わたしたちは今、一体だれのために社会はつくられているか、 社会づくりは何を基本としているのか、そんな素朴な疑問を改めて抱きつつあります。 それは豊かさの本質に気づき始めたからに他なりません。
21世紀を間近にひかえ、自然をふくめた環境と人間のよりよい関係、 人間と人間のよりよい関係の構築のために、 どのような制度や社会組織をつくりだせばよいのか、 そして21世紀の世界全体がめざすべきこと、 そこで日本の役割をきちんと果たすために何をしなければならないのか、 みんなで考えなければなりません。
わたしたちは、このような視点に立って、もう一度、 自分たちの生活の価値を練り直すとともに、 社会のしくみを生活者の発想に基づいて再編する新しい波をおこすことが必要だと考えました。
わたしたちが目標としている社会は、多様性と個人の自律性のある市民社会です。 公正で透明な開かれた市民社会です。 こうした関係を築くためには、企業や行政だけでなく、 個人の責任に基づく自発的な活動、 それを推進するNPO(民間非営利組織)の役割が大きくなってきます。
このたび、こうした人びとの豊かで活力ある活動を支え、 NPO全体の発展を願って「日本NPOセンター」を設立することにしました。 このセンターは民間非営利セクターに関わるインフラストラクチャー・オーガニゼーション(基盤的組織)として、 情報交流、人材開発、調査研究、政策提言などの幅広い活動を通じてNPOの基盤強化をはかり、 そして、市民社会づくりの共同責任者としての企業や行政との新しいパートナーシップの確立をめざします。
今、新しい時代を前にして、少子化・高齢化の問題をはじめ数多くの困難を抱えています。 しかし、その困難の向こうに、わたしたち自身の、わたしたちの社会の、 わたしたちの世界の可能性があることも知っています。 NPOの発展を21世紀の社会目標にして、人びとが希望をもち、 新しい社会づくりに挑戦することを支援していきたいと思います。
1996年11月22日