東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2019」 選考結果について

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選考結果冊子2019(PDF版)

東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2019-被災地の生活再建に取り組むNPOの人材育成-」の新規助成ならびに継続助成の選考を行い、下記の通り決定いたしました(助成期間 2019年10月~2020年9月)。

大和証券フェニックスジャパンプログラムこのプログラムは、大和証券株式会社による「ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.3 ―フェニックスジャパン―」の信託報酬の一部をご寄附いただき、日本NPOセンターが現地NPO応援基金の特定助成として市民社会創造ファンドと協力して実施するものです。2012年より開始し、年1回の公募により実施しています。
プログラム概要と過去助成実績

助成先一覧

【新規助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
19
1-1
子ども・若者支援事業マネージャー養成プロジェクト
特定非営利活動法人TEDIC

宮城県
石巻市
477
19
1-2
みんなのひろば事務局整備プロジェクト2019
特定非営利活動法人みんなのひろば

福島県
伊達市
336
19
1-3
復興連携の核となるスタッフの育成計画
特定非営利活動法人
ふくしまNPOネットワークセンター
福島県
福島市
400
19
1-4
福祉雇用、防災教育、観光促進支援事業継続のための人材育成
特定非営利活動法人チームふくしま

福島県
福島市
401
19
1-5
プログラム強化と総合マネジメントを担える人材育成計画
特定非営利活動法人いいざかサポーターズクラブ

福島県
福島市
216

【継続助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
19
2-1
にじいろクレヨン事務局体制強化計画(2)
特定非営利活動法人にじいろクレヨン

宮城県
石巻市
398
19
2-2
人と自然のつながりを再構築し、地域に芽生えた思いを体現・事業化できる組織づくりのための経営人材の育成(2)
認定特定非営特定非営利活動法人ホールアース研究所(ホールアース自然学校 福島校)
福島県
郡山市
334

※助成対象件数  7件(新規助成5件、継続助成2件)
※助成総額  2,562万円

選後総評

選考委員長 須田 木綿子

 2011年に起こった東日本大震災の体験は痛ましく、被災地は様々な未解決の課題を残して今日に至っている。しかしそのような中でも、復興の過程に希望や夢をあえて見出し、尽力されている方々がおられる。このプログラムは、そういった方々の応援を目的に2012年から始まり、このたび、新規助成を募集する最終年を迎えた。関係者一同、特別の感慨をもって今回の選考を行った。

[今年の応募案件の特徴]
 災害復興から平時への移行が、いっそう加速されたようである。活動団体には、これまでに経験した課題を整理し、この間に培ってきた自分たちの強味や個性を正当に認識したうえで、これから先の5~10年を見据えてどこに向かうのか、いわば「腹を括って」自分たちの役割を絞り込むことが求められている。これは、容易なチャレンジではない。それぞれの団体の迷いと試行錯誤が応募内容にも反映され、選考委員相互の評価割れにつながった。「つかみにくい・・・」選考委員が共通して口にした感想である。
 復興から平時への移行には、濃淡もあった。福島からの応募は、他県に比べると立ち上がりが遅く、この数年でようやくストーリーが見えてきた。そうして今年度は、福島の団体の採択が他県に比して多くなった。福島の課題は複雑であり、それゆえに、福島が他県とは異なる軌道を描いて平時への移行を模索している様子がうかがわれた。
 人がいない、という難題も実感された。このプログラムはスタッフの育成に助成をするので、それが一層目立ったのかもしれない。若年労働者の育成と定着は、日本のどの地域、どの業種においても課題ではあるのだが、働き方が変わったというだけではすまされない切迫感が、応募内容からにじみ出ているように思われた。残念ながら、この課題を一気に解決できるような「魔法の弾丸」は無い。耐える中に、早く転機が訪れますようにと、祈っている。

[選考過程と結果]
 今年の助成対象は、助成件数7件、助成総額2,562万円になった。このうち新規助成では26件の応募に対して5件、1,830万円を採択した。
これまで同様、寄せられた応募書類は事務局にて集約し、要件を満たしているか等の形式的なチェックを行った。そうして、各選考委員がすべての応募内容に目を通し、選考委員会に臨んだ。この段階では、多めに候補を選び、事務局がこれら候補団体を訪問し、選考過程であげられた疑問についての追加情報を収集したのちに、第二段階の選考委員会をもった。
 先に記したように、今年度は選考委員の間での評価がまとまらず、第二段階の選考委員会の重要性が増した。応募内容では十分に表現されていなかった団体の特性や志向性が事務局の訪問によって把握され、それらを判断材料に加えて最終的な決定を行った。結果として、教科書的な大きな目標を掲げる団体よりも、少々「とがった」ところがあったり、他には見られない面白さが感じられる団体の人材育成プランが採択に至った。また、中間支援機能を持つ団体の応募も採択された。平時への移行期ゆえに、団体の独自性や市民性が、これまで以上に問われることになったためと思われる。
 同時に、平時への移行期であるからこそ、選考委員会では災害体験の深まりも重視された。災害との関りが団体のDNAとして刻印され、年月を重ねても風化することのないスピリットとなって様々に表現され、地域にも共有されることを期待している。
 継続助成の選考も、例年通りに進めた。応募団体に選考委員会の場にお越しいただき、1年目の新規助成による活動状況と、継続助成の計画に関するプレゼンテーションを行っていただき、選考委員との質疑応答を行った。こうして2件が採択され、助成総額は732万円であった。ほぼ1年の育成期間をふまえ、さらなる成長を求めて継続助成に応募されたケースもあれば、研修を通じて視野が広がるとともに迷いも増し、それを乗り越えるために継続助成を求めておられるケースもあった。それぞれの道筋ではあるが、取り組み姿勢の真摯さにおいては等しく、東北の底力を感じさせていただいた。

【選考委員】
委員長  須田 木綿子(東洋大学 社会学部 社会福祉学科 教授)
委員   鹿住 貴之(認定特定非営利活動法人 JUON NETWORK 事務局長)
委員   佐久間 裕章(特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 代表理事)
委員   手塚 明美(特定非営利活動法人 藤沢市市民活動推進連絡会 理事・事務局長)
委員   川那部 留理子(株式会社大和証券グループ本社 経営企画部SDGs推進室 SDGs推進室長)
委員   吉田 建治(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 事務局長)

助成概要と選考理由

【新規助成】

テーマ 子ども・若者支援事業マネージャー養成プロジェクト
団体名 特定非営利活動法人 TEDIC
代表者 代表理事 門馬 優
助成額 477万円
選考理由  この団体は、宮城県石巻圏域において、東日本大震災により被災した子どもへの学習機会の保障、安心して過ごすことができる居場所の提供を目的に2011年に設立された。
現在は、「どんな境遇におかれても、すべての子ども・若者が自分の人生を、自分で生きることができる社会を創る」というミッションの下、石巻市の「学習・生活支援事業」、宮城県の「子ども若者総合相談センター」、フリースクール等の運営を行っている。
 今回の助成では、事業規模が大きくなり、スタッフも倍増したことを受け、支援の現場、経営の両面において、団体代表に依存している現状から、スタッフ一人ひとりが責任ある役割を担い、チームとして事業を行う組織に転換することを目指す。
 具体的には、最古参のスタッフを支援事業のマネージャーとして育成し、代表や理事がアドボカシーや資金調達を担う体制にしたいと考えている。復興財源の縮小や震災後8年という時期を捉え、組織のあり方を見直そうとしており、また、地域における自団体の役割も自覚し、ニーズに対応できる力を高めようとしている。これまでの成果を更に強めていくためにも、より幅広いネットワークづくりや市民の参加を得ながら、NPOとして成長することを期待したい。

 

テーマ みんなのひろば事務局整備プロジェクト2019
団体名 特定非営利活動法人 みんなのひろば
代表者 理事長 齋藤 大介
助成額 336万円
選考理由  この団体は、福島県伊達市において「不登校でも、障がいがあっても、どんな子どもでも夢を持って安心して暮らすことのできる地域づくりに寄与すること」をミッションとして2004年に設立された。東日本大震災以降、当該地域では発達障害のある子どもたちの不登校が増え、同団体が運営するフリースクールでも、在籍児童の約7割が発達障がいと診断された子どもたちとのことである。2015・2016年度と2年度にわたる当助成事業を活用し、人材育成を行いながら2017年6月には放課後等デイサービス「ほーかごひろば」を開設した。その他、地域で必要とされる事業を立ち上げ、着実に組織基盤強化を進めてきたことを評価した。
 現在、当法人には主に5つの事業があり、働く人数も増え、事業も拡大し、様々な面において法人事務局がしっかりとした形で存在する必要性を感じている。今回の助成では、育成対象者を一人前の事務局員として、法人の経営や今後について一緒に考えていける存在へと育成し、それに合わせ、各事業においてリーダーとなれる人材の育成を行う。
 本助成により法人のマネジメントを強化し、今ある事業を維持・拡充するだけではなく、常に地域で必要とされる資源やサービスを果敢に創造するNPOへと発展することを期待する。

 

テーマ 復興連携の核となるスタッフの育成計画
団体名 特定非営利活動法人 ふくしまNPOネットワークセンター
代表者 理事長 牧田 実
助成額 400万円
選考理由  この団体は福島県内のNPO支援活動のネットワーク拠点として2000年8月に設立し、市民社会の発展に寄与してきた。2011年の震災により、福島県では他県の被災地とは異なる対応が必要となったことから、県内の震災復興支援組織によって形成されたネットワーク「ふくしまNPO・市民活動団体連携復興プロジェクト」の事務局として積極的に後方支援事業を実施してきた。その後、復興を支える多くの市民活動団体の人材の育成など、継続的な運営のための支援事業を実施し、着実に成果を上げてきた。
 しかしながら、市民社会の課題は多様化し、内部の専門人材の育成が必要な段階となり、本助成への応募となった。NPO支援活動は、市民には見えにくい活動ではあるが、市民社会の発展には欠かすことのできない活動と捉え、それを長期化する復興活動の支援に応用する考えに共感を覚えた。また、設立以来、NPOや市民活動団体の各種インフラ整備を実施してきたことも評価する。
 本助成により、内部人材の育成を達成し、長期にわたるであろう復興活動への大きな支えとなり続け、福島県における新しい市民社会の発展に寄与することを期待する。

 

テーマ 福祉雇用、防災教育、観光促進支援事業継続のための人材育成
団体名 特定非営利活動法人 チームふくしま
代表者 代表理事 半田 真仁
助成額 401万円
選考理由  この団体は、東日本大震災をきっかけに仕事が激減した福島県二本松市の福祉作業所「NPO法人和」にひまわりの種の袋詰めなどを依頼し、その種を育てることで採れた種を再度福島に送る『里親』を募集し、継続的に種を販売することで、雇用支援に繋げている。この取組みは「福島ひまわり里親プロジェクト」として、2011年から全国累計(福島除く)50万人が参加する大規模なムーブメントとなっている。全国から届いた種は福祉作業所の選別を経て、福島の観光地や仮設住宅、学校等へ無償配布され、地域の絆づくりに重要な役割を担っている。
 震災後の地域課題に対して、日本全国を巻き込んだダイナミックなアプローチで課題解決に取り組んでおり、非常にユニークなモデルの構築が進んでいる。上記作業所では、プロジェクト参画を契機に、震災後の受注ゼロの状況から障がい者工賃県内7位(平成27年度実績)に回復するなど、具体的な成果がしっかり見られている。
 ぜひこのモデルをより持続可能なものとするため、必要な人的資源の育成が、より強固な組織の基盤づくりに繋がることを期待している。

 

テーマ プログラム強化と総合マネジメントを担える人材育成計画
団体名 特定非営利活動法人 いいざかサポーターズクラブ
代表者 理事長 佐藤 耕平
助成額 216万円
選考理由  福島県飯坂温泉は、福島市中心部から近く、1970年前後には150万人を超える観光客を受け入れていた。バブル崩壊と共に衰退傾向が続き、東日本大震災を契機にその傾向がさらに加速。震災後には、復興従事者の需要が増えたこともあり、観光客の減少と廃業の増加にあえいでいる。
 同団体は、2009年に地元商店街の店主や住民により設立された。飯坂温泉を盛り立てようと、周辺の自然環境を活かしたカヤックなどのアクティビティや、空き家対策のリノベーションスクールなどを開催しているほか、復興公営住宅でのサロンや子ども向けの冒険あそび場を開催してきた。
 今回の助成では、こうしたプログラムの強化とともに、新規事業を展開し事業収益の拡大を目指すものである。具体的には、スタッフのアクティビティに関する運営力と、組織内のコミュニケーション向上を意識したマネジメント力の強化を図る。
 直接被災をしていないものの、震災によって大きな影響を受けた地域であり、類似の問題は他地域でも聞かれる。そうした地域において、同団体はいま、震災を契機に始めた活動と、従来の活動が合流しつつあり、組織の形も変化の時期にある。今回の新たなステップへの取り組みが、他の地域においてもモデルとなることを期待したい。

 

【継続助成】

テーマ にじいろクレヨン事務局体制強化計画(2)
団体名 特定非営利活動法人 にじいろクレヨン
代表者 理事長 柴田 滋紀
助成額 398万円
選考理由  この団体は、東日本大震災の発災直後から、宮城県内各地の避難所で大人以上にストレスを抱える子どもたちと過ごしてきた。子どもの居場所づくりや子どもを見守るコミュニティづくり、子どもの健全育成に効果の高いと考えられる講座や研修を展開し、地域住民とともにコミュニティ形成に継続的に関わりを持っている。
 新規助成では、代表理事に集中している組織運営を分散すべく、育成スタッフが事務局長、事務局次長となることを想定して、育成計画を進めてきた。その結果、代表理事と他のスタッフとのコミュニケーションを円滑化させる役割を担うなど、組織に変化をもたらしているという。
 継続助成では、この流れをさらに進めるべく、団体内外での研修を実施する。また、事業の関係者とともにビジョンの再構築にも取り組む。
 復興が進むとともに役割も変化していることを認識し、それとともに組織のあり方も変化を求めている。組織を背負う人材が育つことはもとより、他にはない「にじいろクレヨンだからこそできる活動」が構築されることを期待したい。

 

テーマ 人と自然のつながりを再構築し、地域に芽生えた思いを体現・事業化できる組織づくりのための経営人材の育成(2)
団体名 特定非営利活動法人 ホールアース研究所(ホールアース自然学校 福島校)
代表者 代表理事 山崎 宏
助成額 334万円
選考理由  この団体は、環境教育、野外教育の普及啓発などに関わる事業を行い、持続可能な社会づくりに寄与することを目指し1982年に静岡県で設立された。
東日本大震災以降、団体の理念とそれまで培ってきた経験をもとに、震災によって明らかになった福島の課題や問題を解決するため、2013年に福島事務所(福島校)を設立した。
 新規助成では、「地域課題解決のための事業化スキル強化」「組織内マネジメントの強化」「中核スタッフ育成の研修強化」を計画し進めてきた。福島事務所の責任者として研修内容をしっかり受け止め、メンバーや事業に取り組む姿勢に、大きな変化をもたらしたことは大いに評価できる。更に、新たな課題や継続的に解決すべき事案があることも発見できている。
 継続助成では、持続可能な地域社会の構築にむけて、地域内外との協働を柱に「教育的側面の強い事業」と「ビジネス側面の強い事業」の構築に向けた研修を実施する。地域コーディネートの核として、本助成による育成者が、福島の地で同団体グループの持つ専門性を大いに発揮することを期待する。