東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト」第5回助成概要と選考理由

第5回助成先一覧 | 選考総評 | 助成概要と選考理由
第5回選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)

事業名 街角・Café&軽食 桜さくら/フリースペースららぽーと
団体名 特定非営利活動法人 夢みの里
主な活動地域 宮城県石巻市
選考理由 夢みの里は、障害のある人もそうでない人も共に暮らせる環境づくりと子育て支援を目指して、主に障害児の放課後ディサービスなど障害者通所支援事業や英語教育支援事業を展開してきた団体である。震災では大規模半壊の被害を受けた。助成事業では、津波で活気を失った石巻の街に、軽食・喫茶ができるミニレストラン兼cafeとフリースペースを開設する。この場所は、障害児をもつ母親や特別支援学校卒業後の障害者に働きやすい就労機会を提供するとともに、障害児やグレーゾーンの子どもの母親たちにとって気軽に集い情報交換できる場でもある。また広く一般に開放して茶話会や研修会など誰もが立ち寄ることのできる、交流の場にしようとしている。2014年10月にオープンするミニレストランでは、障害者が農場で育てた無農薬野菜を食材とするメニューづくりを計画しており、障害児の母親2名がその運営に主体的に携わる。このように障害児やその親たちが地域で仕事をすることを通じて、人々の憩いと交流の場として根付き、まちの活性化にもつながっていくことを期待したい。
事業名 被災による子どもの貧困救済及び貧困連鎖予防事業
団体名 特定非営利活動法人 キッズドア
主な活動地域 宮城県仙台市
選考理由 震災から3年半が経過し、仙台市内では被害の直接的な爪痕は見えなくなりつつある。復興の波に乗り生活再建を果たした人はいるが、一方で雇用を失ったり収入が減少したりと、経済的なダメージを克服できない層も少なくない。経済的に厳しい家庭の子どもたちにとっては、自宅での学習環境が悪かったり、食事が満足にとれず勉強に集中できないなど、学習の遅れや進学への障害となる事態が生じている。資金面の課題とともに子どもたちの学習意欲や将来への希望を高める働きかけが重要になっている。助成事業は、中高生の居場所機能をもつ自習室を開くことで、学校帰りの子どもたちの学習と食事の支援を行なうとともに、大学生ボランティアによる身近なサポート体制をつくるものである。また、将来に向けての希望や夢を描くためのキャリア教育や大学見学、さらには家庭に対する教育資金や家計全体への相談事業を並走し、子どもたちの夢を実現するための経済基盤を整えるための支援も準備している。きめの細かい支援効果とあわせて、被災によるに貧困の連鎖を防ぐことも期待したい。
事業名 ふくしまの農業を現地で知り交流する「スタディファーム」の構築
団体名 特定非営利活動法人 がんばろう福島、農業者等の会
主な活動地域 福島県二本松市
選考理由 がんばろう福島、農業者等の会は、福島県内の30の農家により組織され、震災直後からネットショップを立ち上げるとともに、150回以上首都圏等への直販活動を行うなど、放射能汚染に対する風評被害に立ち向かいながら、安全な農作物を市場に送り出し消費者の理解を得るための活動を続けてきた団体である。助成事業では、消費者に福島での農作業の現場を実際に見ていただき、生産者と消費者の顔の見える交流ができる場づくりとして、福島県二本松市にてスタディファーム「二本松農園」を構築しその機能整備に取り組む。さらには、県内の果樹農家や観光との連携を図る「県内ルート」づくりも行う。加えて、東京、大阪、福岡等に出向き、福島県の農業の現状を説明し交流する出張スタディファームにも取り組む。本事業を通じて他地域から多くの市民が訪れ、福島の農業者の状況やさまざまな挑戦を続けているその熱意と行動力がよく理解され、交流が生まれることから得られる成果を期待したい。
事業名 津波被災地における女性視点でのくらしの課題解決の事業化支援第二期
団体名 特定非営利活動法人 ウィメンズアイ
主な活動地域 宮城県南三陸町
選考理由 ウィメンズアイは、被災地での女性支援をミッションに、気仙沼市、南三陸町、登米市で、女性たちのコミュニケーションの場づくり、シングルマザー支援、女性グループの活動支援に取り組んできた団体である。助成事業は、第1回助成からの継続事業として農村・漁村の中山間地域において、女性グループによる地域社会の課題解決につなげていくためのきめ細かい相談事業や各種講座を実施するとともに、身の丈に合った持続可能なソーシャルビジネスの立ち上げ支援などにも新たに取り組む。雇用創出や起業支援の取り組みにおいては、地域の団体による息の長い支援が求められるが、地域のNPO、行政、商工会等との協力体制を構築しながら、信頼できる相談窓口として一定の評価を築いてきていること、支援先団体や支援方法の課題がしっかり分析されており、ワークショップ、個別相談、専門家との相談会、合同スキルアップ講座、個別研修など、個々の事情や進捗に応じた丁寧な支援を行っている点は高く評価できる。萌芽的な活動を始めている支援先の女性グループが持続的に活躍できる力を身につけるための、より一層の地域を巻き込んだ丁寧な伴走支援・協力体制作りと、自立化の推進を期待したい。
事業名 仮設住宅住民の心身の健康維持と災害公営住宅のコミュニティ形成
団体名 特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター
主な活動地域 宮城県気仙沼市
選考理由 日本国際ボランティアセンターは、宮城県気仙沼市四ツ浜地域の在宅住民と鹿折中学校仮設住宅の住民を対象に個別訪問や交流会などを定期的に開催してきた。こうした丁寧な関係づくりが功を奏し、懸念される孤独死防止にもつながっている。助成事業はこの活動をさらに発展させ、特に仮設住宅住民の心身の健康維持のための活動に取り組むとともに、この地域に建設される災害公営住宅のコミュニティづくりに資するため、行政や他支援団体も巻き込んだワーキンググループを設置し今後の対応策を協議する。被災沿岸部各地は、防災集団移転や災害公営住宅への転居に伴うコミュニティの再構築が最重要課題となっており、この取り組みが優れた先進事例として他にも波及されることを期待したい。また、多くの外部支援団体が資金面などの理由で撤退または活動休止を余儀なくされている現状の中、息長く地元と伴走されることも期待している。
事業名 障がい児の被災者家族の支援プロジェクト
団体名 特定非営利活動法人  ふよう土2100
主な活動地域 福島県郡山市
選考理由 ふよう土2100は、長期の避難生活や原発事故の影響で不安やストレスを抱える障害児とその家族の支援を目的とした事業を行っている。1年目の活動では、交流サロンを年間300日近く開き、原発警戒区域の双葉郡から避難している人たちを含めて多様な年代の障害児・者延べ1000人に活用された。また、家族の相談やストレス軽減のプログラム、障害児と兄弟の自然体験学習活動、スタッフの育成活動が行われた。当初の活動目標はほぼ達成されたが、障害児の放課後の居場所づくりや支援学校卒業後の就労相談やきめ細かいアフターフォローなどのニーズは高く、2年目の活動では、交流サロンを2015年4月から「放課後ディサービス」に移行させるとともに、常設の相談室活動を充実・強化し、併せて就労体験講習会の開催などの新規事業にも取り組む。1年目の活動により事業が地域に必要なものとして定着し始めているので、これらの活動をよりニーズの沿った形で発展的に継続させて、障害児の被災者家族の支援にあたってほしい。さらには、公的財源の確保を含む財政基盤の確立、人材育成、組織体制の強化などを検討されて、この事業が中長期的にしっかりと根付いていくことを期待したい。