東日本大震災現地NPO応援基金(一般助成・第2期)第10回選考結果について

助成先一覧 | 選考総評 | 助成概要と選考理由
選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)
東日本大震災現地NPO応援基金(一般助成・第2期)の第10回選考を行い、下記の通り決定しました。

助成先一覧

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
10(継)-1 被災女性の雇用創出と高齢者支援を目指した現地NPOの基盤強化
~運営の中核を担う人材の育成を通じた事務局強化への取り組み~
一般社団法人ワタママスマイル
宮城県
石巻市
300
10(継)-2 新規事業の立ち上げ(総合的な障がい者施設の建設)と今後の持続的な運営に向けた組織体制の強化
特定非営利活動法人いわき自立生活センター
福島県
いわき市
250

助成件数:2件(継続2件) 助成総額:550万円(継続550万円)
*第10回助成は、第7回助成および第8回助成の助成対象団体を対象とした継続助成のみ実施し、
2015年6月16日~6月30日までの応募について8月に選考し助成が決定したもの。
*助成期間は2015年10月1日から2016年9月30日までの1年間。
*ワタママスタイル、いわき自立生活センターは第2期第8回助成の助成対象団体。

選考総評

「被災者の生活再建を支援する現地NPOの組織基盤強化のために」

選考委員長 島田 茂

【第10回助成の選考経過】

東日本大震災から4年半が経過し、現在も約20万人が避難し、いまだに14万人を超える方々が仮設住宅での生活を余儀なくされている。福島県の避難者は、県外に避難している4万5千人を含む約6万世帯が県内外で暮らしている。その6割以上の3万7千世帯は、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域であり、帰りたくても帰れないのである。仮設住宅では、漸く機能し始めた自治やコミュニティも復興住宅などへの移転が始まり、櫛の歯が抜けたように、一人また一人と転居し始めている。仮設住宅に留まらざるを得ない方々は、孤立感を深めている。このような状況の中で、被災者に寄り添い現地で活動を継続しているNPOに敬意を表しつつ、現地NPO応援基金[一般助成]第2期第10回助成の審査を行った。
第10回助成(2015年10月~2016年9月迄の1年間)は、「被災者の生活再建を支援する現地NPOの組織基盤強化」をテーマに、現地NPOが組織としての基盤を強化することによって、被災者の生活再建を持続的できめ細やかな支援を行い、長期的に大きな役割を果たせることを期待し、これまでの助成先団体への継続助成にしぼり、1件あたり300万円以内(助成総額は900万円)で募集を行った。今回の助成は、第7回助成(2014年4月助成)及び第8回助成(2014年10月助成)において助成を受けて活動を実施終了、または実施を継続している団体を対象とした。6月30日に応募を締め切り、助成2年目が2団体、3年目が1団体、計3団体の応募があった。
選考に関しては、事前に各選考委員が申請書を読み書類審査を行い、7月29日に選考委員会を行った。応募件数は少なかったが、継続助成となるため、各選考委員はこれまでの助成の完了報告書や中間報告書にも目を通し、今回の申請内容を審査した。選考の結果は、助成2年目の2団体を採択し、助成総額550万円を決定した。

【選考を振り返り】

選考は、中間または完了報告書を通して、組織基盤強化のための目的や計画の進捗と成果を踏まえ、今回の申請内容が組織基盤強化の目的にかなっているか、前回から発展しているか、そのために計画は妥当性があるか、そして、長期的に、さらに波及効果をもたらす活動を期待できるかなどをポイントに協議した。自立性のある持続可能な組織とするために、3年目の助成に関しては、厳しい評価をせざるを得ず、特に、過去2回の助成の成果と、今回の申請企画におけるこれまでの成果からの発展性が求められた。
助成を決定した2団体に関しては、『ワタママスタイル』は1年目の組織基盤強化の取り組みは着実に進んでおり、今回の申請内容も計画的に発展しているという点で評価された。『いわき自立生活センター』は、介護福祉事業を中心とするNPO法人による規模の比較的大きい建設事業となり、資金獲得および建設後の持続的な運営のための基盤強化は不可欠であるという判断で助成を決定した。
現地NPO応援基金[一般助成]第2期は、「被災者の生活再建を支援する現地NPOの組織基盤強化」をテーマに10回にわたり助成を行った。第9回助成からは、支援団体が地域に根ざし復興の担い手として持続的に活動できるように継続助成のみの応援とした。今回で第2期は終了し、現在第3期助成の企画内容を検討している。私自身は、第2期第3回から8回にわたり選考委員長をさせていただいた。基盤強化というテーマでの助成は、プロジェクト助成との区別が難しく、何をすることが基盤強化となるのかという点で時に意見が分かれた。また、助成をすることによって、組織運営に依存性が高くなり、自立した運営を阻む場合もあるという意見もあった。被災者に寄り添い続けておられるNPOのために、選考委員長としては公正で本当に支えとなる判断ができたか不安もあるが、選考委員の方々の多彩な経験による英知と懸命なご判断、そして、事務局スタッフの方々のご努力に心から感謝したい。

 

東日本大震災現地NPO応援基金(第2期第10回)選考委員

委員長島田 茂公益財団法人
日本YMCA同盟 総主事
委員磯辺 康子神戸新聞社
編集局社会部デスク 編集委員
委員栗田 暢之特定非営利活動法人
レスキューストックヤード 代表理事
委員黒田 かをり一般財団法人
CSOネットワーク 理事・事務局長
委員田尻 佳史認定特定非営利活動法人
日本NPOセンター 常務理事
委員谷本 有美子公益社団法人
神奈川県地方自治研究センター 研究員
委員堀江 良彰認定特定非営利活動法人
難民を助ける会 常任理事・事務局長

 

助成概要と選考理由

【継続助成】

テーマ 被災女性の雇用創出と高齢者支援を目指した現地NPOの基盤強化
~運営の中核を担う人材の育成を通じた事務局強化への取り組み~
団体名 一般社団法人ワタママスマイル
主な活動地域 宮城県石巻市
選考理由  ワタママスタイルは、石巻市渡波地区で開業した「ワタママ食堂」を拠点として、近隣の仮設住宅等への配食事業や高齢者を対象とする食のサポート事業を展開している団体である。弁当配達時には安否確認や体調確認なども行い、高齢者の見守り支援の役割も担っている。
団体の設立当初は、被災した女性たちで立ち上げたボランティア団体として行ってきた活動を、2014年4月に一般社団法人として組織の法人化を図り、本助成を受けて財務会計の専任スタッフを確保し、配食事業スタッフの専門スキルの向上に取り組むなどの組織基盤強化を図ってきた。
助成2年目は、配食事業の管理や広報などを担う組織の中核人材の育成を通じた事務局の強化に取り組む。今回の助成を通じ、情報発信力の強化や寄付・会費等の増額による財政基盤の安定化が図られ、中長期的なビジョンづくりにも期待したい。
テーマ 新規事業の立ち上げ(総合的な障がい者施設の建設)と今後の持続的な運営に向けた組織体制の強化
団体名 特定非営利活動法人いわき自立生活センター
主な活動地域 福島県いわき市
選考理由  いわき自立生活センターは、障がい者が地域で自立して市民生活を送ることができるノーマライゼーション社会の実現を目指して1996年に設立された団体である。
現在、行政の補助金や銀行の融資、寄付金を活用して、総合的な障がい者施設の建設計画が進行中である。その建設、運営のためには、財政面をはじめとする組織基盤の強化が必要であり、助成1年目は、団体ウェブサイトの一新やブログの随時発信など広報活動の強化を通じた寄付集めに取り組んだ。
助成2年目は、継続して寄付集めや広報機能の強化に取り組むとともに、今年度中に着工、完成を予定している施設建設に向けてや、完成後の事業展開、持続的な運営を見据えて、中核を担う法人本部の強化を図っていく。大規模な福祉施設を建設し、長期的に運営していくという非常に大きな責任を伴う事業であり、今回の助成を通じて運営体制の強化がなされることを期待したい。