東日本大震災現地NPO応援基金(第2期)第5回選考総評

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第2期第5回選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)

「住民と共に生活再建を担う現地NPOの組織基盤強化」

選考委員長 島田 茂

はじめに

東日本大震災から2年が過ぎた。現時点でも35万5千人が全国全ての都道府県に避難し、約10万人が仮設住宅で生活している。多くの人々は未だに将来の目途が立っていない。支援が長期化する中で、活動資金が集まらず、他県からボランティアとして現地に赴く人々が減少する中で、現地NPOは住民と共に生活再建を担っている。
東日本大震災現地NPO応援基金は、2011年3月に日本NPOセンターに設置され、個人・団体・企業の寄付によって、2011年10月までを救援期(第1期)として、緊急活動に取り組む現地NPOを対象に助成を実施した。11月からは生活再建期(第2期)として「被災者の生活再建を支援する現地NPOの組織基盤強化」をテーマにこれまで4回に分けて助成した。この助成は、被災地域における住民の生活再建のために、現地NPOが組織基盤を確立することで、長期に持続可能なきめ細やかな支援が可能となることを期待している。

応募状況と選考プロセス

第5回の応募は、1月末日に締め切り、73件の応募があった。このうち、これまでに一度も助成を受けたことがない団体からの応募が67件、これまでに助成を受けたことがある団体で、2013年3月末までに助成が終了する団体からの応募が6件あった。
選考は、新規助成については、応募多数のため、事務局による予備審査を実施し、予備選考委員会で選出した応募団体41件について、選考委員が本審査を実施し、本選考委員会で新規助成に相応しい団体を選出した。継続助成については、各団体のフォローアップインタビューを行い、選考委員が審査を行い、本選考委員会で継続助成によって組織基盤が一層強化されると判断できる団体を選出した。
各選考委員は予備審査に残ったすべての応募書類を読みこみ、団体要件や趣旨の適合性、「生活支援活動の評価」「計画に相応しい組織基盤又は活動実績があるか」「組織基盤強化の背景・目的の明確さと実現方法の適切さ」「実施体制・スケジュール・予算など計画内容が効果的か」「組織基盤強化が生活再建を持続的できめ細かな支援が可能となり長期的な貢献に期待できるか」から、全ての案件にABCの評価を付け、推薦対象を6件に絞り込んだ。第2段階では、各委員の推薦結果をもとに選考委員会で検討を重ねて助成対象候補として、新規支援は8件、継続支援は3件に絞り込んだ。第3段階では、事務局が助成対象候補に対して現地インタビューを行い、選考委員長はその報告を受け、新規支援は4件、継続支援は3件の助成を決定した。

応募内容と選考の印象

今回は、これまでの4回の応募と比べて新たな事業年度を迎えるためか件数は多かった。震災後2年間にわたり大半の団体のスタッフやボランティアは、自らも被災しつつ現地で生活し、生活再建をともに担い活動している。被災した住民の心のケア、福島の子どもの心身の健康を促進する活動、森づくりを通して林業従事者を育成する活動、女性の自立を目指して仕事を支援する活動、コミュニティカフェを通して給食サービスを提供する活動、仮設住宅住民の移動をサポートする活動、被災者となり介護を必要とする高齢者・障がい者支援活動など、それぞれの団体は、住民の生活を再建し、コミュニティ形成に貢献している。応募団体も回を重ねるごとに応募内容に説得力があり、被災し先行きが見えず苦悩している住民に寄り添いつつ活動している姿が浮かび、どの選考委員もこれまで以上に審査が難しかった。
応募団体の組織基盤強化の内容では、経理・事務能力のあるスタッフの採用や育成、規則や経理システムの整備、財政基盤強化のための会員制度や寄付システムの導入など、持続可能な支援をするために、団体の透明性やガバナンスを強化し事務体制を確立しようとする応募が目立った。
審査では、生活再建活動又は支援団体として、審査要件にあるように本助成の支援によって持続可能な組織となるかということであった。前回までの応募では、強化する以前に組織化されていない個人の企画、営利団体が事業補てんをするためと思われる企画、協力しているコンサルタントの作文による企画などが散見されたが、今回は大半の団体が震災後活動を継続し、実績を積み重ねミッションや活動の重要性が評価できる団体が多かった。その中でもビジョンとミッションが被災した住民の生活再建支援として明確で、組織のガバナンスを高めつつ、自立的な組織を確立するために、助成金や委託費への依存から、会費、寄付、そして自主事業の獲得に着手している団体が高い評価を得た。
一方で、すでに組織としての基盤が比較的確立している団体の応募もあった。助成された現地NPOは、ニュースレターやインターネットなどのメディアを通して、組織のミッションや活動報告などについて広く情報発信を適時行い、団体としての公明性と透明性を高め、支援者やボランティアを募り組織基盤を自ら強化してほしい。今回の助成金が、被災者と寄付者の期待に応えられる結果であることを願う。

東日本大震災現地NPO応援基金(第2期第5回)選考委員
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