新公益法人制度の施行に伴いこの12月1日から特定非営利活動促進法の改正法が施行されます

公益法人制度改革によって民法の法人制度に関する条項が抜本的に改正され、それに伴い特定非営利活動促進法も改正され、民法準拠事項も個々に具体的に規定されました。
改正内容は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)」(2006年5月26日成立、同年6月2日公布)第164条に定められており、2008年12月1日から施行されます。
改正内容は下記の通りです。重要な追加項目としては、第14条の7〔社員の表決権に関する規定〕第3項により、定款によって定めれば社員総会に出席しない社員の表決を「電磁的方法」によって、すなわちWeb上で行うことができるようになったことがあげられます。その他にも、「民法第○条の規定は特定非営利活動法人に準用する」などと定められていて余り目立たなかったガバナンス(組織統治)上の手続き内容が、新制度にあわせて具体的に規定されました。しかし、かなり厳しそうな規定でも「定款に別段の定めがあるときは、この限りでない」などの項目(下線で表示)もいくつかありますので、自らの定款と見比べながら確認してください。
●第8条を次のように改める。
[現行] 民法第43条及び第44条の規定〔法人の能力及び法人の不法行為能力に関する規定〕は、特定非営利活動法人について準用する。
[改正] 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条の規定〔代表者の行為についての損害賠償責任〕(注1)は特定非営利活動法人について準用する。
注1 法人の不法行為能力に関する規定は削除された。なお78条の条文は「一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」
●第11条第3項(注2)第2号を次のように改める。
[現行] 二 民法第34条の規定により設立された法人
[改正] 二 公益社団法人又は公益財団法人(注3)(注4)
注2 第3項の条文は「第1項第11号〔解散に関する事項の規定〕に掲げる事項中に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、特定非営利活動法人その他次に掲げる者のうちから選定されるようにしなければならない。」
注3 整備法第165条1項による経過措置により、特例社団法人又は特例財団法人を含む。
注4 整備法第165条2項による経過措置により、施行の際の特定非営利活動法人の定款における旧民法第34条の規定により設立された法人を残余財産の帰属すべき者とする旨の記載は、公益社団法人又は公益財団法人(特例社団法人又は特例財団法人を含む。)を残余財産の帰属すべき者とする旨の記載とみなされる。
●第14条を次のように改める。
[現行] 民法第51条第1項(法人の設立の時に関する部分に限る)の規定〔財産目録に関する規定〕は、特定非営利活動法人の設立について準用する。
[改正] 特定非営利活動法人は、成立の時に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。
●第15条の前に次の7条を加える。
(通常社員総会)=改正前NPO法30条、改正前民法60条
第14条の2 理事は、少なくとも毎年1回、通常社員総会を開かなければならない。
(臨時社員総会)=改正前NPO法30条、改正前民法61条
第14条の3 理事は、必要があると認めるときは、いつでも臨時社員総会を招集することができる。
2 総社員の5分の1以上から社員総会の目的である事項を示して請求があったときは、理事は、臨時社員総会を招集しなければならない。ただし、総社員の5分の1の割合については、定款でこれと異なる割合を定めることができる。
(社員総会の招集)=改正前民法62条
第14条の4 社員総会の招集の通知は、その社員総会の日より少なくとも5日前に、その社員総会の目的である事項を示し、定款で定めた方法に従ってしなければならない。
(社員総会の権限)=改正前NPO法30条、改正前民法63条
第14条の5 特定非営利活動法人の業務(注5)は、定款で理事その他の役員に委任したものを除き、すべて社員総会の決議によって行う。
   注5 改正前民法は「事務」としており、これをNPO法は準用していたが、この点、変更されている。
(社員総会の決議事項)=改正前NPO法30条、改正前民法64条
第14条の6 社員総会においては、第14条の4の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ決議をすることができる。ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。
(社員の表決権)=改正前NPO法30条、改正前民法65条(ただし3項は新規)
第14条の7 各社員の表決権は、平等とする。
2 社員総会に出席しない社員は、書面で、又は代理人によって表決することができる。
3 社員は、定款で定めるところにより、前項の規定に基づく書面による表決に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって内閣府令(注6)で定めるものをいう。)により表決をすることができる。
4 前3項の規定は、定款に別段の定めがある場合には、適用しない。
注6 平成20年10月20日内閣府令第64号ににより、施行規則が改正された。
(表決権のない場合)=改正前NPO法30条、改正前民法66条
第14条の8 特定非営利活動法人と特定の社員との関係について議決をする場合には、その社員は、表決権を有しない。
●第16条に次の1項を加える。=改正前NPO法30条、改正前民法54条
2 理事の代表権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
●第17条の見出しを「(業務の執行)」に改め(注7)、同条の次に次の3条を加える。
(理事の代理行為の委任)=改正前NPO法30条、改正前民法55条
第17条の2 理事は、定款又は社員総会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。
注7 改正前民法は、「(業務の決定)」とされていたが、この点、変更されている。
(仮理事)=改正前NPO法30条、改正前民法56条
第17条の3 理事が欠けた場合において、業務(注8)が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、所轄庁は、利害関係人の請求により又は職権で、仮理事を選任しなければならない。
   注8 改正前民法は「事務」としており、こえをNPO法は準用していたが、この点、変更されている。
(利益相反行為)=改正前NPO法30条、改正前民法57条
第17条の4 特定非営利活動法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代表権を有しない。この場合においては、所轄庁は、利害関係人の請求により又は職権で、特別代理人を選任しなければならない。
●第26条第2項及び第28条第2項中「において準用する民法第51条第1項の設立の時」を削除する。(注9)
    注9 財産目録については、従前、NPO法第14条が民法第51条第1項を準用していたが、上記のとおり、NPO法第14条自体に規定されるようになったことを受けての改正
●第30条を次のように改める。
[現行] 民法第54条から第57条まで及び第60条から第66条までの規定は、特定非営利活動法人の管理について準用する。この場合において、同法第56条中「裁判所は利害関係人又は検察官の請求に因り」とあるは、「所轄庁は利害関係人の請求に因り又は職権を以て」と読み替えるものとする。
[改正] 削 除 ⇒改正NPO法14条の2~8、16条2項、17条の2~4に規定
●第31条の次に次の11条を加える。
(解散の決議)=改正前NPO法40条1項、改正前民法69条
第31条の2 (略)
(特定非営利活動についての破産手続きの開始)=改正前NPO法40条1項、改正前民法70条
第31条の3 (略)
(清算中の特定非営利活動法人の能力)=改正前NPO法40条1項、改正前民法73条
第31条の4 (略)
(清算人)=改正前NPO法40条1項、改正前民法74条
第31条の5 (略)
(裁判所による清算人の選任)=改正前NPO法40条1項、改正前民法75条
第31条の6 (略)
(清算人の解任)=改正前NPO法40条1項、改正前民法76条
第31条の7 (略)
(清算人の届出)=改正前NPO法40条1項、改正前民法77条2項
第31条の8 (略)
(清算人の職務及び権限)=改正前NPO法40条1項、改正前民法78条     
第31条の9 (略)
(債権の申出の催告等)=改正前NPO法40条1項、改正前民法79条
第31条の10 (略)
(期間経過後の債権の申出)=改正前NPO法40条第1項、改正前民法80条
第31条の11 (略)
(清算中の特定非営利活動法人についての破産手続の開始)=改正前NPO法40条1項、改正前民法81条
第31条の12 (略)
●第32条に次の7条を加える。
(裁判所による監督)=改正前NPO法40条1項、2項、3項、改正前民法82条
第32条の2 (略)
(清算結了の届出)=改正前NPO法40条1項、改正前民法83条
第32条の3 (略)
(解散及び清算の監督等に関する事件の管轄)=改正前NPO法40条1項、非訟事件手続法35条2項、同36条
第32条の4 (略)
(不服申立ての制限)=改正前NPO法40条1項、非訟事件手続法37条
第32条の5 (略)
(裁判所の選任する清算人の報酬)=改正前NPO法40条1項、非訟事件手続法38条
第32条の6 (略)
(即時抗告)=改正前NPO法40条1項、非訟事件手続法39条
第32条の7 (略)
(検査役の選任)=改正前NPO法40条1項、非訟事件手続法40条
第32条の8 (略)
●第40条を次のように改める。
[現行] 民法第69条、70条、第73条から第76条まで、第77条第2項及び第78条から第83条まで並びに非訟事件手続法第35条第2項、(中略)の規定は、特定非営利活動法人の解散及び清算について準用する。(以下略)
[改正] 削 除⇒改正NPO法31条の2~12、32条の2~8に規定
●第44条の3中「において準用する民法第51条第1項」を削る。
●第49条第2号中「において準用する民法第51条第1項」を削り、同条第六号から第九号までを次のように改める。
(略)
(山岡義典 日本NPOセンター代表理事/法政大学教授)