東日本大震災現地NPO応援基金(第2期)第6回選考 助成概要と選考理由

第2期第6回助成先一覧 | 選考総評 | 助成概要と選考理由
第2期第6回選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)

【新規助成】

テーマ 施設利用者が生きがい・やりがいを持ち自立して生活出来ることを目指した現地NPOの組織基盤強化
団体名 特定非営利活動法人 カトレア会(岩手県住田町)
主な活動地域 岩手県住田町
選考理由  カトレア会は、岩手県住田町に拠点を構える気仙地域で唯一の障がい者通所施設であり、津波で父親を失くされた方や東日本大震災で甚大な被害があった釜石市からの施設利用者の受け皿にもなっている。
 今後の活動ビジョンでは、施設利用者にとっての生きがい・やりがいにつながる事業の展開、将来的には同地域ならではの農業を充実させ、グループホームをつくり他地域から農業に挑戦したい障がい者の受け入れなどを掲げ、1)従前受託してきた内職作業等での不安定で安価な工賃からの脱却を目指した中山間地の自然と広大な土地を活かした「畑わさび」の栽培・販売、2)利用者への支援の充実のための新規スタッフの雇用と育成に取り組むとしており、本助成金は畑わさび栽培の設備投資費用、農業の専門スタッフおよび次世代を担う新規スタッフの人材確保に使用する。
 事業の途上には様々な困難が予測されるが、施設利用者の自立に向けて地域性を活用した復興事業モデルとしての大いなるチャレンジと、地域での唯一の障がい者施設として地域で生きづらさや苦しさを抱え、さらに被災の傷を負った当事者やその家族への思いに応えらえる組織に成長することを期待したい。
テーマ 陸前高田市における発達障がい児本人支援体制整備と地域理解まちづくり普及事業に取り組む現地NPOの基盤強化
団体名 特定非営利活動法人 いわて発達障害サポートセンターえぇ町つくり隊(岩手県一関市)
主な活動地域 岩手県陸前高田市
選考理由  いわて発達障害サポートセンターえぇ町つくり隊は、震災直後から拠点である一関市での活動と並行して陸前高田市内での発達障がい児童の支援、発達障がいの偏見に対する啓発を行っている団体である。2013年9月からは岩手県の指定事業所として児童発達支援事業所・放課後等デイサービス「さぽーとはうすすてっぷ」を開設した。
 今後の活動ビジョンに、グレーゾーンの児童も含めての課題克服やニーズに基づいた活動としての専門的な本人支援事業および発達障がい児を地域で支え合いながら、誰にでも暮らしやすいまちの実現、陸前高田市内での事業、運営の現地化を掲げ、1)専門的支援を行えるためのスタッフの支援スキルの向上、2)「さぽーとはうすすてっぷ」の運営基盤の整備と事業安定化、3)発達障がいに対する地域への理解を促すための各関係機関とのネットワークづくりに取り組むとしており、本助成金は現地スタッフの人材確保および「さぽーとはうすすてっぷ」の運営費に使用する
 震災後の陸前高田市において、市内の保育所、小中学校等に対して児童デイサービスに関するニーズ調査を実施し、ニーズの把握と運営が安定軌道にのるまでのプランニングもできている。組織内の人材、体制を強化することにより、震災において必要としているサービスが提供されない障がいを持つ子どもたちとその家族を支え続けられる組織に成長することを期待したい。
テーマ 福島県内NPOによる継続的な被災者支援を実現するための情報収集・発信機能の強化に向けた中間支援組織としての基盤強化
団体名 一般社団法人 ふくしま連携復興センター(福島県福島市)
主な活動地域 福島県
選考理由  ふくしま連携復興センターは、福島県の復興支援団体を支援し、支援ネットワークを形成する機関として設立され、中間支援組織として、東日本大震災被災地3県での現状課題共有のための3県(いわて・みやぎ・ふくしま)連携復興センターの定例会議をはじめとするネットワーク形成や協働推進事業、情報提供・情報発信やコーディネート事業、提言事業や広域避難者支援事業等幅広く活動を展開してきた。
 今後の活動ビジョンでは、長期にわたることが予想される復興支援活動と被災者支援を継続するために、復興支援に関わる多様な主体のネットワーク形成や福島県内の多様なセクターの幅広い情報を集約、整理し、効果的な発信を行う中間支援機能と、様々な視点から福島県の震災復興に関する論点を整理し広く提言活動を行うシンクタンク機能の充実をはかることを掲げ、1)情報収集機能の強化、2)情報発信機能の強化、3)情報収集・発信機能を通じた今後の中核的な役割を担う人材の育成に取り組むとしており、本助成金は情報発信媒体制作および担当スタッフの人材確保に使用する。
 情報収集機能や情報発信機能を強化するには、それを担う人材の確保または育成、ウェブ等の発信メディアの充実などが重要になることから、組織基盤の強化をはかり、他団体との連携や多様なセクター間のネットワーク形成に一層注力し、これまで以上に福島県内NPOの継続的な被災者支援を実現するための中間支援組織としての機能を十分に果たせる組織に成長することを期待したい。

【継続助成】

テーマ 大槌・釜石での長期的な生活支援と継続した居場所づくりに取り組む復興支援NPOの基盤強化
団体名 特定非営利活動法人 サンガ岩手(岩手県盛岡市)
主な活動地域 岩手県大槌町・釜石市
選考理由  サンガ岩手は、震災後に設立され、避難所や仮設住宅等での傾聴ボランティアや支援物資の提供などを行い、2012年7月には大槌町に「手づくり工房おおつち」を開設して、大槌町や釜石市の仮設住宅の住民を対象に内職プロジェクトや居場所づくりに取り組んできた。
 今後の活動ビジョンでは、昨年開設した手づくり工房おおつちが、地域のサロン的な役割を果たし、地域に根差した場として住民がつどい、つながっていくための継続的な居場所の提供、組織として人を育てるNPOとなること、工房の運営や手芸の制作、販売、事務など全て被災地域の人を雇用し生活再建につなげることなどを掲げ、1)被災者の生きがいづくり支援、2)現地運営スタッフの人材育成、3)長期的な生活支援のための住民と連携・協力した事業展開に取り組む。
 第4回選考からの継続した応援となるが、手芸の製作・販売など被災者の雇用創出に貢献する事業確立への取り組みとともに、活動の原点である地域再生や生活再建の基盤となる居場所づくり、コミュニティづくりの軸を保ちながら、地域住民が主体となり、現地のニーズに対応した長期的な生活支援を展開できる組織に成長することを期待したい。
テーマ 復興公営住宅における共助型コミュニティ構築と継承を目指したNPOの基盤強化
団体名 あすと長町仮設住宅共助型コミュニティ構築を考える会(宮城県仙台市)
主な活動地域 宮城県仙台市
選考理由  あすと長町仮設住宅共助型コミュニティ構築を考える会は、仙台市内の長町駅近くに位置するあすと長町仮設住宅において、仙台市の復興公営住宅が地域住民の声を反映した建設計画となるように政策提言などハード面での活動に取り組み、同区域内に3ヶ所340個の建設計画が決定した後は、終の棲家に適した新たなコミュニティ構築などソフト面での活動を実施している。
 今後の活動ビジョンに、これまで同仮設住宅で生活してきた住民と復興公営住宅で新たに生活をともにする住民とのつながりづくり、組織を継続、継承していくための次世代の担い手の育成などを掲げ、1)新たなメンバーも活動に関われるような体制の改編や組織化、2)復興公営住宅自治組織との連携、3)周辺地域コミュニティとの連携強化に取り組む。
 第3回選考からの継続した応援となるが、復興公営住宅の建設に向けた取り組みから、地域の居住者の関係作りの機会としてコモンミール(会食会)の継続的な実施などを通じた、復興公営住宅への入居後も共同生活の暮らしが継続する環境をつくることを目的としたあすと長町仮設住宅共助型コミュニティ構築を考える会の活動が、各地で仮設住宅から復興公営住宅への移動が始まる中、改めて地域コミュニティが再編される中で起きる課題に対しての解決策の一つのモデルとなることを期待したい。