第2回「市民セクター全国会議2010プレ企画 日本NPOセンター会員による連続討論会」記録
日時/場所:2010年7月9日(金)18:30~21:00/日本NPOセンター会議室
対 象:日本NPOセンターの会員(団体会員は2名まで)20名まで(先着順)
話題提供者:
田中 弥生さん
(個人会員/大学評価・学位授与機構 准教授・「エクセレントNPOをめざそう 市民会議」(仮称))
http://www.dreamnews.jp/?action_press=1&pid=0000017944
松尾 沢子さん
(NPO会員/国際協力NGOセンター 能力強化グループマネージャー)
http://www.janic.org/more/accountability/accountability2008/
田尻 佳史
(個人会員/日本NPOセンター 事務局長)
https://www.jnpoc.ne.jp/topics/shinrainpo7.pdf
進 行:山岡 義典(日本NPOセンター 代表理事)
記録:藤沢浩子さん
プログラム:
1)18:30-18:45(15分):趣旨説明 日本NPOセンターより
2)18:45-19:05(20分):【話題提供1】「信頼されるNPOの7つの条件」について 田尻
3)19:05-19:15(10分):言葉の意味などに対する質疑応答
4)19:15-19:35(20分):【話題提供2】「アカウンタビリティセルフチェック2008」について 松尾さん
5)19:35-19:45(10分):言葉の意味などに対する質疑応答
6)19:45-19:55(20分):【話題提供3】「エクセレントNPO」について 田中さん
7)19:55-20:05(10分):言葉の意味などに対する質疑応答
8)20:15-20:55(40分):参加者とともに市民セクターにとっての意味を深めます
9)20:55-21:00(5分):次回へのアナウンス
趣旨説明:日本NPOセンターより
山岡:11月22、23日の全国会議開催に向け、会員間でそれぞれの取り組みを共有し議論する場として、討論会を企画した。これまで会員同士でじっくり議 論し合う機会が少なかったが、全国会議開催にかかわらず、やるべきことと思う。第1回は、「SR」と「新しい公共」という2つの円卓会議について議論し た。第2回の今日は、「NPOを組織評価する基準をどう考えるか?」をテーマに、「エクセレントNPO」、「信頼されるNPOの7つの条件」、「アカウン タビリティセルフチェック」の3つについて話し合ってみたい。
【話題提供1】:「信頼されるNPOの7つの条件」について 田尻
1.なぜこの条件が必要となったのか背景について
1998年にNPO法ができ、支援センターの立場からみて、想定していなかったようなNPOが法人格をとり出した。1996年11月に日本NPOセン ター(以下、センター)設立、以降3~4年位で各地に支援センターができたが、そこでも日常の相談等を通して、どうもおかしいという声が情報交換の中で出 てくるようになった。2003年頃、NPO法人が10000法人を超え、ニュース番組等でNPOへの疑問をなげかける報道が多くあった。マスメディアから センターへの問合せもかなりあり、実際にトラブルが生じ事件報道された例も多かった。問題・疑惑のあるNPOが増えているのではないかという実感があり、 議論しなければいけないのではないか、と考えていた。
一方、行政に対し市民から、そういう団体をなぜ認証したのかという声が寄せられることもあり、条例や内規等による規制、法改正による規制強化の可能性も懸 念される中、われわれNPOを支援する側が先手を打って、「こういうNPOをめざしていこう」という目標を示した方がいいのではないかと考えた。そこで、 その時期、北海道で開催したNPO全国フォーラムの際、数年前から行っていた民間支援センターの通称CEO会議で議論しようということになった。
2.具体的な作成ポイント
この会議には、24の民間支援センターから30名の方が参加し、「どういうNPOが信頼されるだろうか」について、各自が持ち寄った内容をもとに議論し項 目建てをした。整理した結果、偶然7つの項目になった。その後、起草委員会を設け継続議論し、2004年2月に「信頼されるNPOの7つの条件」が完成し た。
具体的なポイントは、まず、NPOらしいNPOというのはどういうNPOなのか、という検討から始め、理想のNPO像を求めていく条件にすべきか、まずは 信頼される条件を揃えることから始めるべきか、という点で議論が分かれた。こんなNPOが理想的ですねということと、最低ここまでやっていれば信頼が得ら れる、というのではハードルの高さがだいぶ違う。喧々諤々の議論をし、社会からも市民からも支援者からも信頼されるNPOの姿として検討する方向で議論を 進め、NPOなら最低限この条件はクリアしてほしい、標準的な内容となった。賛否はあったが、地域の小さな団体で法人格をとっている所は事務所も持てない というようなことも考え、この辺から足並みを合わせていこうとした。
3.使用上の注意点や意味
あくまで標準の提示であり、この条件が整っていたら組織として評価が高い「いいNPO」だ、というのではない。条件は、覚えやすいように短いセンテンスに し、その意味が通じるように説明文をつけた。条件だけが一人歩きして誤解が生じないよう必ず説明文と合わせて公開するようにしてもらっている。7項目をあ らためてみると、JANICで作成された「アカウンタビリティセルフチェック」の細項目が凝縮して表現されていると思う。
7つの条件は各支援センターの皆さんと一緒に考えていったので、広げていくのも一緒にやっていこうと、各支援センターのHPに載せてもらい、地域でもすす めてもらっている。この後、さらに、支援センタースタッフと一緒に、NPOに関するQ&Aも作成し、7つの条件と合わせ「知っておきたいNPOのこと」と いう冊子にした。HPにも全く同じ内容を掲載しているが、これまでに36000冊販売している。
4.組織評価についてどう考えるか
NPOを取り巻く社会が変容してきている中、何らかの組織評価が必要という話は出ている。センターが2000年から運営しているNPO法人データベースに は全NPO法人を載せているが、自主的に情報開示ができるようにしており、使い方次第でこれも評価に用いることができると思う。
評価というのは評価軸の問題などがあり、唯一の評価基準に統一するのは難しい。いずれにしろ、評価基準等はいろいろな人たちが議論をしてつくっていくこと が大事で、また、評価を受ける側から評価方法を選べるとういうこともあっていいかと思う。さらに、組織評価と事業評価が混同されると混乱する。組織はすご く良いが事業を行うと成果が出せないという場合、その逆の場合もあり、組織と事業成果は分けて見ていく必要がある。また、分野の別、都心部かローカルか、 規模の大小等によってもふさわしい評価方法は異なると思う。
言葉の意味などに対する質疑応答
山岡:資料中のチェックシートは、研修会で使用しようとしたが結果的に使わなかった幻のシートです。
田尻:熊本NPOセンターが、これをもとに独自のシートを作成し研修に使用した例がある。
山岡:研修を受けた団体から、すごく良く分かったと聞いた。何となく感じている自分たちの弱点などが明確になるということが重要ではないか。
Q:7つの条件②の、特定の経営資源に依存せず財政面で自立している、ということについて、経営資源のほとんどが寄付であるという団体があると思うが、それは自立しているととらえるのか、特定の経営資源に依存しているととらえるか。
A:「特定の」の意味は、特定の人、企業など、特定の資金提供者に依存しないという意味。
Q:評価を選べることも必要とは?
A:一つは、評価を受ける側が、自己評価を使って事業評価をするとか、第三者評価を受けるとか、いろいろある中から選べるとよいという。もう一つは、この 評価に通った所だけが良いNPOで、これに通らないとだめ、というのではないということ。全部受けてもいいし、何か一つだけやってみてもよい、というこ と。
Q:この評価の目的は何か。自己評価をするためか、それとも、第三者に結果を示し信頼を受けるためか。評価結果の情報開示についてはどうか。
A:先ほど説明した背景の中で議論をしたため、目的はやや不明確だったかもしれない。自己評価の面もあれば、第三者から評価を得るための面もある、両方の 使われ方ができるようになっている。どう使われているかはチェックしていない。1例として、冊子をまとめて購入して、団体の理事に、組織運営等について理 解を深めて頂くために配布するという例がある。そのように組織経営上の役に立てられているようだが、それによって組織がどう変わったかまでは、なかなか把 握できない。
【話題提供2】:「アカウンタビリティセルフチェック2008」について 松尾さん
1.なぜこの条件が必要となったのか背景について
JANICがこれを始めた経緯は、90年代後半にNGOへの説明責任を求める声が国際的に高まったことがある。政府、外務省や一般の支援者等に対する説明 の必要から、NGO側がそれに応えるツールが必要とされるようになった。また、一部NGOによる資金の不適切な利用が問題になったこともあり、受益者側に 対しても、資金提供ルートの説明等が必要となった。
内的要因としては、自分たちの活動を世間に知らしめ評価されたい、支援頂くためには信頼されなければならない、という声が強かった。また、この時期、組織を拡大したケースも多かったため、内部のガバナンス、ルールづくりも求められていた。
2.具体的な作成ポイント
JANICの「アカウンタビリティ委員会」が中心となって2002年頃から取組みを始めた。目的は、途上国の支援のため資金的援助を受ける、そのために、 社会から信頼される組織作りを行う、ということ。具体的には、組織運営、事業実施、会計、情報公開、という4つの大項目を柱に、234の細項目からなる基 準案を作成、2004~2005年にかけて試行やパブコメを行って得た意見などをふまえ、2006年3月にJANIC理事会で、自己診断ツールとしての 「NGOのアカウンタビリティ向上のための行動基準」が承認された。しかし、項目数が多くチェックが大変、自己診断を行うことのメリットが少ない、などの 理由から期待されたほど活用されず、2007年に、「アカウンタビリティ基準普及委員会」を設置し、取組みの普及に主眼を置き、簡易で取り組みやすいシス テムづくりに着手した。
アカウンタビリティの定義については、JANICでは「ある人ないし組織の業績、応答性、さらには倫理性について、利害関係者が持つさまざまな期待に応え ること」と考え、将来NGOが日本社会で白井を受けて活躍する上で非常に重要な要素ととらえている(資料p.2参照)。
3.使用上の注意点や意味
セルフチェックシート(資料p.12~)の必須項目30項目と強化項目11項目からなる41項目について、第三者が評価するのではなく、セルフチェックを 行うNGOの中で、代表、役員層、スタッフ、という3層から評価者を出し自己評価する。立会人(1回につき2人)は、評価項目の意味のとりちがえを防ぐな ど、適正なセルフチェックのプロセスを担保する役割で、実施完了報告書をJANICに提出する。
結果の公表については、「ウェブサイトで公開している。公開も含めてルールに沿ってセルフチェックをした団体は特定のマークを団体の広報媒体に掲載できる ようになっている。また、JANICではシナジー」という機関誌の正会員リスト上でチャレンジ済みかどうかが分かるようにしており、それらの情報を見た外 部の方から、信頼を得る一助となると考えている。
4.組織評価についてどう考えるか
強制されない良さ、学習効果がある、組織をふりかえる機会となったという声がある。小規模、活動年数の浅い団体には、活動の参考としてもらえるという面もある。
今後の課題は、各項目まだ凝縮し切れていない面もある。また、緊急支援やアドボカシーなどの分野には、別の視点もあるのではないかといわれている。今後ヴァージョンアップさせていきたい。
言葉の意味などに対する質疑応答 (扇風機音等のため聞き取り不能)
Q:JANICの会員以外はセルフチェックをできないのか。
A:HPにキット類は一式掲載しているので、自主的に参照することは可能。ただし、立会人派遣やマーク取得も含めた所定ルールに沿った実施については現在は会員団体に限っている。
Q:セルフチェックの実施件数が少ないように思うが課題はどんなことなのか。
A:本取り組みの特徴である団体内の三層(役員、事務局責任者、スタッフ)をそろえることが難しい、時間をまとめてとりにくい(一回当たり3時間弱)、といったことがアンケート回答から見えている。
Q:外部監査と重複するところはないか。
C:外部監査と重複する部分もあるかと思うが、どちらかというと、自分たちの状態確認を行い学んでいくという要素が強い。
【話題提供3】:「エクセレントNPO」について 田中さん
1.なぜエクセレントNPO評価基準が必要となったのか背景について
まず、全国NPO財務データベースで、収入規模をみると0~4億円位まで幅があるが、全体の60%強が500万円以下。次に、セクターの組織規模分布で は、事務所を持てるか持てないかという規模の団体が圧倒的に多く、NPO法人全体の54.5%が寄付金0円となっている。この過半数が寄付金0という点が 疑問の始まりだった。
もう一つは、NPOの社会変革の役割に関する調査というアンケート調査で、設立のイニシアティブをとった主体をたずねたら、7割は市民か任意の団体だった が、3割は、自治体、社福法人、企業、公益法人等だった。潜在的にはもっと多いかもしれない。公益法人だと補助金がとりにくくなったのでNPO法人をつく り受け皿にしているなど、NPO法第1条に書かれているのとは違う設立経緯が増えてきているのではないか。
NPO自身がNPOセクターをどのように評価しているかという点では、全体にがんばっている、それなりに社会的成果をあげてきた、という回答も1割位ある が、社会的地位が高いという回答は少なく、社会貢献以外で活動するところが増加して玉石混交しているという回答が44.3%になっている。先ほどのデータ と合わせてみると、NPO自身が「違うな」と感じる団体が増えてきていると感じている、ということが読み取れる。
ポジティブな面では、NPOが市民社会の担い手になるために必要なことは何かという問いに、一番に、社会的な信用力を身につける、次に、参加機会の増強、 NPO間の協調・協力、優秀で力強いNPOが増えること、などがあげられ、行政に頼らず自分で何とかしなければいけないという傾向が出ている。
行政の下請け化という問題と、良し悪しは別として、収益活動=ビジネスこそがこれからの公共の担い手で、それを推進すべきというような考えもある中で、市 民ベースで活動する非営利組織のモデルが見えず、NPO経営者の皆さんが迷っているという話もよく耳にする。そうであれば、民間非営利組織の原則に戻って 議論し、唯一絶対のものではないが目指すべきモデルを見える形にできないかと、山岡先生、片山さん、関さん、多田さん、加藤さん、堀江さん、工藤さん、等 に声をかけ研究会を開いた。
最初の問題意識は、市民とNPOとのつながりによって豊かな市民社会に向けての良循環をつくることが求められている、そのためには、NPO自身がもっと信頼性を高め、自分たちががんばっている姿を社会に「見える化」することが必要ではないか、ということ。
2.具体的な作成過程でのポイント
「望ましい非営利組織像」について「自らの使命のもとに、社会の課題に挑み、広く市民の参加を得て、課題の解決に向けて成果を出している。そのために必要 な、責任ある活動母体として一定の組織的安定性と刷新性を維持していること」(資料p.5)と定義し、そこから基準を1個々々作っていった。
まず、市民性、社会変革性、組織安定性という3つの基本条件(資料p.5)を抽出した。そして、それぞれ満たす要素が何か、議論するルールを決めた。各要素について実践者から体験や海外事例等を1時間位話して頂き、研究者がそこからエッセンスを抽出し言語化した。
その結果36項目が抽出され、さらにその下に200の細項目をつくった。議論に参加しなかった方々に実際にテストしてもらった上で、200項目中から小規 模団体や多様な分野に適用しうるように配慮した50項目を抽出し、それをもとにブックレットとワークシートを制作中。
3.NPOがどう活用するのかその注意点や意味
「見える化」は社会というかマスが相手で未知数が多く、チャレンジと認識しているが、E-NPO、エクセレントNPOを目指そうと宣言をする団体を募りた い。自己評価・自己宣言だけでは社会的信用が得られないだろうから、自己評価をベースにした第三者チェックが必要と考えている。
36基準をクリアしたところには、インセンティブになるような、褒めるしくみ、表彰などの案もある。自己評価だとしても、そういうことをちゃんとやっているということを誰かがチェックし保障するしくみを合わせれば「見える化」できると思う。
4.組織評価についてどう考えるか
最終的には、より豊かな市民社会への基盤形成を目指したい。現在は関わっていないが関心はあるというような市民と、個別のテーマで現在活動しているNPO・NGOをつなぐ、対話の機会をつくりたい。
今後の課題として、研究者としてはツールを作ることで手一杯で、現場と分かち合うことまで手が回らなかった。皆さん、あるいは地域のボランティアの方々の意見をお聞きしたい。
片山:前の2つと一番違う点は、一つの理想像を示したかったということ。評価者については、誰がやるのかという問題、自己評価だけでは不足、という問題がある。
堀江:上から目線ではないかという批判もあるが、市民から理解を得るしくみが必要だという認識もある。NPOがだんだん内向きになってくるとき、社会にもっと開かれるための方法の一つとなることを目指す取組みと考えている。
言葉の意味などに対する質疑応答
Q:質問と意見。ここでいうNPOは民間非営利組織ということだが、宗教法人、社会福祉法人等も含めての概念か。NPOというとNPO法人ととらえる場合 が多いが、NPO法人の中にも「なんちゃってNPO法人」、例えば、財団法人が経営対策目的等で設立したNPO法人などがあるが、こういう状況下で、 NPOの概念をどのようにとらえているか。もう1点は寄付について、54%が寄付を受けていないという話を伺っての意見だが、小さい団体だと、現物で貰っ たり、精算したいができないような経費が山のように溜まっていて、とにかく「お金を貰えない」という形で一応、収支均衡しているという状態の団体が非常に 多い。そのように、寄付が適切に会計処理されていないために「見えていない」という場合も多分に含まれているとすると、54%という数字はかなり割り引い て考えるべきではないか。
A:法人種別にこだわる必要はないと感じる。いろいろな会計基準が使われており厳密なデータではない。しかし、ここでは、網羅性の高い12590のサンプ ルからなるデータベースにおいて54.5%が寄付金0円を示している傾向に注目すべきであり、総体としてみたときに寄付に対して消極的であると思われる。 【討 論】:参加者とともに市民セクターにとっての意味を深めます
田尻:エクセレントNPOに関して質問。各項目の自己評価で、代表と事務局とではもしかすると大きなズレがあるかもしれない。たとえば、行政とNPOの協 働事業の自己評価などで、同じ項目なのに、NPOと行政とでは全く違う点数をつけていることも多い。その辺りをどう考えるか。
C:評価する時、例えば文書の有無など事実関係でするのか、単なる感覚的なもので評価するのか。
田中:各項目に解説をつけている。自己評価の際には理由も書いてもらう。やはり定性的な部分はある。
C:JANICでアカウンタビリティセルフチェックをつくった立場で言うと、248の細項目について、イエスかノーで答えられる、立会人が見た時に目で見 えるようなものを考えた。また、書類があるということであれば立会人に見せてもらい、客観的に評価する。セルフチェックで自己診断した結果を外部者が見る ことで、第三者評価としての客観性をもたせることを意図した。つまり、外部者による評価と自己評価との中間的な位置づけになると思う。マークを作った目的 は、こういうことをやっている団体だということが社会に見えるようにすること。
C:役員など身内から寄付を受けることは「参加機会の増強」か?内部寄付の割合についてはどうか。
田中:組織がどのような段階にあるか、安定期にあるか、設立間もない初期段階かによっても違うと思う。設立間もない時期においては、身近な関係者による参加から始まると考える。
C:努力していくための目標値ということだが、(現場のNPOは)自分たちは対象外だと思うかもしれない。現場からすると名前がいけないかなと感じる。
C:関西的にはありえない名前。
C:名前自体が上から目線で、現場で苦労している現場感がない。
C:「こんなに苦労してまんねんNPO」位ならいいかもしれない。
田中:「がんばってまんねん」では?
C:どう作っていくにしても、参加型でないと。「信頼されるNPO」では公表されるまで延々と議論した。
田中:原型を作るので手一杯だった面がある。地域に広げていく、雛型にすぎないと思っている。
山岡:今回はどちらかというと、在京のエクセレントな団体が中心になって議論した(フロアから笑いと「それが間違っている(笑)」という声)ということがある中で、今日は、北海道から関西、茨城などから参加がある。茨城などから見たらどうか。
C:茨城県には500NPO法人があるが、いろいろな方がNPOを選ぼうとする時、基準がない。がんばっているところが報われるしくみを作ってほしいとい う声がある。がんばっていることが見える、目的に向けてチャレンジしよう、いい意味で競い合おうというしくみは必要かなと感じる。
田中:これを基本形にして地域の使い勝手に合わせてもらうとよい。
C:この基準をもとに組織を良くするサポートするというスタンスで、どうサポートしていくかが課題。
C:われわれ自身、今エクセレントでないからエクセレントになるために努力しようという思いが強い。
C:最近、福祉法人の監事になったら、監事マニュアルというものがあり、これに従ってやるようにと言われたが、こういうことについてはどうか。もう一つ、 事業評価についてはどうか。どのように明記したらアカウントされると考えるか。組織評価を外に出す時には、どう示すかが課題になるのではないか。
C:福祉の世界では20年位前から評価について取り組んでいる。評価というのは、評価者と評価される側の間にズレがあると拒否され、利用されない。福祉の 場合、組織評価より、サービスがいかに良いか評価してほしいと望まれる。サービスに関する項目のない第三者評価が全然受け入れられず、妥協してサービスの 評価を行っている。今日の話を聞いていると、NPO法人は法人のあり方をいつも意識しているらしい。社福法人は、それが弱点でもあるが、最初に事業があっ て法人をつくる。
田中:正論をいえば、寄付者や社会が求めるのは、組織評価と成果の評価の双方であろう。しかし、両方を同時に行おうとすると方法やアプローチが違い、膨大 なコストがかかるという問題もある。したがって、エクセレントNPOでは成果の評価を直接的に行うことはしていない。ただし、エクセレントNPOの基準の 中では社会変革性という項目で、目標設定と課題設定、その結果をどのようにして評価しているか等、しくみについて聞き、そのしくみが整っていれば成果はあ る程度あがるという考え方で、成果に関する視点をビルトインしている。
C:成果が出ているかというと、成果が出ていないとだめということになるが、そのしくみを続けていれば何らかの成果は出てくるだろう、それを評価するということ。
C:例えば、寄付をしたいので寄付に関する部分を見たい、その他の点は問わないなど、人によって見方が違うので、使う側が自分で評価項目を選ぶなどできないか。
田中:市民会議としては、自己点検の内容をどこまで開示するのは当事者であるNPO自身の自由・任意と考える(この段階で市民会議が行いたいのは自己点検 の内容の客観性のチェックであり、認証や格付けではない)。したがって、寄付者がどの評価項目に着目し、どのような情報を得るかは、その団体がどのような 情報を開示するかにかかっている。
ただし、この基準を作成した立場から言わせていただければ、エクセレントNPO基準は、NPOの実態調査などから得られた現状と課題に対応するように設計 されている。その課題が、市民性、社会変革性、組織の安定性であった。基準は、この3つの課題に対応して体系性を保つように作られている。したがって、ど れかひとつのみを満たしていてもエクセレントとはいえないと、市民会議は考える。
C:それはだいぶ大きな目標だ。例えば、他者資源依存性の高いNPOなら評価基準が必要だが、他からの支援を受けない自立的な団体は(エクセレントか否かの)対象外となる。他者の支援を受けるから、自分が支援したいと思うから、評価が必要なのではないか。
C:要するに誰のための評価か。直接的にはサポーターのためで、間接的にNPOのための評価なのか。
田尻:だからこそ「信頼される」であり、「信頼される」から「応援しよう」ということになる。
C:言葉の問題として、「エクセレント」と言うときの主体はどこか。それが明確であればいいと思う。
C:それぞれの評価の視点が明確にされていれば、寄付者は自分に必要な部分を見つけられる。全てのニーズを網羅する基準というのは難しい。
田尻:英検とTOEICなどのように、採用する側が決め、全部とるところがあってもよい。
C:社会福祉の場合、ユーザーの選択に任せているが、皆、最低基準の方を一応とっておこうとなり、第三者評価の受診率は10%くらいだ。営業戦略上は、自己改革に使って下さいと言わざるを得ない。
田中:大学評価などで、自己改革のための評価結果をステークホルダー向けに公表する時には、相手に合わせ、わかりやすく編集・加工している。
C:JANICの資料をみて、助成事業をしている立場から。NGOの人たちは、組織を成長させたい、変えていきたい、中期計画を作成したい、という時、こ のチェック項目を見れば何を考えなければいけないかがわかり、それをサポートするJANICのようなところがある。NPOにはそうした知識やサポートがな いのが現状だが、こういうことを導入し組織的課題の解決手段を示していこうとするなら、有用性が示せれば、現場の人がもう少し考えるようになる可能性があ るのではないか。
田中:その意味では事例を示すのがわかりやすいかと思う。
田尻:評価する基準が明解であれば、皆がそこまではいくことができる。基準が複雑でクリアが難しいと、競争相手のない地域では、別にエクセレントでなくて もいいとなる。競争相手が出てきた時、エクセレントをとったら有効となる可能性が出てくる。そういう競争を生み出すことがセクターの広がりにつながるかも しれない。ただ、ここから先はやりたければやって下さい、そうでなければいいですよ、という両面があっていい。
山岡:時間になりました。松尾さん、何かあれば。
松尾:コストの点では評価は無償ではやれない、やってはいけないと思う。
山岡:高くした方が、価値があるように見える?
松尾:そこは微妙な点。
山岡:コストの問題は、誰が負担するかという問題もある。
次回へのアナウンス
7月30日(金)第3回は、全国会議のテーマについて議論する。