東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2014」 選考結果について

助成先一覧 | 選考総評 | 助成概要と選考理由
選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)

東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2014-被災地の生活再建に取り組むNPOの人材育成-」の新規助成ならびに継続助成の選考を行い、下記の通り決定いたしました。(助成期間 2014年10月~2015年9月)

大和証券フェニックスジャパンプログラム このプログラムは、大和証券株式会社による「ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.3-フェニックスジャパン-」の信託報酬の一部をご寄附いただき、日本NPOセンターが現地NPO応援基金の特定助成として、市民社会創造ファンドと協力して2012年度より実施しているものです。年1回の公募により、プログラム開始から5年にわたって実施する予定です。

助成先一覧

【新規助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
14特1-1 被災地におけるNPO中間支援組織スタッフの組織運営力とまちづくりコーディネート力の向上
特定非営利活動法人夢ネット大船渡
岩手県
大船渡市
351
14特1-2 被災地における障害児支援スタッフ育成
特定非営利活動法人いわて発達障害サポートセンターえぇ町つくり隊
岩手県
一関市
319
14特1-3 被災地における若者定住者創出のための若年無業者支援の専門家育成
一般社団法人SAVE TAKATA
岩手県
陸前高田市
388
14特1-4 地域まちづくりにおける次世代リーダーの支援力の向上
特定非営利活動法人海べの森をつくろう会
宮城県
気仙沼市
280
14特1-5 浦戸寒風沢コミュニティハウスの管理業務を担う農業指導員の育成
特定非営利活動法人浦戸アイランド倶楽部
宮城県
塩釜市
326
14特1-6 原発被災者の長期支援を目指した事業責任者育成を通じた組織基盤強化
一般社団法人情報センターFais
福島県
田村市
331
14特1-7 障がい児者家族支援サポートのための専門スタッフ育成
特定非営利活動法人ふよう土2100
福島県
郡山市
330
【継続助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
14特2-1 大槌たすけあいセンターにおけるスタッフの地域復興へのセルフケア力の育成(2)
特定非営利活動法人遠野まごころネット
岩手県
遠野市
315
14特2-2 福島農業の復興に向けた6次化人材育成プログラム~コーディネート&財務マネジメント力の育成~(2)
一般社団法人ふくしまかーちゃんの力ネットワーク
福島県
福島市
370

※このほかに助成対象団体の合同研修会の開催費として200万円
※助成対象件数 10件(新規助成7件、継続助成2件、合同研修助成として1件)
※助成総額 3,210万円(合同研修助成金200万円を含む)

選後総評

選考委員長 谷山 博史

 本助成プログラムは、東日本大震災で被災した地域の再建支援に取り組む現地NPOのスタッフの育成を支援するものである。被災地のNPOが真に地域のニーズをくみ取り効果的な支援活動を持続的に行えるかどうかは、スタッフの人材育成と人材育成を通しての組織基盤の強化が不可欠と考え、2012年から開始された。

[本プログラムの特徴]
 東日本大震災から3年半が経った。発災直後から被災地では多くの市民活動団体が自然発生的に生まれた。被災した人々自身が主体となって立ち上げた団体もあれば、域外から駆けつけた人々が地元と連携して発足した団体もある。また既存の団体が震災後被災者支援と被災地の再建に乗り出したケースも多い。いずれの場合も被災地での活動は、震災援助のブームが去りつつある中で外部資金の目途が先細るとともに、被災地の復興が進まない中、団体を支える地域の社会経済的な基盤も脆弱なままである。まさに現地NPOにとって曲がり角の時期に来ている。
 本助成プログラムは、東日本大震災で被災した地域で被災者の生活再建等の支援に取り組む現地NPOのスタッフの育成を通して、団体の組織基盤の強化を支援するものである。通常の助成ではカバーされにくい人材育成活動を、育成スタッフの人件費も含めて支援することで、必要な人材の雇用を確保し育成するとともに、社会保険の加入を義務付けることで、スタッフが業務に専念できる雇用環境の整備を期待している。

[今年の申請案件の特徴]
 プログラムは今年で3年目を迎える。開始当初に比べ年々現地NPOにスタッフ育成の必要性についての認識が高まるとともに、組織基盤の強化が喫緊の課題と感じる団体が多くなっていることが審査案件を通して感じられる。しかしスタッフ育成と組織基盤の強化をいかに結び付けるかが必ずしも育成計画のなかで明確になっていない、スタッフの育成の方法や団体としてのフォローアップ体制が具体化していない、といった課題は、多かれ少なかれどの団体にも共通している。刻々と変わる被災地の状況と支援ニーズに対応することに忙殺されてきた現地NPOの実情が見て取れる。
 そのような中でも、被災者支援活動開始後3年が経過する中で、活動を通して見えてきた団体としての役割の独自性を所与の条件の中で掘り下げ、自分たちのミッションを再構築した、あるいはしようとしている団体はスタッフ育成のビジョンが比較的明瞭であった。また今回は、外部からの助成に頼らず、自己資金を確保することを課題として明確に意識している団体が多かった。一方、被災地が直面する課題は日本の地域が共通に抱える問題に先行したものであり、自分たちの活動が地域の問題解決のモデルになりうるという意識をもつ団体も少なくない。継続助成案件では、新規助成で育成課題に取り上げられていた収益事業で成果を上げている点が目立った。また新規助成案件とも共通するが、活動のビジョンの中に地産地消の観点と農業分野の活動が織り込まれている団体も多い。

[選考過程と結果]
 今年は助成件数10件、助成総額3,210万円の助成を決定した。
 このうち新規助成では22件の応募に対して7件を採択した。助成額では2,325万円になる。選考プロセスは次のようなものである。まず全応募書類を選考委員が事前に読み込み推薦案件と準推薦案件を選出する。事務局はすべての委員の評価を取りまとめた資料を作成し、それをもとに第一回選考委員会で採択案件を絞り込むと同時に案件ごとに確認すべき項目を抽出する。事務局は現地での面談または電話にて確認項目について聞き取りをし、その結果をもとに第二回選考委員会で最終選考を行う。選考審査では、推薦、準推薦案件ともに育成計画の妥当性と具体性が書面上不十分なことが多かった。聞き取りで疑問が解消したものもあるが、助成決定後の相談や合同研修においてプログラム側から提案し、対話を重ねることも必要であろう。
 継続助成では3件(内1件辞退)の応募に対して2件を採択した。助成額は685万円である。選考プロセスでは、選考委員会において応募団体の面接を行った。採択案件は新規助成の期間にスタッフ育成の具体的な成果が認められるとともに、継続助成によってその成果が定着して育成対象スタッフの雇用の持続性が確保されることを通じて、スタッフが組織の中核として活躍し続け、それにより事業や組織が育ち組織基盤が整備・強化されることを期待している。
 また今回も昨年と同様に、助成団体を対象とした合同研修助成を市民社会創造ファンドの申請案件として採択した。これは本プログラムの助成対象団体を対象に、本プログラムの趣旨である“人材育成による組織基盤強化”に対する理解を深め、今後の活動の糧となる情報収集や交流の機会となるよう、合同で年2回の研修会を行うものである。昨年は育成スタッフと育成責任者(スーパーバイザー)が仙台市に一堂に会しての研修であったが、スーパーバイザーの個別研修や仙台以外の被災地での研修も検討する予定である。

【選考委員】
委員長 谷山 博史  特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター 代表理事
委員  佐久間 裕章 特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 代表理事
委員  須田 木綿子 東洋大学 社会学部 社会福祉学科 教授
委員  手塚 明美  特定非営利活動法人 藤沢市市民活動推進連絡会 理事・事務局長
委員  横山 正浩  大和証券株式会社 広報部 担当部長(CSR課長)
委員  田尻 佳史  認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 常務理事

助成概要と選考理由

【新規助成】

テーマ 被災地におけるNPO中間支援組織スタッフの組織運営力とまちづくりコーディネート力の向上
団体名 特定非営利活動法人夢ネット大船渡
代表者 理事長 岩城 恭治
助成額 351万円
選考理由 この団体は、岩手県大船渡市・陸前高田市・住田町の官民協働を推進し、2市1町の活性化とNPO支援を目的として設立され、仮設住宅支援、県外支援団体のコーディネート、被災者支援情報誌の発行などを行っている。
団体の将来ビジョンとして、専従職員配置が可能な財政を確立し、被災者支援や復興まちづくりと、三陸鉄道南リアス線盛駅業務を中心に展開したいと考えている。今回の助成では団体を担う次世代の育成として、県内外支援団体や復興まちづくりのコーディネートや、NPO支援組織としての経理や事業を担えるスタッフの育成を目指す。
被災地支援スタッフの能力を向上させ、NPOとしての組織基盤を構築し、息の長い活動を続けることを期待する。
テーマ 被災地における障害児支援スタッフ育成
団体名 特定非営利活動法人いわて発達障害サポートセンターえぇ町つくり隊
代表者 代表理事 熊本 葉一
助成額 319万円
選考理由 この団体は、発達障害児者が自立して暮らせるまちづくりを目指して2003年に岩手県一関市に設立された。震災直後より陸前高田市に支部を設け、主に発達障害児者への支援と理解啓発活動を行ってきた。震災後から多数のボランティア団体が陸前高田市に入り支援を行っているが、障害児者への支援団体は一つもなく、障害児者への支援が薄い状態であることから、本団体では2013年に陸前高田市において初めて児童発達支援事業、放課後等デイサービス事業を開始した。
団体の将来ビジョンとしては、今後数年において発達障害児者が成長しても切れ目のない支援を提供できる組織を目指しており、そのために近い将来に地元スタッフへの引き継ぎを行うための人材育成を必要としている。今回の助成では、地元で事業を担えるリーダー的人材を育成するとともに、次世代の人材育成として、高校生をサポーターとして養成することを目指している。
長期的な事業の持続と、地域で必要とされるサービスの提供主体として発展していくことを期待している。
テーマ 被災地における若者定住者創出のための若年無業者支援の専門家育成
団体名 一般社団法人SAVE TAKATA
代表者 代表理事 佐々木 信秋
助成額 388万円
選考理由 この団体は、震災後、岩手県陸前高田市において、復興を通じて「挑戦の陸前高田で、日本の未来を創る地域づくりを目指す」を理念に、同市出身者や被災者の若者が中心となって設立された団体である。
緊急支援期には、避難所運営支援、生活支援、情報発信などの事業を展開してきたが、復旧期における活動の広がりを通して、緊急支援の団体から、持続的に地域課題を解決するために、農業、IT事業、若者事業に軸を定めた事業への移行を進めている。
本助成は、地域からの若者の流出に歯止めをかけるべく「若者の定住者創出」を掲げて実施するもので、特にニートやひきこもりの若年無業者が、陸前高田市で自立・定住して更なる地域課題の解決につながる仕組みづくりと、それを担う人材の育成を目指すものである。
育成対象者が事務局長となっている点には多少の懸念もあるが、中核的な人材を育成する時間の確保や体制の整備について、組織全体としてフォローする仕組みを整えることが、新たな組織づくりのための一歩につながることを期待している。
テーマ 地域まちづくりにおける次世代リーダーの支援力の向上
団体名 特定非営利活動法人海べの森をつくろう会
代表者 理事長 菅原 信治
助成額 280万円
選考理由 この団体は、宮城県気仙沼市で被災した海べの地域の再生と防災、地域財産と文化の後世への継承等を目的に、被災地にて植樹活動を中心とした故郷づくりを行っている。
今回の助成では、活動をさらに継続させるにあたり、外部から気仙沼に移住した若手スタッフを団体内の次世代リーダーとして育成し、組織の基礎体力の向上とイノベーションを図ることを目指す。
この団体は、ボランティアの受け入れや住民の生活再建の支援なども行ってきている。これら震災直後~復興期の活動を継続させつつ、さらに長期的な展望のもとで事業の再構成をはかるための意欲的な人材育成である。助成を機に、団体の活動がさらに充実し、その成果が広く地域に享受されるよう願ってやまない。
育成スタッフの長期雇用と事業の継続性を盤石なものとするための具体的な方策としては、事務局体制の強化も一法である。検討を試みられたい。
テーマ 浦戸寒風沢コミュニティハウスの管理業務を担う農業指導員の育成
団体名 特定非営利活動法人浦戸アイランド倶楽部
代表者 理事長 大津 晃一
助成額 326万円
選考理由 この団体は、宮城県の浦戸諸島のひとつである浦戸寒風沢にて、2008年から島の豊かな自然環境の復元と自然と共生する農業と漁業の再生に取り組んできた。震災後は、壊滅した農漁業の再生と島の持続可能性の為に様々な取り組みを行っている。
今回の助成では、2015年4月に開設予定のコミュニティハウスの管理業務と事務局業務を担う人材育成を目指す。
自然と島の再生という夢のある事業であり、かつ、申請書の内容には説得力があり、計画の実現性の高さをうかがわせた。既存の事業をさらに発展させるための事業展開に必要な人材を育成するという目的も、合理的かつ明確なものであった。
今回のスタッフ育成にあたっては、研修方法について再検討の余地がありそうである。助成を機会に、各種の中間支援組織や他の活動団体との接触も増えるので、積極的に助言を求めたり、アイデアを交換するのも一法だろう。また育成する人材の長期雇用にむけて、財政面の強化も期待される。
テーマ 原発被災者の長期支援を目指した事業責任者育成を通じた組織基盤強化
団体名 一般社団法人情報センターFais
代表者 代表理事 菅野 芳信
助成額 331万円
選考理由 この団体は、福島県田村市で避難者支援を実施していた「田村市災害ボランティアセンター」で活動していたメンバーが中心になり設立した。当初は大熊町と田村市都路地区からの避難者への支援を実施していたが、田村市都路地区の一部が避難指示解除準備区域(設立当時)であり、また高齢者率の高い同地区の長期的な支援が不可欠であると考えて活動を転換した。都路地区の住民約450名を対象に仮設住宅の訪問、独居高齢者の安否確認、移送サービスやサロンなどを実施している。
本助成では、避難指定解除準備区域が解除された都路地区に移転した団体拠点を活用し、更なる活動の充実のために、介護保険制度を活用した小規模デイサービスの展開と移動困難者の移送サービスの充実を目指している。それらの活動の安定と継続のために、スタッフのスキルアップを目指して専門研修やサポート体制の充実を図る。
この人材育成をきっかけに組織基盤強化を図り、原発被害に翻弄される高齢者を中心とした支援活動が、長く展開できる組織に成長することを期待したい。
テーマ 障がい児者家族支援サポートのための専門スタッフ育成
団体名 特定非営利活動法人ふよう土2100
代表者 理事長 里見 喜生
助成額 330万円
選考理由 この団体は、子どもや障害者の教育・学習支援、地域・まちづくりなどに取り組むもので2011年に設立された。2012年には福島県郡山市に障がいの種類や年齢を問わず子どもたちとその家族を支援する「交流サロンひかり」を開設し、原発事故避難家族も含めた支援を行っている。
今回の助成では、障害児のデイサービス事業および日中一時支援事業の立ち上げのために、スタッフの専門知識や技術の向上と、同サロンの中長期的な運営を目指している。
家族の悩みに対する相談・共有の場となるのみならず、中高生等を放課後に預かる場として、特に支援が必要と考えられる障がい児者を持つ原発事故避難家族への支援として、高く評価出来る。研修内容としても、OJTと連携NPO法人への視察研修が計画されており、概ね妥当である。視察研修については、事前にその目的を整理して、具体的な問題意識を持って研修先に向かうことで、より高い研修結果に結びつけることを期待したい。

【継続助成】

テーマ 大槌たすけあいセンターにおけるスタッフの地域復興へのセルフケア力の育成(2)
団体名 特定非営利活動法人遠野まごころネット
代表者 理事長 多田 一彦
助成額 315万円
選考理由 この団体は、震災直後から、任意団体でありながら岩手県沿岸の復興支援に積極的に取り組んできたが、その一地域である大槌に、海外からの支援を受け「大槌たすけあいセンター」を建設し、2014年5月にオープンした。
昨年度の助成では、2名のスタッフを育成し、センター内で、障害者の自立を目指した「まごころ就労センター」事業と、地域のセーフティネットとなる生活支援事業においてOJTと研修による人材育成を行い、海鮮餃子をはじめとするものづくり開発につなぐことができた。
今回の継続助成では、沿岸地域で特にニーズの高い、障害者就労の支援を支える人材の育成を目指しており、育成後のビジョンも明確に打ち出していることは高く評価できる。
育成計画では、日本を横断する形での外部視察研修と外部派遣講師による研修が、月1~3回、スーパーバイザーと同行するように計画されているが、活動現場でのスーパーバイザーからのOJTの時間を取ることも重要ではないかと思われる。詰め込み型ではない余裕を持った育成計画の再構築を期待し、障害者就労支援事業の中核的なスタッフが育つことを期待する。
テーマ 福島農業の復興に向けた6次化人材育成プログラム~コーディネート&財務マネジメント力の育成~(2)
団体名 一般社団法人ふくしまかーちゃんの力ネットワーク
代表者 代表理事 松野 光伸
助成額 370万円
選考理由 この団体は、福島県において、女性農業者の力を活用し、震災・原発事故からの農業復興を目指して2012年に設立された。
昨年度の助成では、県内の女性農業者のネットワーク構築という成果が上がっており、今回の継続助成では、今後の同団体の基盤となるネットワークをさらに拡充するとともに、事業展開のために対外アピール力の向上と団体の運営力の向上の一環として財務マネジメント力の向上を目指している。
福島県の農業は原発事故に起因する風評被害をまだ大きく被っており、引き続き困難な状況に直面している。この中で、女性農業者のネットワークによるイニシアティブは、大きな意義があるものと考える。また、対象スタッフも昨年度の活動を通じて、組織の中核スタッフとして成長しつつあることが認められる。
一方で、意欲的な活動であるために内容が総花的になる可能性が懸念される。人材に限りがある現状を踏まえ、中長期的に活動を続けるためにも、この点には留意を求めたい。