東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム フォローアップ事業」 選考結果について

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選考結果冊子フォローアップ事業(PDF版)

東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「大和証券フェニックスジャパン・プログラム フォローアップ事業」の助成選考を行い、下記の通り決定いたしました(助成期間 2022年4月~2023年3月)。

大和証券フェニックスジャパンプログラムこのプログラムは、大和証券株式会社による「ダイワ・ニッポン応援ファンドVol.3 ―フェニックスジャパン―」の信託報酬の一部をご寄附いただき、日本NPOセンターが現地NPO応援基金の特定助成として市民社会創造ファンドと協力して実施するものです。2012年より開始し、年1回実施しています。
プログラム概要と過去助成実績

選後総評

選考委員長 須田 木綿子

東日本大震災現地NPO応援基金〔特定助成〕大和証券フェニックスジャパン・プログラムは、2011年に起こった東日本大震災の被災地で市民活動に従事する人材の育成を目的に、2012年に開始された。そうして新規助成は2019年に、継続助成も2020年に最終年度を迎えた。今回の助成では、この間に育成対象となったスタッフのフォローアップ事業の募集を行った。

助成を受けた当時の育成対象職員が組織の課題解決に向けて、企画立案から実行までを自身で遂行する活動を支援し、スタッフとしてのさらなる成長に資することが目的である。

【今年の応募案件の特徴】

5件からの応募があった。この数字の意味するところを考えるにあたり、今までの来し方をふりかえる。

震災直後の混乱がおさまると、仮設住宅居住者の支援や仕事づくりなどの課題に取り組む団体が目立った。しかしこの時期の団体は、復興から平時への移行が進むにともなってミッションを完了し、解散したケースが少なくない。そしてその後は、社会的に弱い立場にあるとされる身体・知的障害児者や児童、高齢者等の支援など、被災地以外の課題にも通じるような活動を行う団体が増えた。こうして、震災後の時間の経過とともに、団体も、それに関わるスタッフも、入れ替わった。現地では未だに、震災に由来する事情も多くあると推察するが、仮に現在を平時としてふりかえるなら、きわめて雑駁ながら、2016年あたりが、一応の平時に向けての転換期であったように感じている。そうして資料を見直すと、奇しくも、今回応募のあった5件はいずれも、新規助成年度が2016年以降である。さらに、2016年以降に助成を受けたスタッフは30人であったが、異動などもあり、2019年段階で活動を継続していたのは21人という数値が手元にある。今回応募があった「5件」は、この21人の4分の1にあたる。

このようななかで、助成対象団体が継続している場合には、そこから異動をした元・育成対象職員の追跡が可能なので、別途情報を収集している。その結果、元・育成対象職員はいずれも、所属する団体や場所は異なっても、NPO活動に引き続き従事していた。そして、このプログラムの助成期間中に研修等を含めて学んだ経験が現在につながっているという感想を、異口同音に報告している。今回のフォローアップ事業も、そのような、かつての育成対象職員の更なる飛躍の一助となるべく企画された。今回の取り組みが、さらに豊かな実りをもたらすであろうことを確信している。

今回の応募では、育成対象職員が企画をたてて書類をまとめることを要件としたのだが、そのプロセスが既に、新しいチャレンジとなった様子が如実にうかがわれた。企画内容を充実したものとするためには、団体の中・長期のビジョンを持つことが不可欠であり、このような応募業務をこなすことができれば、育成対象職員という立場を卒業し、団体のかじ取り役も担えるようになるだろう。

【選考過程と結果】

今年のフォローアップ事業に対する応募は5件であり、総額923万円の助成がなされた。

これまで同様、寄せられた応募書類は事務局にて集約し、形式的なチェックを行ったのち、各選考委員がすべての応募内容に目を通したうえで、オンラインにて選考委員会を行った。応募団体にも、リモートで応募内容に関するプレゼンテーションを行っていただき、さらに選考委員との質疑応答を行った。その後、選考委員会でのコメントをふまえてさらに内容を整えていただき、助成を決定した。これまでもそうであったように、助成期間終了まで助成事務局は引き続きの助言や必要な支援を提供する。

 

【選考委員】
委員長  須田 木綿子(東洋大学 社会学部 社会福祉学科 教授)
委員   鹿住 貴之(認定特定非営利活動法人 JUON NETWORK 事務局長)
委員   佐久間 裕章(特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 理事)
委員   手塚 明美(認定特定非営利活動法人藤沢市民活動推進機構 理事長)
委員   村瀬 理紗(株式会社大和証券グループ本社 経営企画部SDGs推進室 副部長)
委員   吉田 建治(認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 事務局長)

助成概要と選考理由

【フォローアップ事業助成】

テーマ 近隣地域ボランティア獲得を目的としたプログラム作成と組織形成
団体名 認定特定非営利活動法人 桜ライン311
代表者 代表理事 岡本翔馬
助成額 193万円
選考理由

この団体は、岩手県陸前高田市において、東日本大震災の教訓を後世に伝えることを目的に、津波到達点に桜を植樹する活動を行うため、2011年秋に設立された。現在、植樹した距離の総延長は170㎞となり、最終的には17,000本を目標に、毎年2〜3月、11〜12月に植樹会を開催している。

今回のフォローアップ助成では、年1〜2回参加するボランティアが300〜400名存在するものの、日常的に関わるボランティアが少ないという課題意識のもと、ボランティアが継続的に関わりたくなる組織を目指すとともに、年5回以上活動に関わるボランティアを増やすことを目指す。これにより、植樹した桜のメンテナンスを持続的に行えることを見込んでいる。

一般的に、植樹という象徴的な活動には多くの人は集まるが、日常的な手入れの活動にはなかなか人が集まらないということは、少なくない。今回、日常的な整備作業ができるよう、近隣地域居住者、特にシニア層の協力を得ようという視点はとても重要である。地域には、このような活動が得意だったり、好きだったりする方が必ずいるであろう。会員制度などの組織体系の見直しも有効に活かしながら、着実に活動が実施されボランティアが活躍する組織づくりを期待したい。

テーマ ワークフローシステム構築とインターネット広報プロジェクト
団体名 特定非営利活動法人 みんなのひろば
代表者 理事長 齋藤 大介
助成額 147万円
選考理由

 この団体は「不登校でも、障がいがあっても、どんな子どもでも夢を持って安心して暮らすことのできる地域づくりに寄与すること」をビジョンとして、フリースクールみんなのひろば、みんなのひろば高等部、放課後等デイサービス、相談室等の事業を行っている。

これまでにも2015・2016年度に本助成を受けて、人材育成・基盤強化を図り、2つの拠点で事業が拡大した。その後11名のスタッフを雇用する法人となり、2019年・2020年の本助成を活用し、法人事務局の整備に取り組んだ。2021年6月からは、障がい者を対象としたグループホーム事業も開所することが出来、この間の助成の成果が法人運営に寄与していることが認められる。

地域ニーズや収入の面からも、5年後には、もう一つのグループホーム、更には放課後デイサービス事業所もしくは就労支援B型事業所を新たに開設し、事業の拡大と拠点及び職員の増加を予想している。今回のフォローアップ助成を活用し、複数の拠点を持ちながらも法人としての一体性を保ち、事業規模に合わせた効率的な拠点マネジメントシステムを構築してほしい。地域ニーズに即した事業を果敢に立ち上げてゆく事業体への更なる発展を期待する。

テーマ 未来をもっと明るい方につなげたい!応援の輪展開事業
団体名

特定非営利活動法人 未来図書館

代表者 理事長 古澤 眞作
助成額 200万円
選考理由

この団体は、子どもと社会が繋がることで、一人ひとりが自立して幸せに生きていく社会を目指し、岩手県盛岡市において2004年に設立された。東日本大震災の発災直後も、津波の被害が大きかった沿岸地域で、積極的に子どもと社会をつなぎ、独自の開発プログラムによって多くの中高生とともに歩みを止めずに活動してきた。

2017年度 に本助成を受け、育成対象職員がその活動の価値について説得性をもって発信する力をつけることにチャレンジし、団体を応援する企業が増えるなど大きな成果を上げた。

教育機関へのプログラム提供にはスタッフの専門性に加え、活動資源が必要となる。今回のフォローアップ助成では、これまでに培った発信力を応援企業の倍増と応援企業同士のつながりに向けブラッシュアップし、安定した組織運営を目指す。更に、キャリア教育が街の文化の一つとなるようイベント開催などを通じた市民への普及啓発へも視野を広げている。

震災から10年余りが過ぎ、落ち着きを取り戻した感が漂う今だからこそ、ますます需要が高まるであろう、小中高生と社会をつなぐキャリア教育支援の実践NPO団体として、本来の目的である幸せに生きていく社会の構築に向け活躍することを期待する。

テーマ 和ぐるみプロジェクトの新展開を担うための実践スキルの獲得
団体名 一般社団法人 SAVE IWATE
代表者 理事長 寺井 良夫
助成額 199万円
選考理由

この団体は、東日本大震災からの復興支援を目的に設立された。現在では、盛岡を拠点に、被災者の方々の心のケアや生活再建のサポート、就労支援や手仕事の場の提供のほか、被災地の産業振興にも取り組んでおり、地域資源である和ぐるみを活用とした事業によりビジネス創出に注力している。

2016・2017年度の助成事業により実務担当者は、和ぐるみプロジェクトのチームリーダーとして組織をまとめる役割を担うようになったと報告された。今回のフォローアップ助成では、SNSを活用したPR活動や専門家によるマーケティング指導等を通じて、和ぐるみの認知度・自団体の知名度を高め、当該プロジェクトを持続的に成長する事業として確立させるためのスキルアップに取り組む。

和ぐるみに対する熱い想いと、地域の方々の手作業で制作される商品の素晴らしさを、如何に多くの消費者に伝えられるという発信力がポイントとなる。地域経済活性化の一翼を担う人材として、さらに飛躍されることを期待する。

テーマ 働き方・業務改善及びSDGs理解強化事業
団体名 特定非営利活動法人 チームふくしま
代表者 代表理事 半田 真仁
助成額 184万円
選考理由

この団体は、東日本大震災をきっかけに仕事が激減した作業所利用者の工賃向上等を目的として、「福島ひまわり里親プロジェクト」を通して雇用支援を行っている。このプロジェクトは、福島県内5か所の作業所にひまわりの種の袋詰めなどを依頼し、その種を育てることで採れた種を再度福島に送る『里親』を募集し、継続的に種を販売するものである。

同団体は「理念と経営を意識する人材」の育成を目指して、2019年・2020年度に本助成を受けて人材育成計画に取り組んできた。育成対象職員は、震災伝承に取り組む他団体の視察を通して「何のために自団体が存在するのか」という根幹的な理解を深めるとともに、実務面でもスキルアップをはかった。

今回のフォローアップ助成では、外部コンサルタントの力も借りながら、属人的になっている業務分析と業務マニュアル作成を進め、スタッフ間での業務分担を推進する。また、テレワーク環境を整備し、柔軟な働き方の実現と生産性の向上を目指す。育成対象職員は学ぶ側から、仕組みを作る側になるが、団体運営の中心を担う者としてのさらなる成長を期待したい。

東日本大震災から年月が経ち、世代も変わっていく中で、同団体が取り組む伝承活動の重要性はさらに高まっている。事務局体制の強靭化が、団体の活動のさらなる発展につながることを期待する。

※助成対象件数  5件
※助成総額  923万円