東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2020」 選考結果について

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選考結果冊子2020(PDF版)

東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム2020-被災地の生活再建に取り組むNPOの人材育成-」の新規助成ならびに継続助成の選考を行い、下記の通り決定いたしました(助成期間 2020年10月~2021年9月)。

大和証券フェニックスジャパンプログラムこのプログラムは、大和証券株式会社による「ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.3 ―フェニックスジャパン―」の信託報酬の一部をご寄附いただき、日本NPOセンターが現地NPO応援基金の特定助成として市民社会創造ファンドと協力して実施するものです。2012年より開始し、年1回の公募により実施しています。
プログラム概要と過去助成実績

助成先一覧

【継続助成】

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
20
2-1
子ども・若者支援事業マネージャー養成プロジェクト Vol.2
特定非営利活動法人TEDIC

宮城県
石巻市
337
20
2-2
みんなのひろば事務局整備プロジェクト2020
特定非営利活動法人みんなのひろば

福島県
伊達市
310
20
2-3
復興連携の核となるスタッフの育成計画
認定特定非営利活動法人
ふくしまNPOネットワークセンター
福島県
福島市
375
20
2-4
震災から生まれた物語の伝承・伝達するためのための人材育成事業
特定非営利活動法人チームふくしま

福島県
福島市
378

※助成対象件数  4件(継続助成4件)
※助成総額  1,400万円

選後総評

選考委員長 須田 木綿子

このプログラムは、2011年に起こった東日本大震災の被災地で市民活動に従事する人材の育成を目的に2012年に設立された。そして10年目の2021年を助成終了とし、2019年度に新規助成申請の最終年を迎え、今年度は継続助成申請も最終年となった。
大和証券を通じてこのプログラムに寄付をくださった方々をはじめ、様々なお立場からの多くのご支援をいただいた。深く謝意を表する次第である。

【今年の応募案件の特徴】
プログラム設立当初は震災後の混乱が続いており、現地の団体は、生きるための仕事づくりや仮設住宅居住者の支援など、目の前の課題に取り組むことをもって全てとし、その活動に参加する人材を切迫して求めていた。それが次第に落ち着き、復興から平時への移行が始まると、社会的に弱い立場にあるとされる身体・知的障害児者や児童、高齢者等の支援など、被災地以外でも存在する課題に取り組む団体からの応募が増えた。しかし、被災地であるがゆえにそれらの課題は一層深刻であったり、他の地域とは異なる表れ方をしたりしているため、被災地の特性に精通する現地のスタッフが、一般に共有されている専門的知識や課題対応のノウハウを学ぶことをもって人材の育成とするような申請が多かった。そしてこの数年ほどの間に、ようやく、中・長期的な展望に基づく被災地独自の取り組みが見られるようになった。
震災から立ちあがってきた地域とその住民の強さや魅力を確認し、被災地以外の人々にもそれを伝えようとする団体や、既存の社会的課題に対しても新しい発想からのアプローチを試みる団体からの応募が増えた。そしてそれらの活動をさらに推進するための構想力と発信力を備えた人材の育成が、団体の側からの内発的なニーズとして応募用紙に示されるようになった。ここに、この助成プログラムの趣旨が全うされたように思った。

【選考過程と結果】
今年は継続助成のみを実施した。これまで同様、寄せられた応募書類は事務局にて集約し、形式的なチェックを行ったのち、各選考委員が全ての応募書類に目を通したうえで選考委員会を開催した。応募団体にはリモートで選考委員会の場に参加していただき、応募内容に関するプレゼンテーションと選考委員との質疑を行った。さらに最終的な審議を行い、4件、1,400万円を採択した。
新型コロナウイルスの感染拡大にともなう会合や移動の制限が始まり、育成計画にも再調整が求められる中で、応募団体はいろいろな工夫を重ね、人材育成に引き続き取り組んでいた。育成スタッフ自らが2年目以降の研修計画を自ら策定したり、あるいはス―パーバイザーの構想した研修内容に育成スタッフが修正を求めたといったエピソードもうかがった。育成スタッフの成長は、最終年度にふさわしい、力強いものであった。

【選考委員】
委員長  須田 木綿子(東洋大学 社会学部 社会福祉学科 教授)
委員   鹿住 貴之(認定特定非営利活動法人 JUON NETWORK 事務局長)
委員   佐久間 裕章(特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 代表理事)
委員   手塚 明美(認定特定非営利活動法人藤沢市民活動推進機構 副理事長/事務局長)
委員   川那部 留理子(株式会社大和証券グループ本社 経営企画部SDGs推進室 SDGs推進室長)
委員   吉田 建治(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 事務局長)

助成概要と選考理由

【継続助成】

テーマ 子ども・若者支援事業マネージャー養成プロジェクト Vol.2
団体名 特定非営利活動法人 TEDIC
代表者 代表理事 門馬 優
助成額 337万円
選考理由 この団体は、宮城県石巻圏域において、東日本大震災により被災した子どもへの学習機会の保障、安心して過ごすことができる居場所の提供を目的に2011年に設立された。現在は、「どんな境遇におかれても、すべての子ども・若者が自分の人生を、自分で生きることができる社会を創る」というミッションの下、石巻市の「学習・生活支援事業」、宮城県の「子ども若者総合相談センター」、フリースクール等の運営を行っている。
今回の取り組みでは、最古参のスタッフを支援事業のマネージャーとして育成する前年度事業の成果を受け、育成対象者が中心となり「法人の目的の再定義」「支援業務の可視化」「人が育つ環境の整備」という3つの組織基盤強化を進める。
震災や組織設立から10年を迎えるにあたり、これまでの中心メンバーからの世代交代が急務となっている状況で、組織のあり方も見直す時期となっている。
育成対象スタッフが、この見直しを中心的に担うことで自身の成長につながるよう願う。なお、再定義した目的を掲載する冊子の作成にあたっては、内部や外部向けのコミュニケーションツールとして活用できるものになるとともに、制作の過程が人材育成にもなることを期待したい。

 

テーマ みんなのひろば事務局整備プロジェクト2020
団体名 特定非営利活動法人 みんなのひろば
代表者 理事長 齋藤 大介
助成額 310万円
選考理由 この団体は「不登校でも、障がいがあっても、どんな子どもでも夢を持って安心して暮らすことのできる地域づくりに寄与すること」をビジョンとして、フリースクールみんなのひろば、みんなのひろば高等部、放課後等デイサービス、相談室等の事業を行っている。
これまでにも2015・2016年度に助成を行い、人材育成・基盤強化を図ってきた。それにより、2つの拠点で事業も拡大し、職員数も増え、今後も更なる拡大を目指して努力を続けているところである。
今回の取り組みでは、育成対象スタッフが将来、団体の事務局長として活躍できるよう、簿記の資格取得や各種研修に参加する。研修においては、自ら研修計画を策定するなど自主的な学びにつながる体制を整える。あわせて事務局業務のマニュアル化など団体の組織再編に向けた整備を進める。
本プログラムによる助成は今回が最後となるが、事務局体制を整備し、持続可能な事業体として益々の発展を期待する。

 

テーマ 復興連携の核となるスタッフの育成計画
団体名 認定特定非営利活動法人 ふくしまNPOネットワークセンター
代表者 理事長 牧田 実
助成額 375万円
選考理由 この団体は、NPO法制定直後の2000年に、福島県内の民間非営利活動団体及び市民団体の支援と地域や分野を越えたネットワークの拠点となるべく活動を開始した。
2011年の東日本大震災発災直後から、復興に向け積極的に活動を展開し、他の被災地域とは異なる課題を持つ福島県内において、市民活動支援の中心的な役割を担い、着実に成果を上げ組織としての信頼感を培ってきた。しかしながら、長期化する復興支援への活力維持のためには、組織の基盤を支える必要があり、それには団体の活動や規模に見合う人材の育成が大変重要だと考えたことから本助成プログラムへの応募につながった。
市民活動を支援する取り組みは、課題解決に直結した現場の活動に比べ、直接的な成果に結びつきにくいこともあり、内部人材の育成は難しいといわれているが、組織にとっては欠くことはできない。
本助成を通じて育成対象スタッフそれぞれの個性や特徴を活かしながら時間をかけて成長を促すことにより、長期化する復興支援の核となる人材の育成を達成されたい。それにより市民活動団体への支援を続け、福島県の新たな市民社会を創る支えとなることを願う。

 

テーマ 震災から生まれた物語の伝承・伝達するためのための人材育成事業
団体名 特定非営利活動法人 チームふくしま
代表者 代表理事 半田 真仁
助成額 378万円
選考理由 この団体は、東日本大震災をきっかけに仕事が激減した作業所利用者の工賃向上等を目的として、県内5か所の作業所にひまわりの種の袋詰めなどを依頼し、その種を育てることで採れた種を再度福島に送る『里親』を募集し、継続的に種を販売する「福島ひまわり里親プロジェクト」を通して雇用支援を行っている。
同団体は今後の団体の体制を見据えて、将来的に事務局長を担える「理念と経営を意識する人材」の育成をめざして、新規助成の育成計画に取り組んだ。育成対象スタッフからは「何のために団体が存在するのか」という根幹的な部分を説明する、自らの言葉を獲得しようとしている様子がうかがえ、経営にもっと主体的に参加していきたいという意欲が育まれた。
継続助成では、より実践的な実務研修を受けるとともに、東日本大震災の復興に取り組む他の団体との複数回の意見交換の機会を持つ。団体内外の関係者とのつながりをもとに、東日本大震災から10年以降の復興支援を担える基盤が構築されることを期待する。