認定特定非営利活動法人 エンパワメントかながわ

エンパワメントかながわは暴力の無い社会の実現を目指している団体。暴力をなくすために、「CAP(Child Assalt Prevention:子どもへの暴力防止)」というプログラムを主に小学生を対象に提供している。

本来は小学生向けだが今、中・高生向けにも実施している。それは2015年に川崎の中学校で起こった生徒同士によるかなしい事件がきっかけだ。その中学生が在籍していた学校へ21名のスタッフで朝から晩までかけてCAPプログラムを行った。社会運動として、暴力を無くそうということを世の中に伝えていきたいという想いは変わらない。これは、これからお話する組織基盤強化を行う中で醸成された結果と言える。

当団体がCAPプログラムをはじめとするワークショップの開催回数の推移を見てほしい。2004年9月の団体設立からのデータだが2006年の837件をピークに2012年には277件と大きく減少している。朝昼晩とスタッフ総出で1日数回ペースの開催を行っていた2006年時も大変だったが年を経るごとに減少する開催回数の減少は大きな危機と捉えていました。
この減少の要因のひとつに行政からの委託事業が増えてきたことが挙げられる。行政委託は一見安定してまとまった収入として入るが、次年度もその事業が継続される保証はない。それに加え年々学校のPTA予算が確保いただけなくなったことも開催数の減少に拍車をかけた。
組織を運営する財源種類はいろいろあるが、これまでほとんどを自主事業収入でやってきたのがこの団体の特徴だった。しかし、他の財源を確保する中で事業執行とのバランスが崩れてしまった。ついには、5年間財源として定着していた県の補助財源も翌年はなくなるという事態に。ここで自主事業機会の減少と、定着してきた財源の消滅という二つの危機が同時に起きてしまった。
この二つの危機をうけ設立10年の節目に組織を見直す必要があるとし、パナソニックNPOサポートファンド助成に申請するきっかけとなった。

組織基盤は船の船体にたとえられることがあるが、自分たちの船は泥船ではないか、その船はどこにむかっているのか、積み荷はどうか、だれが操縦しているのかなど、真剣に考える時間はなかった。日々のプログラム提供にやりがいを感じるスタッフの中には、事業が楽しくて、達成感さえあればいいんだよという意見もあり、組織の足元を見つめる必要性は組織内でも浸透しにくかった。
しかし、資金の見通しなど事務局体制をチェックする必要性に気づくメンバーもおり、両者の間に溝ができる時期もあった。ここで、ほんとうなら喧嘩別れもあったのかもしれない。しかし、一度互いに向き合い、「自分は何のためにこのNPOにいるのか?」「そもそもこの団体は何のために存在しているか?」を振り返る機会を重ねた。組織とは何か?についてもポストイットに書きだして皆で共有した。一人一人の想いを共有できた。その想いを実現する為にやはり団体の運営はしっかりとしなければいけない。これらの議論を通じて、事務局の役割、組織基盤と事業のバランスなどが明確となりスタッフにも浸透するようになってきた。
事務局の役割が認知されると、これまで割合がほぼ皆無に近かった人件費の割合も認められるようになり事務局として組織を支えやすい体制を整えることができるようになった。またパソコンに詳しい方を中心にマーケティング用(顧客管理)のソフトを導入し、活用を始めたが、これらの関係者分析を行うことで寄付が循環する仕組みが生まれ、寄付額も組織基盤強化以前は10万円程度だったが、現在は150万円近い寄付額となっている。この寄付の向上は2014年の認定NPO法人取得にもつながっている。

さらに、CAPプログラムの消滅だけはしたくなかったので、寄付者様から頂いたお金と、スタッフのボランティアによってプログラム提供しようという方針にした。まずは寄付者様が1万人に達するまで(現在約2500人)この方針でいくことにした。これを新たな事業収入につなぎたいと考えている。

他にも、組織基盤強化による組織改善はすすんでいる。固定化していた理事を任期制にして入れ替わるようにし、NPOに精通している方にも理事に関わってもらうようになった。また、事務局長として事務局内の雇用者もおける仕組みを整えることができた。

これら組織の活動を支えてくれる寄付者様へは「ドネーションパーティ」という場を設けてお招きし団体の取り組みを共有している。そこには懇親会もかならずつけており、顔の見える関係性の大切さも忘れていない。

CAPプログラムを通じて、いじめられていた子がいじめられないきっかけを生むケースはそのためにやってきた活動であるし想定していた。しかし、意外にもこれまでいじめをやってきた子がいじめをやめたいというきっかけになっているケースが増えてきている。あらためてこの活動を続けてきて良かったと感じることがある。そのためにも、組織の基盤強化は事業同様、組織運営に必要なものであると実感している。みなさんにも、団体の基盤強化をぜひお勧めしたい。(おわり)