NPO法改正に関する要望書(案)

NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会では、特定非営利活動促進法の改正に関する要望書の案を取りまとめました。
要望書は同連絡会での議論を受け、世話団体会で取りまとめたものです。
ご意見は、「ご所属団体、お名前、要望事項No」をご記載頂き、以下までお送りください。
npolaw※jnpoc.ne.jp (※印を@に変えてお送りください)
締切:9月26日(金)
【今後の予定】
~9月末   連絡会会員を通じて各地のNPOの意見を集約
~10月上旬 世話団体会にて論点整理
~10月末  連絡会会員から再度意見募集
~11月末  要望書確定
要望書案(PDF)をダウンロード
NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会について


特定非営利活動促進法の改正に関する要望書(案)
2008年 月 日
 NPO法(特定非営利活動促進法)は、1998年3月19日に国会で議員立法として成立し、同年12月1日に施行されました。
 今年が、成立・施行の10周年にあたります。
 現在では、全国で約3万4千のNPO法人が認証を受けて活躍しています。
 NPO法人の活動は、その後新聞やテレビなどでも広く認知されるにいたり、市民活動の重要性についても、内閣府の世論調査では国民の8割が「大切である」と認識するように至っています。
 10年前の国会で立法いただいた制度は、大きく育ってきており、議員の皆様のご支援に深く感謝する次第です。
 さて、一方で、NPO法人の数も約3万4千を数え、活動が活発になるにつれ、制定時の法律の条項では、不都合な点や不便な点も出てくる状況となってきています。
NPO法は、2003年に一度、活動分野を増やすなどの改正をしていただいてはおりますが、その後、個人情報保護の意識の広まりやインターネットの普及、また、法人の活動の活性化、申請の増加、公益法人制度改革などの動きを受け、さらにこの10周年の機会を踏まえて、一層、民間活動の活性化に資するよう見直すべき時期に来ていると考えるものです。
 NPO法は、新公益法人制度とは別の制度として、自発的で自由な市民活動を、簡易で柔軟な制度設計で支え、情報公開で市民からの信頼を強化する仕組みとして設計されています。
 NPO法を、新公益法人制度とは当面別の制度として存置していただくと同時に、このような法の理念をさらに強化し、今後、日本社会で重要となってくる市民活動をさらに発展させていくために、別紙の改正を要望するものです。
特定非営利活動促進法の改正に向けた要望事項
1. 法律の名称を「市民活動促進法」と改める
法律の名称を現在の「特定非営利活動促進法」から、「市民活動促進法」へ改正していただきたい。それに伴い、法人の名称を「特定非営利活動法人」(現行)から、「市民活動法人」へと変更していただきたい。ただし、現在、「特定非営利活動法人」として活動している者に対しては、不利益とならないような経過措置を講じていただきたい。
また、それに伴い法第2条別表について「その他市民が行う自由な社会貢献活動」を17項目として追加し、現行の「前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動」を18項目としていただきたい。
(理由)
「特定非営利活動」の概念が一般には分かりにくいことや、「非営利」という言葉が「無償」「廉価」といった誤解を招きやすいこと、また一方で、「市民活動」という言葉が社会に定着してきたことを踏まえ、法律の名称をより分かりやすく積極的な意味合いである「市民活動促進法」に変更していただきたいと要望します。
ただし、現在、「特定非営利活動法人」として活動している団体の不利益や事務負担の増加を招かないようにするために、会社法制定における「有限会社」名称の扱いのように、現行名称を使用可能にするなどの経過措置を講じていただきたいと要望します。
また、市民活動の性格上、活動分野を限定することはなじまないと考えます。第2条別表にて法人の活動分野を限定しないための条文を追加していただきたく要望します。
2. 認証に係る期間を2か月へ
現在、設立認証に係る期間が2か月以上4か月以内となっているが長すぎる。2か月以内に短縮していただきたい。また、法文にある「受理」概念を変更していただきたい。
(理由)
現在、法人が設立申請して認証を受けるまでにかかる期間が、縦覧2か月、認証審査2か月以内となっている。このことは、法人の迅速な運営を阻害している。この期間は2週間程度の米国などと比べて極めて長く、また制定された一般社団法人と比べても長すぎる。縦覧審査に係る期間を2か月以内とすることと、縦覧中に申請書類を補正でき、また審査できるようにして、申請から認証決定にかかる期間を短縮していただきたいと要望します。
また、法律では、所轄庁が申請書を「受理」(法第十条第2項)することになっているが、このため「不受理」という事態も起こっている。所轄庁による恣意的な不受理をなくすため適切な表現にしていただきたいと要望します。
3. 定款変更は原則届け出で
現在、定款変更にかかる期間が申請から4か月以内となっており、法人の迅速な運営を妨げている。原則届出で定款変更ができるようにし、認証を得る必要のある項目を限定列挙していただきたい。また、届け出る書類も簡素化していただきたい。
(理由)
事務所の移転や新設、事業の拡大・縮小などに伴い法人は迅速な運営を求められているが、定款変更に4か月以上かかり(総会を経て、認証に必要な期間が4か月以内)、法人の迅速で簡素な運営を妨げている。株式会社や一般社団法人・一般財団法人などでは、最初の登記時には公証人の認証が必要とされているが、定款変更時には認証は不要とされている。NPO法人も変化する環境に迅速に対応できるよう、定款変更は原則として登記後に届け出で済むようにし、法令に違反するような点があれば、事後チェックで補正もしくは改善(改善命令より軽い措置でできるようにしていただきたい)を求める手続きとしていただきたい。また、この場合、所轄庁に提出する書類は、申請書と変更後の定款(所轄庁の変更がある場合は、すでに提出している事業報告書等を付加する)で済むようにしていただきたい。尚、「認証に係る期間を2ヶ月以内とする」前提で、目的、名称、その行う特定非営利活動の種類及び当該特定非営利活動に係る事業の種類、その他の事業を行う場合には、その種類その他当該その他の事業に関する事項の変更に関しては、その重要性に鑑み、従来通り所轄庁から事前に認証を得ることとします。
4. 定款の記載事項の簡素化・明確化を
定款の絶対的記載事項であまり意味のない事項を削除し簡素化するとともに、自由に定めてよいものを明確化していただきたい。
(理由)
現在、定款での絶対的記載事項には、「資産に関する事項」や「会計に関する事項」などのように形式的で実際には、ほとんど意味がないものも含まれている。この2つは削除していただきたいと要望します。
5. その他の事業への制約の緩和を
第5条第1項の「その行う特定非営利活動に係る事業に支障がない限り」という文言を削除していただきたい。
(理由)
NPO法人は、特定非営利活動の他に、収益を目的としたり、共益活動の目的で、「その他事業」を行っている場合がある。この場合、経済状況などにより赤字になったりする場合があるが、2事業年度以上赤字になった(場合によっては1事業年度でも)場合に、所轄庁から「その行う特定非営利活動に係る事業に支障がある」と判断され、指導や所轄庁の変更が認められないという事態が起こっている。法人が自治的に運営している場合、赤字になるのが避けられない事態もあり、それをもって指導や所轄庁変更が認められないというのは、民間活動の自主性を阻害している。この条文は、そのような行政の恣意的指導を招きかねないので、削除していただきたいと要望します。
6. インターネットによる情報公開の強化とコピーを可能に
市民がより簡易に法人の情報を得られるように、国および都道府県による法人からの提出書類のインターネットによる公開を可能にしていただきたい。また、ダウンロードできるように、コピーを可能にしていただきたい。
(理由)
現在、所轄庁に提出された定款・役員名簿・事業報告書等は、所轄庁で公開されているが、いちいち所轄庁まで見に行かねばならず、市民への情報提供としては不便である。また、市区町村への権限移譲もあり、今後、事業報告書等の提出先も多様化してくる可能性がある。市民がNPO法人の情報を適切に入手できるようにするためにも、国・都道府県で法人からの提出書類はインターネットで公開するように義務づけていただきたい。また、インターネットからその書類がダウンロードできるように、コピーができるようにしていただきたいと要望します。
7. 最新の法人情報を公開可能に
現在、所轄庁は、NPO法人の毎年1回の事業報告書等の提出を受けて公開しているが、この提出書類に最新の役員や住所などの情報を加える措置を講じていただきたい。
(理由)
現在、NPO法人は、毎年事業年度終了後に過去の事業報告書等や役員名簿等を所轄庁へ提出する定めとなっているが、最新の役員名簿や所在地などが提出されない仕組みとなっている。このため、所轄庁にとっても、市民にとっても、最新の情報が分からなくなっている。定款、役員名簿、所在地(番地まで)は、最新の情報を所轄庁に提出する仕組みを整備するとともに、それを公開対象に加えていただきたいと要望します。
8. 情報公開における個人情報保護を
現在、社員10名以上の名簿や役員名簿が情報公開の対象となっているが、インターネット公開が進む状況を踏まえ、個人情報保護の観点から、役員名簿においては氏名及び市区町村までの住所の公開とし、社員名簿は全面的に非公開とする措置を講じていただきたい。
(理由)
現在、社員10名以上の名簿や役員名簿が情報公開の対象となっている。特定非営利活動促進法成立後に個人情報保護法が制定された経緯やその後の社会的な個人情報保護への関心の高まり、また、インターネット公開が進む状況を踏まえ、役員名簿においては氏名及び市区町村までの住所の公開とし、社員名簿は全面的に非公開とする措置を講じていただきたいと要望します。
9. 代表理事を決められるようにし、監事の登記を可能に
現在、理事全員が代表権をもっていて、定款で制限できることとしているが、代表権の範囲又は制限に関する定めを登記できない。これをできるようにし、この場合、代表理事のみの登記とする。同時に、監事の登記もできるように組合等登記令を改正していただきたい。
(理由)
現在、NPO法では、理事全員が代表権を持っており、定款で制限できることとしている。しかし、定款で代表権を制限していても、その旨について登記できないため、代表権のない理事も登記することになり、個人情報保護上の問題も生じかねない。一方、代表権の範囲または制限に関する定めが登記できる社会福祉法人などにおいては、代表権をもつ理事のみの登記で足ることとなっており、上記の問題は生じない。
そこで、NPO法人も同様に代表理事を選任するなど、代表権を特定の理事に制限している場合は、代表権の範囲又は制限に関する定めを登記できるものとし、このような法人については代表理事のみの住所及び氏名を登記することとする。
また、現在、監事が登記されていないが、監事を登記事項に加え、法人の責任体制を明確化していただきたいと要望します。
10. 解散時の公告の回数を削減する
 現在、法人の解散に関しては公告を最低3回行うこととなっているが、これを1回に削減する。
(理由)
現在、法人の解散に関しては官報にて公告を最低3回行うことになっているが、1回約3万円程度かかり、また事務的な負担も大きい。会社法の改正後は、株式会社も解散時の公告の回数は1回で良いこととなった上、一般に、NPO法人の債権債務関係は複雑でないことが多いことから、解散時における法人の負担を軽減するために、公告は1回で良いこととし、法人の運営の簡素化を図っていただきたいと要望します。
11. 法律の見解・運用基準を明確化する
  現況の所轄庁間での法の見解・運用基準の相違は、自治事務とは言え望ましくなく、特に法の趣旨に違反するような「指導」については、是正をはかっていただきたい。
(理由)
現在、所轄庁間での法の見解・運用基準の相違により、各法人がその対応に苦慮する事態が発生している。こうした状況は、自治事務とは言え望ましくなく、特に法の趣旨に違反するような「指導」については是正をはかっていただきたい。具体的な事例を挙げると、定款に書く法人の所在地は、最小行政単位(市区町村)まででいいはずだが、番地まで書かせたり、総会の定足数は、法律の解釈としては自由に決められる性格のものであるはずだが、所轄庁によっては「過半数でなければならない」と指導している事例もあり、運営の負担となっている。総会の定足数は「定款で定める」とするなど、法律の運用の明確化をはかっていただきたいと要望します。
12.認証後未登記団体の認証取り消し制度を策定する
  現在、所轄庁から認証を受けた後、未登記である団体が多数存在している。これらの団体の認証を一定期間経過後、所轄庁が取り消すことが出来る制度を策定していただきたい。
(理由)
現在、所轄庁から認証を受けた後、登記を行わない団体が多数存在している。これらの団体は法人として成立してはいないが、その設立は所轄庁によって認証されているため、法律上極めてあいまいな存在となっている。こうした状況は、法人全体の信頼性確保の面からも望ましくないため、その認証を一定期間経過後、所轄庁が取り消すことが出来る制度を策定し、より市民にわかりやすい制度にしていただきたいと要望します。