東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「JT NPO応援プロジェクト」(第2期)第3回助成 選考結果について

助成先一覧 | 選考総評 |助成概要と選考理由 |

東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト(第2期)第3回選考を行い、以下の通り決定いたしました。

助成先一覧

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
1 休耕田を活用した滝沢市在住の内陸避難者と避難先住民のコミュニティ形成支援事業
特定非営利活動法人 いなほ
岩手県
滝沢市
350
2 東日本大震災被災者を支援するためのコミュニティカフェおよび食料品宅配事業
特定非営利活動法人 ライフデザイン花巻
岩手県
花巻市
398
3 新エリアでの森づくりとにぎわいの創出
特定非営利活動法人 吉里吉里国
岩手県
大槌町
408
4 「子どもと陸前高田の可能性を広げる」ことを達成する多様な住民コミュニティ形成応援事業
一般社団法人 SAVE TAKATA
岩手県
陸前高田市
359
5 ‘歌津地区におけるコミュニティ再生・活性のための、住民の手による地域連携プロジェクト
歌津地区復興支援の会一燈
宮城県
南三陸町
340
6 コミュニティーガーデンを活用した多様な交流を生み出す事業
一般社団法人 雄勝花物語
宮城県
石巻市
212
7 市民の主体的活動を核とした、震災伝承ネットワークづくり
公益社団法人 みらいサポート石巻
宮城県
石巻市
384
8 障がいのある人たちの芸術表現活動から創る「仕事」のカタチプロジェクト
NPO石巻広域クリエイティブアートの会 ペンギンズアート工房
宮城県
石巻市
257
9 仙台及び東北全域の被災者を含む生活困窮者のための生活相談、生活支援事業
特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ
宮城県
仙台市
279
10 被災地域住民の高台(集団)移転や現地再建に伴うあらたなまちつくりとコミュニティ再生・形成のための桜植樹事業
特定非営利活動法人 さくら並木ネットワーク
宮城県
仙台市
343
11 亘理こどもサポートを軸とした交流プロジェクト
特定非営利活動法人 亘理いちごっこ
宮城県
亘理町
380
12 復興に向けて働き出した共稼ぎ夫婦及び一人親家庭を支援する放課後学童クラブの設置
特定非営利活動法人 キッズハウスりんごっこ
福島県
福島市
318
13 福島ひまわり里親プロジェクト
特定非営利活動法人 チームふくしま
福島県
福島市
495
14 みんな笑顔でつながろう~被災移住者と共に地域で支え合い・学びあい・育て愛~
すくのびくらぶ
福島県
いわき市
500

*助成件数:14件 助成総額:5,023万円
*2017年8月までの応募について9,10,11,12月に選考し助成を決定した。
*助成期間は、2018年1月1日から2018年12月31日まで。

選考総評

選考委員長 大島 誠

 「JT NPO応援プロジェクト」の選考委員長を仰せつかる中で、今年の秋、休日を利用して東北の被災地を久しぶりに訪ねてみました。海岸には高い防波堤が築かれたり、高台や近くの山を切り崩して新しい団地が造成されたり、また街中には立派な災害公営住宅が何棟も建てられたり、フィッシャーマンズワーフといった感じの新しい商店街が整備されたりと震災からの復興を感じさせる変化がいくつも目に留まりました。また、休日ということで、津波被害を受けた商店街で回遊的なイベントが実施されており、旅行者とお見受けするたくさんの方々が街歩きをされている姿も目にしました。
 しかし、私の気持ちは何となくスッキリとしませんでした。リアス式の海岸の奥の方の山間に突然新しい団地が現れたり、賑わってはいたけれど生活感の薄い商店街が出来上がったり、観光客は歩いているけれども地元の人たちを見かけない街であったり、ここに人が戻ってくるのかと思うような場所で何台もの重機で工事が進められていたり。震災被害の当事者ではない私が軽はずみな言葉を口にできないことは承知の上ではありますが、正直なところうまく言葉では表現できない違和感を感じて戻りました。
 何百年もの時間をかけて出来上がった街や集落、商店街、コミュニティが一瞬のうちに破壊され、多くの方が亡くなられ住む場所もなくなった大惨事からの失意の中での復興。被災者の皆さんはどんなにか辛く苦しい思いで過ごされてきたかは想像できないけれど、こんな短時間の中で一気に事を進めることは未来に対して最善なのだろうかと改めて考えさせられた旅となりました。
 東日本大震災から7年目を迎え、ともすると私たちの意識の中で過去になりつつあり、他人ごとになり始めている出来事ですが、国民のひとりひとりが我が事として意識を向け続けなければいけないと反省も致しました。
 そのような中、「最低でも10年間は続けたい」とのJTさんの思いの在るNPO応援プロジェクトは長期にわたる支援が必要な災害復興の本質をとらえられた活動であり、選考委員長として心から敬意を表します。
 さて、今回の助成には35件の応募をいただきました。件数でも前回の64件の半数程度になりましたが、申請内容が全体的に継続事業や小規模なもの、事業計画としては稚拙さを感じさせるものなどが多く、少々インパクトに欠けたように思います。選考会では一次審査で25件に絞り、さらに協議を重ね16件の助成候補に絞ったうえ、団体へのヒアリングと現地調査の報告を聞いたうえで、選考委員長の私が最終的に14件の助成を決定いたしました。以下に今回の審査で感じたことを記します。

①営利事業と非営利事業が同時に行われ、その収支や人員配置の区別が曖昧である。
②高齢者、障がい者、子どもに対するサービス提供事業が多く見られたが、この問題は日本全国の地方都市に共通の問題であり、被災地ならではの事業としての特徴が弱い。
③逆に、物理的な復興の陰に隠れてしまいがちな生活弱者への支援を継続的に行っている団体の活動には共感できる。
④「住民の為の事業」から「法人継続のための事業」に移行している団体が散見された。
震災からの時間の経過とともに提供するサービスの内容は変わってしかるべきであるが、内容の吟味が必要である。
⑤全体に小粒な事業になりつつある。今少しダイナミックな事業も期待したい。

震災から7年目を迎え、物理的な復興は形になりつつありますが、住民の皆様の生活復興や心のケアはこれからが本番なのでしょう。被災地で活動される皆さんには今後もJTさんのNPO応援プロジェクトをご利用いただき、一日でも早く震災からの復興が叶えば幸いに思います。

【選考委員】
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助成概要と選考理由

テーマ 休耕田を活用した滝沢市在住の内陸避難者と避難先住民のコミュニティ形成支援事業
団体名 特定非営利活動法人 いなほ
代表者 代表理事 佐藤 昌幸
助成額 350万円
選考理由  いなほは、被災した岩手県の沿岸部から内陸部の滝沢市に避難した人たちの外出機会の創出や生きがい・やりがいづくりを目的に、社会福祉協議会と協働して、サロン活動や手作り品の展示会、戸別訪問などを行なってきた。被災者一人ひとりのペースと生の声を大切にした個別性の高い活動は、被災者の生活意欲の向上や課題の早期発見と対応に繋がっている。
 本プロジェクトでは、滝沢市で高齢化や過疎化が進行し、休耕田が増加していることから、これを有効活用して、農業に携わりたいと願う被災者と地域の人々との交流や生きがい・やりがいづくりに取り組む。
 内陸に避難した被災者とその被災者を受け入れた地域住民を一つのコミュニティとして捉え、農業を通じて、両者が無理なく関われる環境を整備することで、継続性の高い活動へと発展することを期待したい。

 

テーマ 東日本大震災被災者を支援するためのコミュニティカフェおよび食料品宅配事業
団体名 特定非営利活動法人 ライフデザイン花巻
代表者 理事長 佐藤 さよ子
助成額 398万円
選考理由  ライフデザイン花巻は、岩手県花巻市で18年間活動に取り組み、高齢者向けの木工教室や料理教室、食堂、三陸沿岸の海産物の販売など地域に密着した活動を展開してきた。
 本プロジェクトでは、花巻市内および近隣地域の高齢者が集う場としてコミュニティカフェ(朝食・昼食の提供等)を新たに立ち上げ、買物弱者に食事を届けるための宅配弁当(1食400~500円の提供、1日20食目標、買物代行サービスへの拡大を想定)に取り組む。これまでにも食堂経営の実績があり、プロジェクトの実現性は高いものと推測される。
 食材は自家栽培のみならず、近隣の農家からの購入も重視しており、高齢者の生活の活性化につながる点も評価した。次年度以降のプロジェクトの自立を目指して、規模の拡大につながるよう期待したい。

 

テーマ 新エリアでの森づくりとにぎわいの創出
団体名 特定非営利活動法人 吉里吉里国
代表者 理事長 芳賀 正彦
助成額 408万円
選考理由  吉里吉里国は、岩手県大槌町の地域資源である森林を有効に活用することで、雇用の創出やコミュニティの再生に取り組んできた団体である。現在は、主に森林の保全整備、薪の生産と販売、薪のある暮らしの提案と普及、森づくりの担い手育成、地域活性化のための交流イベントを行なっている。
 本プロジェクトでは、森林の保全整備の範囲を広げながら、林業技術の習得と伝承、豊かな自然の大切さを伝えるための林業学校や森林教室、薪の湯まつりや薪まつりといった世代間交流イベントに継続して取り組む。また、森と共にある暮らしの価値を伝え、実践する地域住民を増やしていく。
 大槌町は復興が徐々に進む一方で、外部からの支援が減少している。全国的な自伐林業の広がりを追い風に、地域資源を活かしたコミュニティづくりが実現するよう期待したい。

 

テーマ 「子どもと陸前高田の可能性を広げる」ことを達成する多様な住民コミュニティ形成応援事業
団体名 一般社団法人 SAVE TAKATA
代表者 代表理事 佐々木 信秋
助成額 359万円
選考理由  SAVE TAKATAは、東日本大震災の発災直後、岩手県陸前高田市で生活用品等の物資支援、避難所の運営などの活動を行なってきた。最近では、米崎リンゴの商品開発や販売を行なうとともに、若年無業者や生活困窮者の農業体験を企画・運営するなど、被災地のコミュニティ活性化に向けて取り組んでいる。
 また、本団体が地域と学校が連携した教育プログラムの運営を担う大人たち(りくぜんたかた次世代応援団)の伴走支援を行ない、ゆるやかな教育コミュニティが生まれつつある。本プロジェクトではこれを発展させて、子どもと陸前高田の可能性を広げることを目的として、子どもたちと多様な住民が主体的に地域の課題解決に取り組む仕組みをつくる。
 本プロジェクトが行政や地域のNPOと地域住民をこれまで以上に結び付け、近い将来、住民一人ひとりが主体的に地域の発展やコミュニティの活性化に向けて継続的に取り組む仕組みができるよう期待したい。

 

テーマ ‘歌津地区におけるコミュニティ再生・活性のための、住民の手による地域連携プロジェクト
団体名 歌津地区復興支援の会一燈
代表者 代表 小野寺 寛
助成額 340万円
選考理由  歌津地区復興支援の会一燈は、宮城県南三陸町歌津地区で、被災地に住むものが被災者に寄り添った支援活動を行なうことを目指して、コミュニティの再構築や子どもの防災学習、高齢者の生きがいづくり、町内外への情報発信に取り組んできた。
 本プロジェクトでは、災害公営住宅の住民や防災集団移転した住民と地域住民とのコミュニティづくりに重点を置き、歌津地区内にある複数のコミュニティをつなぐネットワーク会議の開催や、復興支援広報紙「一燈」の発行、町外からのスタディーツアーの受け入れなどを行なう。
 本団体は前身団体を含むと、震災前から一貫して同地区に関わって活動していることから、住民から安心と信頼が得られているように感じられる。また、見守り活動や居場所づくりに加えて、震災の体験を次の世代に継承する防災教育や、復興の町づくりに向けて住民と行政との橋渡し役になるなど、新たな役割も担おうとしている点を評価した。今後も活動が継続できるよう応援したい。

 

テーマ コミュニティーガーデンを活用した多様な交流を生み出す事業
団体名 一般社団法人 雄勝花物語
代表者 代表理事 徳水 利枝
助成額 212万円
選考理由  雄勝花物語は、交流人口の拡大という目標を中心に据えて、宮城県石巻市雄勝町で活動を展開してきた。本団体の理念と方法論は、しっかりしており、また分かりやすいものである。
 本プロジェクトでは、①交流人口の拡大(新しいコミュニティガーデンづくり)、②教育支援活動(全国からの訪問者に対する防災教育、語り部活動)、③販売事業(花苗の栽培・販売、カフェ事業の足掛かりづくり等)に取り組む。プロジェクトの趣旨は明確であり、それが予算に反映している点(高齢者向けのトイレ整備、車いす対応プランターなど)も評価できる。
 今後、プロジェクトを継続していくためには、販売事業による財政基盤の強化が不可欠と考えられる。本助成が販売事業の拡大に有効に活用されるよう期待したい。

 

テーマ 市民の主体的活動を核とした、震災伝承ネットワークづくり
団体名 公益社団法人 みらいサポート石巻
代表者 代表理事 大丸 英則
助成額 384万円
選考理由  みらいサポート石巻は、宮城県石巻市での被災対応や復興支援を担ってきたが、その後、防災・地域づくり事業や地域のリーダーを支えることへと軸足を移し、今後は石巻圏で住民主体の伝承全般を担う中間支援組織を目指すなど、復興の進展と共に団体の役割を変えながら将来を展望する力は、信頼に足るものである。
 本プロジェクトは、震災学習の協働体制コンファレンスづくり(地域住民が自らの想いを継続的に伝えられる伝承連携団体の組織化)、岩手県・福島県の祈念公園との連携構築(行政圏を超えたつながりの形成)、宮城県沿岸市町との連携(県内各地で同じ課題に取り組む住民組織の活動のサポート)の3本柱からなり、プロジェクトを団体の再構成のステップとして位置づけ、目的や期待する効果も明確である。
 本助成金を有効に活用し、団体を次のステップへと進め、自立度が高まることを期待したい。

 

テーマ 障がいのある人たちの芸術表現活動から創る「仕事」のカタチプロジェクト
団体名 NPO石巻広域クリエイティブアートの会 ペンギンズアート工房
代表者 代表 宮川 和子
助成額 257万円
選考理由  ペンギンズアート工房は、宮城県石巻市で障がいのある子どもたちのための表現活動に取り組む団体である。2015年にギャラリーを開設し、作品の展示や販売、アーティストを招いて地域の子どもたちや大人たちがアートを楽しめるイベントやワークショップを開催している。
 本プロジェクトでは、ワークショップやイベント、展示会を継続して取り組むことでコミュニティの充実を図る。加えて、アートを通じたコミュニティづくりを地域の中で広げていくために、石巻市民が参加できる新たなイベントづくりに挑戦する。
 被災による生活の苦労が続く中、アートを通じてさまざまな人が出会い、共に楽しめるコミュニティづくりを通じて、石巻市民の暮らしの豊かさの向上につながるよう期待したい。

 

テーマ 仙台及び東北全域の被災者を含む生活困窮者のための生活相談、生活支援事業
団体名 特定非営利活動法人 仙台夜まわりグループ
代表者 理事長 今井 誠二
助成額 279万円
選考理由  仙台夜まわりグループは2000年より仙台市を中心に路上生活者と生活困窮者への生活支援や自立支援に取り組んできた。東日本大震災においては、被災した住民への炊き出しや物資の運搬と提供、震災関連事業に従事した後に生活困窮に陥った人たちへの相談にも対応してきた。
 本プロジェクトは様々な要因で生活困窮者となった人たちを対象に、年中無休の電話相談、みやぎNPOプラザでの週3回の相談会、年2回の相談レポート発行、依存症も含めた健康問題に対応するためのアンケート調査、アパート等の住まいを訪問しての健康チェック、医療機関との連携による講演会を行なう。また、障がいのある人たちや、リハビリ中の人たちを対象に中間的就労の場を提供する。中間的就労の前段では、高齢者支援団体等と連携したボランティア活動を行なうなど工夫も必要であろう。
 17年間の活動実績をもとに生活困窮者の実態を自治体や社会福祉協議会に届け、今後の福祉施策の充実につながることを期待したい。

 

テーマ 被災地域住民の高台(集団)移転や現地再建に伴うあらたなまちつくりとコミュニティ再生・形成のための桜植樹事業
団体名 特定非営利活動法人 さくら並木ネットワーク
代表者 代表理事 細沼 忠良
助成額 343万円
選考理由  さくら並木ネットワークは、桜の植樹を通じて、東日本大震災の記憶を後世に伝承するための活動を行なうとともに、刻々と移り変わる地域住民の環境変化に寄り添い、岩手県・宮城県・福島県の被災した沿岸部のコミュニティの再生や活性化に取り組んできた。
 本プロジェクトでは、植樹による東日本大震災の記憶伝承のみならず、成長した桜が地域の復興や文化の象徴となるよう、地域住民を主体とした植樹活動に加え、生育活動を行なう。また、他地域の住民を巻き込んだ花見会を催すことで、地域間の交流促進を図る。
 本プロジェクトを通じて、被災地が心の復興を成し遂げ、近い将来、植樹した桜の木が東北復興の象徴となることを期待したい。

 

テーマ 亘理こどもサポートを軸とした交流プロジェクト
団体名 特定非営利活動法人 亘理いちごっこ
代表者 理事 馬場 照子
助成額 380万円
選考理由  亘理いちごっこは、宮城県亘理町で住民が集う場づくりを中心に、コミュニティカフェレストランやサロンの運営、子どもの居場所と学習支援、地場農産物を使った製菓の製造や販売等を行なってきた。
 本プロジェクトでは、震災当時、高校生だった子どもたちが親世代になりつつあることから、その子どもたちを地域で見守り、子育て中の若い親たちが交流し、学び合うことができる場をつくるため、新たに家庭的保育所を立ち上げ、そこで働く人材の育成に取り組む。
 本団体は住民のペースを尊重しながら粘り強く活動を続けているため、住民にやる気と自覚と自信が生まれ、サロンの自主運営化に向けた動きも出てきている。本プロジェクトはこれまでの地道な活動を基盤に、新たな資源を地域に創出しようとしており、そのチャレンジ精神を評価した。本助成を通じて地域に根ざした取り組みへと育っていくことを期待したい。

 

テーマ 復興に向けて働き出した共稼ぎ夫婦及び一人親家庭を支援する放課後学童クラブの設置
団体名 特定非営利活動法人 キッズハウスりんごっこ
代表者 理事長 渡辺 英司
助成額 318万円
選考理由  キッズハウスりんごっこは、復興や生活の再建に伴い、学童保育を必要とする共働き家庭やひとり親家庭が増えたことを背景に、子どもたちを安心して預けられ、児童の発達段階に考慮した遊びや読書活動、体験活動を提供する放課後児童クラブを2014年から福島市瀬上町で運営してきた。
 本プロジェクトは、震災によって他地区より避難してきた区域外就学児童が福島市内で最も多い森合地区に新たな放課後児童クラブを立ち上げるため、借り受ける施設のリフォームと図書やボルダリングなどの遊具の充実を図るものである。区域外就学児童には割引制度を導入し、特に放射線量の高い地域から避難してきた子どもたちには施設を無料で開放し、その保護者には教育相談を実施する。
 どのような環境にあっても、社会や大人たちが共に手を携えて、子どもたちが健やかに育つ権利を保障しなければならないという姿勢が強く感じられる。今後共に長く活動を続けていただくよう期待したい。

 

テーマ 福島ひまわり里親プロジェクト
団体名 特定非営利活動法人 チームふくしま
代表者 理事長 半田 真仁
助成額 495万円
選考理由  チームふくしまは、福島県内の若手経営者達が様々なイベントを行い、全国へ情報を発信してきた。また、福島ひまわり里親プロジェクトを立ち上げ、全国でひまわりを育てる里親を募集し、そのひまわりから取れた種を福島に送ってもらい、震災により仕事が無くなった福祉事業所に袋詰めを依頼して、福島の観光地や仮設住宅、学校に配布するなどの活動を行なってきた。これまでの参加者は約20万人にも及ぶ。
 本プロジェクトでは、福島ひまわり里親プロジェクトに継続して取り組み、参加者にプロジェクトの進捗や福島の復興状況を伝えるひまわり新聞の発行や、参加者が活動の成果を発表するひまわり甲子園、福島県田村市大越町のひまわり畑で行なう結婚式、プロジェクトのアーカイブ化に取り組む。
 ひまわりを復興のシンボルとして定着させるという、子どもたちにも分かりやすいプロジェクトであり、震災を契機とした福島と全国とのつながりが深まっていくことを期待したい。

 

テーマ みんな笑顔でつながろう~被災移住者と共に地域で支え合い・学びあい・育て愛~
団体名 すくのびくらぶ
代表者 代表 前澤 由美
助成額 500万円
選考理由  すくのびくらぶは、福島県いわき市で乳幼児や未就学児とその保護者をはじめ、高齢者、障害者など、地域で暮らすさまざまな人たちのコミュニティとなる広場を2015年から運営している。毎年利用者が増え、現在では年間約5万人近くが利用し、保育士などの専門性をもったスタッフが日常的に関わることで、利用者が安心して安全に過ごすことができる居場所となっている。
 本プロジェクトでは、広場で実施してきた子育て支援活動を継続しながら、ママサロンの開催などそこから新たに生まれてきているコミュニティをサポートする。また、運営を支えるスタッフの育成も継続し、組織の基盤づくりに取り組む。
 いわき市は原発事故から避難し移住してきた住民が多い地域であるが、被災した状況の違いによって社会的に分断された人と人との新たなつながりが生まれるよう期待したい。