東日本大震災現地NPO応援基金(一般助成・第2期)第9回選考結果について

助成先一覧 | 選考総評 | 助成概要と選考理由
選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)

東日本大震災現地NPO応援基金(一般助成・第2期)の第9回選考を行い、下記の通り決定しました。

助成先一覧

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
9(継)-1 陸前高田で継続、発展した活動を展開する現地NPOを目指して
~事務局機能の強化および組織運営能力の向上による
 復興支援活動の効率化~
特定非営利活動法人パクト
岩手県
陸前高田市
180
9(継)-2 地域を支え、地域に支えられる持続型NPOとなるための
基盤強化作戦
~事務局強化とより多くの共感者、参画者を巻き込むための
 積極的な広報への取り組み~
特定非営利活動法人移動支援Rera
宮城県
石巻市
287
9(継)-3 地域内外からの信頼の向上と持続可能な組織を目指して
~公益法人の認定取得およびファンドレイジング強化~
一般社団法人みらいサポート石巻
宮城県
石巻市
234

助成件数:3件(継続3件) 助成総額:701万円(継続701万円)
*第9回助成は、第6回助成および第7回助成の助成対象団体を対象とした継続助成のみ実施し、
 2015年1月23日~1月30日までの応募について3月に選考し助成が決定したもの。
*助成期間は2015年4月1日から2016年3月31日までの1年間。
*パクト、移動支援Reraは第2期第7回助成の助成対象団体。みらいサポート石巻は第2期第5回
 助成、第7回助成の助成対象団体。


選考総評

「一人の思いをみんなの思いにするために-被災者に寄り添う現地NPOの組織基盤強化-」

選考委員長 島田 茂

【第9回助成の選考経過】

 東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]の第2期第9回助成(2015年4月~2016年3月迄の1年間以内を対象)は、東日本大震災から5年目を迎え、現地で活動する団体が被災者の生活再建や被災地域の復興を長期的に持続して支援できるように、団体の組織基盤強化を目的として、これまで助成させて頂いた団体への継続助成にしぼり、1件あたり300万円以内(助成総額は900万円)で募集を行った。1月30日に締め切り、助成2年目が5件、助成3年目が2件、計7件の団体の応募があった。
 応募団体の特徴として、今回は、震災以前から活動していた団体はなく、全ての団体が震災後1~2年で立ち上げた団体であった。その内2つの団体は震災後すぐに活動を始めた団体であり、4年間活動を続け実績を上げている。団体の支援対象に関しては、障がい者、子ども、女性、高齢者など災害弱者となった人々への支援対象を特定している団体が5団体、コミュニティ再生を目指し地域の復興を担う団体が2団体であった。また、福島県の被災者への支援活動に関しては、1団体のみであった。
 選考に関しては、事前に各選考委員が全ての申請書を読み書類審査を行い、3月9日に選考委員会を行った。継続助成となるため、応募件数は少なかったが、各選考委員は、これまで助成した完了報告書や中間報告書に目を通し、実施された組織基盤強化としての助成が計画通り遂行され、成果が見られるかどうか、今回の申請が組織基盤強化の計画内容となっているかなどを審査した。選考の結果は、助成2年目の2件が採択され、助成3年目の1件が保留となり、その後事務局による現地ヒアリングを実施した。
 事務局によるヒアリング報告を踏まえ、3月20日に選考委員長による決裁会合を行い、保留とした団体も助成に相応しい申請内容であるという結論に達し、助成対象3件、助成総額701万円を決定した。

【選考を振り返り】

 現地NPO応援基金[一般助成]は、第1期から通算すると10回に渡り助成したこととなる。第2期は、被災者の生活再建支援をする活動に対するプロジェクト助成ではなく、支援団体が地域に根ざし復興の担い手として持続的に活動できるように、団体そのものの組織基盤の強化を目的としている。
 大震災により、多くの心ある人々が被災にあった人々のために少しでも役に立ちたいと立ち上がった。また、自らも被災された人々が力を合わせてグループとなり、やがて組織として活動を継続し広げてきた。未曾有の大震災となり、多くの被災地が広域に壊滅的な被害を受けている今回の災害では、復興は数十年に渡ることが予想される。そのような中で、寄付や助成金、補助金等の資金を集めて被災地域の復興を効果的に行うには、被災者が自立的に生活再建できるように支えることが必要であるのと同様に、活動支援団体も一時的な活動ではなく地域に根ざした持続可能な、自立した組織である事が求められる。つまり、個人の思いや同好のグループとしての繋がりを超えて、組織としての公益性が求められる。
 今回の応募団体の活動報告や申請内容からは、以下のことが指摘された。

  1.成果は評価できるが、団体の支援の対象となる受益者が少なく、発展性に欠ける。
  2.ミッション・ビジョンが抽象的で分かりにくい。
  3.組織基盤強化の計画としての具体性が見えない。
  4.計画と実施内容が一致していない。
  5.代表個人の思いや都合に左右され、組織としての活動成果が見えない。

 このように厳しい指摘もあったが、今回助成の対象とならなかった団体も、課題はあってもそれぞれの団体が懸命に被災者の生活再建のために活動をしていることは、報告書や申請書から読み取ることができる。今後、助成金を得るためということではなく、より自立した組織を目指し、各団体が組織としてのあり方を点検して欲しい。当然、被災地域にあっての団体であり、他の団体同様、受益者負担での活動は、復興と同様に時間がかかり難しい。特に、福島県で活動している多くの団体は、復興の予想が立たず困難を抱えており、プロジェクト助成や自治体からの補助金等に頼らざるを得ない。そのため、組織としてのあり方(ミッション、ビジョン、経理、ガバナンス、コンプライアンスなど)が問われる。特に、代表個人の思いや意志だけに集中するのではなく、組織として責任を担う役員やスタッフが、ミッションを共有し、会議体で検討・協議し、意思を決定し、議事録をきちんと開示するガバナンスが大切である。今後、現地で活動するそれぞれの団体が、組織基盤強化により成長し、団体を個人化しない、組織としての息の長い被災者の生活再建のための支援活動を継続されることを期待する。

東日本大震災現地NPO応援基金(第2期第9回)選考委員

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助成概要と選考理由

【継続助成】

テーマ 陸前高田で継続、発展した活動を展開する現地NPOを目指して
~事務局機能の強化および組織運営能力の向上による復興支援
 活動の効率化~
団体名 特定非営利活動法人パクト
主な活動地域 岩手県陸前高田市
選考理由 パクトは、人々の力を集結させることで復興の一助となることを目指し、震災後、陸前高田市で設立され、これまで同市において、①ボランティアの受入・派遣、②子ども支援、③宿泊所運営の3事業を実施してきた。今後の活動ビジョンでは、団体の持つ強みである人と人との強いつながりを生かして、陸前高田を訪れる人を増やし、復興とまちづくりを進めていくことで、地域の活性化を目指している。
第7回助成からの継続助成となり、助成1年目は「組織業務改善計画」、「ファンドレイジング計画」、「広報戦略」を策定した。また事務局長を新たに採用するとともに、組織再編を行い、組織基盤強化の取り組みを進める体制を整えてきた。助成2年目は、1年目で策定した計画・戦略に基づいて、資金調達や広報の取り組みを軌道に乗せ、安定財源の確保を図るとともに、組織運営に関わる諸規定の整備やスタッフ研修を通じた人材育成を行う。
震災後、現地で誕生したNPOとして着実に組織基盤を強化し、陸前高田市を代表する団体に成長することを期待して助成を決定した。
テーマ 地域を支え、地域に支えられる持続型NPOとなるための
基盤強化作戦
~事務局強化とより多くの共感者、参画者を巻き込むための
 積極的な広報への取り組み~
団体名 特定非営利活動法人移動支援Rera
主な活動地域 宮城県石巻地域(石巻市、女川町、東松島市)
選考理由 移動支援Reraは、宮城県石巻地域を拠点に、震災直後から移動困難な被災住民のための送迎支援活動等を行ってきた団体である。助成1年目は、福祉車両運転者講習会を通じて、地域による互助送迎の基盤づくりやスタッフの技術力向上等に取り組み、自治体や関連団体との関係づくりも着実に進めてきた。
福祉有償運送の制度改正で、本団体が福祉有償運送事業を行い、利用者が増加する可能性が出てきた一方で、事務局運営に課題を抱え、スタッフ間の業務の偏りや組織内での意識共有など、組織運営に関する課題の解決が急務となっている。助成2年目は、福祉有償運送事業の実施団体となるため、スタッフの技術向上や専門的知識の向上に取り組むと共に、外部アドバイザーを入れて、組織の運営改善を図る。
2015年に認定NPO法人の取得を見込み、安定的な寄付金を確保することが計画されているが、認定取得に甘んずることなく、より多くの共感者、参画者を巻き込みながら、移動困難者の外出利便性を高めるため「地域の送迎力」を上げる取り組みも期待して助成を決定した。
テーマ 地域内外からの信頼の向上と持続可能な組織を目指して
~公益法人の認定取得およびファンドレイジング強化~
団体名 一般社団法人みらいサポート石巻
主な活動地域 宮城県石巻市
選考理由 みらいサポート石巻は、石巻の復興を進めるために、地元で活動するNPOや自治組織等と連携し、多様な団体との連絡調整と情報共有を通じ、地域の課題解決に取り組む中間支援機能を持った組織として震災後に誕生した。
助成2年目は、地域連携・防災事業と地域づくり事業をより多くの人に支えられる仕組みとするために、一般社団法人から公益社団法人に移行することを目的に組織基盤強化に取り組み、目標達成の目前まで辿り着いた。助成3年目では、公益法人への移行後のさらなる組織基盤の強化により、持続可能な組織として地域の復興に寄与する活動が継続されることを期待して助成を決定した。