東日本大震災現地NPO応援基金(特定助成)選後総評

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東日本大震災現地NPO応援基金〔特定助成〕
大和証券フェニックスジャパン・プログラム2012
-被災地の生活再建に取り組むNPOの人材育成- 選後評
「第1回の選考を終えて」

選考委員長 谷山 博史

[プログラムの趣旨]
この助成プログラムは、「現地NPO」の「組織基盤強化」をめざし、「人材育成」を行うものである。特に人材育成には、しっかりとした雇用が重要との考えから、NPOの雇用の保証を要件として人件費の助成を行うところに意義がある。この明確なコンセプトが、果たして今回、どれだけ周知され理解されたかは定かでない。応募件数も27件と多くはなく、しかも応募された内容についても、十分な理解のもとになされたか不安を覚えるものも少なくなかった。単なる人件費の助成を求めたものも少なからずあったように思う。いかに組織基盤を強化するか、そのためにいかなる人材をどのように育成するか、その見通しをたて、構想企画して応募用紙にまとめることは、設立されて間もないNPOにとっては容易なことではない。今後のこのプログラムの発展のためには、そのような趣旨の周知と理解の促進が重要であろう。

[選考の結果]
今回は27件の応募の中から7件を採択した。助成額で2,950万円である。これに合同の研修に関する共通助成150万円を加えると3,100万円の助成総額である。この合同研修は、現地インタビューの結果、事務局より提示され、委員長決裁において決定した。各候補団体とも、NPOとしての社会的な役割やその運営に関してもっと研修が必要と思われるが、それを個別の団体に助成して個々に行うよりも、一同に会して合同で行うほうが効果的ではないかと判断した。それによって団体相互の交流もなされれば、多くのヒントも得られるのではないか。

[選考の経過]
 まず選考委員は、全応募書類を事前に読み込み、7件の推薦と3件の準推薦を選出し、評価コメントをつけて事務局に送信、事務局ではこれをまとめて8月29日の選考委員会に提示、当日は推薦数の多いものから順に意見を述べ合い、議論し、採択候補か不採択かを決めていった。結果として10件の助成候補を選出したが、2件は要件で不明な点が指摘され、その確認が条件であった。2件については委員会後に事務局から電話インタビューを行い、1件は要件未達で却下となった。他の9件については事務局スタッフが2人のペアで現地インタビューを行い、選考委員会で出された疑問について確認するとともに、応募書類だけでは分からない活動や組織の実態を確認し、また育成スタッフの適性や育成方法の妥当性について具体的な説明を受けた。9月13日にはその報告を委員長がうけ、1件ずつ議論しながら、結果として2件は却下、7件を助成対象とすることにした。その議論の中から、先の合同研修の考えもでてきたわけである。
委員会での議論では、「現地NPO」をどう考えるかといった点がある。今回の応募の中には、現地に拠点はもつが現地外のNPOがいくつかあり、これを現地NPOと認めるかどうかについて活発な議論がなされた。その結果、現地にしっかりした拠点があり、その拠点の現地化に向けた方向性が明確で、育成スタッフも現地に根を張って長期に活躍することが期待される場合は「現地NPO」とみなすこととした。しかしこのような団体がいくつか助成候補としても議論にのぼったが、最終的には採択に至らなかった。
候補団体の活動は多種多様で、いずれの活動にもきらりと光るものがある。しかし今回の助成では団体の現地性や市民性のみならず、応募目的において人材育成の視点が明確であるかどうかを重視した。そのため各選考委員にとって応援したい団体が必ずしも助成対象にならないこともあった。繰り返しになるが、助成趣旨の周知が課題である。

[今後に向けて]
今回の応募要項では助成総額を4,000万円とし、10件程度の団体を助成する予定と公表していた。しかし結局、助成対象となったのは7件2,950万円に絞られ、合同研修助成を含めた助成総額も3,100万円で、厳しい選考結果なった。
組織基盤強化に繋がるNPOの人材育成はいかにあるべきか、今後とも助成団体の実践事例を検証しながら、より効果的な助成を行っていければと思う。そのためにも、交流を伴う合同研修は意義のある機会となるのではないかと期待する。また実践の過程でも各団体と密に協議、相談ができることを望んでいる。今回の助成によって「人材あってのNPO」の基盤を強化するというNPO支援の大きな課題に挑戦する意義を改めて確認するしだいである。
今回使いきれなかった助成予定の資金は、次年度以降の助成で、さらに効果的に使用していければと思う。
最後に、暑い最中に限られた時間で応募書類の読み込みに取り組んでいただき、委員会当日は熱心にご議論いただいた選考委員の皆さんに厚くお礼申し上げます。

【選考委員】
委員長 谷山 博史 特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター 代表理事
委員  佐久間 裕章 特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 代表理事
委員  須田 木綿子 東洋大学 社会学部 社会福祉学科 教授
委員  手塚 明美   特定非営利活動法人 藤沢市市民活動推進連絡会 理事/藤沢市市民活動推進センター センター長
委員  岩井 亨    大和証券株式会社 広報部 CSR課 副部長(CSR課長)
委員  田尻 佳史 認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 常務理事・事務局長