隊員への防波堤の存在や、移住者の視点を考えた議論をできる人の存在だったり、そういった活用を促す。

リチャード:プログラムの任期後に人が離れるのは、資金がないからか、それとも地方に住むのに疲れたからなのか。任期後に機会がないのか。

林:いろいろな例があると思うが、田舎で暮らしていくのは大変だと思う。本当に食べていけるのかはリアルな問題。地域おこし協力隊の任期間に自分に合った生き方に出会えるかが重要だと思う。僕らのサポート方法をどう作っていくのか模索しているし、これから地域での選択肢や可能性はもっと増えていくと確信している。


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