東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「JT NPO応援プロジェクト」(第2期)第1回助成 選考結果について

助成先一覧 | 選考総評 |助成概要と選考理由 |

東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト(第2期)第1回選考を行い、以下の通り決定いたしました。

助成先一覧

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
1 大槌復興刺し子プロジェクト~受益者らによるオリジナル商品開発による生きがい創出と持続可能なコミュニティの形成~
特定非営利活動法人 テラ・ルネッサンス
岩手県
大槌町
185
2 障がい者や要介護高齢者等の暮らしを支える移動支援事業
特定非営利活動法人愛ネット高田
岩手県
陸前高田市
351
3 地域住民の健康支援、地域コミュニティの促進プロジェクト
特定非営利活動法人 生活支援プロジェクトK
宮城県
気仙沼市
313
4 石巻市あけぼの北集団防災移転地域における子どもの声を活かしたあおぞら・にじいろプレーパーク事業
特定非営利活動法人 にじいろクレヨン
宮城県
石巻市
460
5 仙台市における子どもの貧困救済及び貧困連鎖予防事業
特定非営利活動法人 キッズドア
宮城県
仙台市
425
6 飯舘村「畑仕事、手仕事」協働プロジェクト―帰村後の新たな集落づくり
一般財団法人 飯舘までい文化事業団
福島県
飯舘村
360
7 ふくしまの若手農業者ネットワーク化プロジェクト~デザイン、流通の支援、協働の実践~
特定非営利活動法人 Leaf
福島県
二本松市
304
8 放射能測定センター・南相馬の基盤強化と5周年記念事業
特定非営利活動法人 チェルノブイリ救援・中部
福島県
南相馬市
275
9 子どもを囲んで親子および地域・支援者が共に成長する「すくのび広場」運営
すくのびくらぶ
福島県
いわき市
497

*助成件数:9件 助成総額:3,166万円
*2016年9月までの応募について10,11,12月に選考し助成を決定した。
*助成期間は、2017年1月1日から2017年12月31日まで。

選考総評

選考委員長 大島 誠

 東日本大震災から5年半が過ぎた。私は仕事で時々仙台市へ行くが、今では震災前と変わらぬ賑やかさがあり、仙台市内に震災の爪痕を見ることは難しい。テレビや新聞でも被災地の様子を伝える報道はメッキリと減っており、震災は過去のものになったとの印象を持ち始めていた。そんな中、今年7月の理事会で日本NPOセンターの副代表理事を拝命し、今回初めて東日本大震災関連の助成事業の選考委員長を仰せつかった。事務局から36件の全応募資料が綴じられたファイルが送られて来て、私の選考作業が始まった。正直なところ、衝撃が走った。そして分厚い選考資料を一気に読みあげた。東北は未だに震災の真っただ中に在る。

 選考は先ず、私を含め5名の委員がそれぞれに応募資料を読み込み、採点を行った。その結果をもとに上位18団体に絞り、選考委員会で更に議論を重ねた。議論に際しては、日本NPOセンター事務局に申請団体の活動について質問をする場面も有ったが、選考の公正を期すために、事務局には質問に対する応答以外の発言は控えて頂いた。その結果、12団体を助成候補とし、この12団体を事務局が現地に訪ね、ヒヤリングを行い、団体の実態と申請内容の活動状況を確認し、間違いがない事を確認した上で、正式に助成先として9団体を決定した。

 選考会では以下の様なポイントが議論された。
・事業内容が分かりやすいか。
・申請書類の内容が明確で齟齬がないか。
・その事業を地域住民が本当に必要としているのか、望んでいるのか。
・その課題は従来からの地域の課題ではなく、震災が原因となって発生した課題か。
・事業の結果、自立したコミュニティが形成されていく道筋が見えているか。
・住民だけでは解決が困難な課題に取り組む際、その支援活動の出口が示されているか。
・助成金が応募団体のスタッフの給与に偏り過ぎてはいないか。
・事業自身が助成金頼みになっており、助成が無い場合の事業はどうなるのか。
・事業における受益者の負担が適切になされているか。
・実現性はもとより、先駆性・応援性・専門性・支援性が感じられる事業か。

 応募いただいた事業はどれもが心打つ活動で震災復興の大きな力になっていることに敬意を表したい。そして本格的な復興を成し遂げる為にはまだまだ時間と知恵と資金と人々の理解と協力が必要な事を痛感した。東北の現状が風化していかない為にも、本事業の対象になった地域の実情を何らかの形で情報発信していく必要を感じた。新たな日本NPOセンターの課題として取り組んでいきたい。

【選考委員】
[table id=46 /]

助成概要と選考理由

テーマ 大槌復興刺し子プロジェクト~受益者らによるオリジナル商品開発による生きがい創出と持続可能なコミュニティの形成~
団体名 特定非営利活動法人 テラ・ルネッサンス
代表者 理事長 小川 真吾
助成額 185万円
選考理由  テラ・ルネッサンスは「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」を目指し、カンボジアにおける地雷被害者の生活再建支援など、海外で活動を行ってきた。東日本大震災では早期から被災者の中長期的な生活再建支援の道を探り、大槌町において主に中高年の女性に伝統工芸「刺し子」の商品製作を通じた生活再建と交流を支援している。
 本事業は、大槌町、釜石市在住の仮設住宅、災害公営住宅の中高年女性を対象に、引き続き、刺し子製作を支援すると共に、商品開発、品質の安定化、量産体制の整備など、新たな展開を目指している。
 今までの事業において、住民自身による法人化に向けた支援を目指すなど、地元主体の活動支援の姿勢が明確になっており、事業の更なる展開が図られるよう期待したい。

 

テーマ 障がい者や要介護高齢者等の暮らしを支える移動支援事業
団体名 特定非営利活動法人 愛ネット高田
代表者 代表理事 岡本 幸子
助成額 351万円
選考理由  愛ネット高田は陸前高田市で居宅介護支援事業所を運営し、要介護高齢者の相談支援を行っている団体である。また、JDFいわて支援センターが無償で行っていた移動支援サービスを、利用者と車両を引き継いで実施している。
 本事業は、歩行が困難である、バス停が遠い、うつ状態により外出が困難であるなど、さまざまな理由で公共交通機関の利用が難しい障がい者、要介護高齢者を対象に、移動支援を行なうもので、病院への通院、買い物などが困難な状況にある方たちが、当たり前の生活を送る一助となる。また、計画している元気サロンが利用者を含めた多様な交流の場となり、移動支援サービスの継続的な利用につながればと願う。
 法人の設立以来12年となる高齢者・障がい者支援の実績を活かし、介護保険制度外のサービスや住民主体の身近な支え合い活動にも取り組まれることを期待したい。

 

テーマ 地域住民の健康支援、地域コミュニティの促進プロジェクト
団体名 特定非営利活動法人 生活支援プロジェクトK
代表者 代表理事 阿部 正孝
助成額 313万円
選考理由  生活支援プロジェクトKは被災者への生活支援およびコミュニティ形成を通じて個人の生活再建支援を行うことを目的に、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士など、医療・保健・福祉の専門家が立ち上げた団体である。なんでも相談、健康体操、健康相談の実績があり、地域の社会福祉協議会、公民館との協力体制も出来ている。
 本事業は、仮設住宅から災害公営住宅などへ移転した高齢者や新住民を対象に、健康チェックを行いながら日常生活の困りごとが相談できる場を提供し、ママの保健室、編み物講座、健康講座、交流広場など、生活支援事業を提供するものである。
 新たな地での生活においては孤立や閉じこもりなどの問題の発生が予想される。なんでも相談できる場があり、交流の場としても活用されている常設の場を持つ強みを生かし、事業を継続していただきたい。また、専門家のネットワークを活かし、地域包括ケアシステムの確立にも取り組まれることを期待したい。

 

テーマ 石巻市あけぼの北集団防災移転地域における子どもの声を活かしたあおぞら・にじいろプレーパーク事業
団体名 特定非営利活動法人 にじいろクレヨン
代表者 理事長 柴田 滋紀
助成額 460万円
選考理由  にじいろクレヨンは石巻市の避難所、仮設住宅、復興公営住宅において、多くのボランティアの参加を得て、訪問型の子どもたちの居場所や遊び場づくり活動を実施している。また、民間の児童館を運営し、放課後児童クラブ、放課後子ども教室の運営も行っている。
 本事業では、復興公営住宅において遊び場や居場所が制限されている子どもたちのために地域住民と共にプレーパークを立ち上げる。また、子どもの声が反映されるコミュニティづくりを目指し、子どもサミットの開催やプレーパークを運営する住民スタッフの育成にも取り組む。
 本団体は既に石巻市で被災した児童の支援実績を重ねているが、更に復興公営住宅において難航しているコミュニティづくりを反映し、不安定な状況に置かれている子どもたちを支えるという難しい課題に果敢に取り組む姿勢を評価した。

 

テーマ 仙台市における子どもの貧困救済及び貧困連鎖予防事業
団体名 特定非営利活動法人 キッズドア
代表者 理事長 渡辺 由美子
助成額 425万円
選考理由  キッズドアは経済的困窮などさまざまな背景により家庭での学習環境が十分でない子どもたちを対象に学習支援活動に取り組んできた団体である。東日本大震災以降は東京での活動に加えて岩手、宮城、福島でも活動を展開してきた。
 本事業では、仙台市の中高生を対象に、居場所機能と学習支援機能を伴った自習室を運営する。また、キャリア教育、大学見学ツアー、進路相談会、三者面談など、総合的な学習支援を行うことで、子どもたちの将来への希望を醸成する役割も担う。
 学習支援の場に止まらず、大学生をはじめ、普段の学校生活では接する機会の少ない大人との交流を通じて、被災地の子どもの心のケアと新たなコミュニティ形成につながることを期待したい。

 

テーマ 飯舘村「畑仕事、手仕事」協働プロジェクト―帰村後の新たな集落づくり
団体名 一般財団法人 飯舘までい文化事業団
代表者 代表理事 大黒 太郎
助成額 360万円
選考理由  飯館までい文化事業団は、飯館村の中学生が再生可能エネルギーによる村づくりの先進地ドイツを訪ね、その学びを飯舘村の復興に活かす「未来の翼」事業や、村民同志が集まって手仕事を学ぶ「ふるさと学級いいたて」事業などを実施している。
 本事業は、甘酒づくり、えごま油と野草のせっけんづくり、裁縫着物・小物づくりの3つのものづくりを通じて、村民協働の農作業や手仕事の機会を創り、2017年4月から始まる帰村後の新たな集落づくりに取り組むものである。
 具体的な目標や手順をもって事業を進めようとしており、着実な成果が上がると思われる。本事業が帰村後の集落活動へとステップアップしていくことを期待したい。

 

テーマ ふくしまの若手農業者ネットワーク化プロジェクト~デザイン、流通の支援、協働の実践~
団体名 特定非営利活動法人 Leaf
代表者 理事長 廣田 拓也
助成額 304万円
選考理由  Leafは、福島における放射能による風評被害防止と、農業生産者の再建支援のために、農産物や加工食品の放射能分析、販売支援に伴う商品開発やマーケティング、人材育成、売り場づくり支援などを行っている。
 本事業では、「持続可能な農と食」を実践すべく、若手生産者の売り上げと雇用人数を向上させるために、業務・品質管理、商品の開発やデザイン性、マーケティング力、販促物作成など、「想い」を支える能力・技術の習得のための学びの機会を提供する。
 未来の復興の担い手となる農業の若手生産者が、互いに刺激し合い、生産と販売という二つの側面を本格的に学ぶことができれば、消費者に本当に喜ばれる商品を作り、伝え、これを生涯の生業にできる道が開ける。再び地元で働く喜びを醸成させ、多くの生産者が地元に根付き、地域活性化にも繋がっていくことを期待したい。

 

テーマ 放射能測定センター・南相馬の基盤強化と5周年記念事業
団体名 特定非営利活動法人 チェルノブイリ救援・中部
代表者 理事長 原 富男
助成額 275万円
選考理由  チェルノブイリ救援・中部は、東日本大震災の原発事故被災者に対し、医療支援、空間線量率の測定、汚染マップの可視化に取り組むと共に、「放射能測定センター・南相馬」を設立し、市民が持ち込む食品や農産物、土壌、水などの放射能の測定やデータ提供を無料で行っている。
 本事業では、2016年7月に南相馬市小高区の立ち入り禁止区域が解除となり、住民の帰還が始まったことを受け、今後測定依頼が増加することを見込んで、センターの基盤強化を図る。また、過去5年間の放射能の測定結果をまとめたブックレットの発行と記念講演会も行う。
 住民の要望に地道に丁寧に応えながら集められたデータは、汚染の経年変化を正確に捉える信憑性の高いものであり、特に直接口に入る野菜などについて情報を得ることは、住民の生活や子どもの未来にとって非常に大きな安心感に繋がると期待したい。

 

テーマ 子どもを囲んで親子および地域・支援者が共に成長する「すくのび広場」運営
団体名 すくのびくらぶ
代表者 代表 前澤 由美
助成額 493万円
選考理由  すくのびくらぶは、いわきNPOセンターが震災後3年半運営した「とことん広場」を引き継ぐ形で「すくのび広場」を運営する団体である。乳幼児から高齢者・障がい児が利用できる「広場」であり、いわき市内に7ヶ所ある屋内遊び場の中では利用者が最も多い。
 本事業は低線量被ばくと定住への不安を抱える子育て家庭や障がいのある子どもを対象に屋内の遊び場を運営するものである。場所はイトーヨーカドーが無償で提供し、保育士による育児相談、看護師による健康相談、託児付き子育て相談会、保育士資格取得のための勉強会を実施する。
 今後ますます細やかな対応が必要とされることから、「広場」を通じて多世代の参加や交流が生まれ、支援者の成長が利用者の成長へとつながるよう期待したい。また、継続して活動を続けていくための組織づくりにも期待したい。