東日本大震災現地NPO応援基金(一般助成・第3期)第4回助成審査結果について

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東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]第3期第4回助成の審査を行い、
下記の通り決定いたしました。

助成先一覧

No. 団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
1 特定非営利活動法人 フードバンク岩手
岩手県 盛岡市 246
2 東北・広域森林マネジメント機構 岩手県 釜石市 286
3 特定非営利活動法人 りくカフェ
岩手県 陸前高田市 235
4 特定非営利活動法人 こども∞感ぱにー 宮城県 石巻市 269
5 一般社団法人 日本カーシェアリング協会 宮城県 石巻市 290
6 特定非営利活動法人 ポラリス 宮城県 山元町 232

*助成期間:2019年10月1日から2020年9月30日までの1年間
*このほかに助成対象団体のフォローアップ事業として300万円
助成対象件数:7件  助成総額:1,858万円(フォローアップ事業費を含む)
*第3期第4回助成は、日本NPOセンターが実施する東日本大震災の支援事業のいずれかのプログラムで支援対象となった団体を対象に実施し、2019年7月1日~7月5日までに応募のあったエントリーを対象に、事務局審査および本審査を行い助成が決定したもの。

審査総評

東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]第3期
審査委員(座長)萩原なつ子

1.審査の経過と結果
 東日本大震災現地 NPO 応援基金[一般助成]は、2016 年7月より、『被災者の生活再建を支援する現地NPOの組織基盤強化 ~未来をつくる持続的な組織をめざして~』をテーマに第3期の助成を開始した。第4回目となる今回の助成では、2019年7月1日~5日の期間に25団体からエントリーがあり、事務局による事前審査を実施した。
 事前審査では、「被災した地域や人々を対象とした自団体の活動の成果や課題を捉え、今後の活動に展開や見通しをもち、組織の課題と組織基盤強化の内容が明確になっているか」の観点から評価を行い、9団体を選出した。
 その後、9団体には事前審査で挙げられた課題や検討点を伝え、事務局とやり取りをしてもらいながら、自団体の組織基盤強化の企画提案書を具体化していただいた。この間に1団体から組織体制の変更による応募の取り下げがあり、もう1団体は期限までに企画提案書の作成が間に合わなかったため、最終的に7団体が本審査の対象となった。
 本審査では、審査委員3名に書面審査をお願いし、9月2日に本審査会を開催した。本審査の結果、6団体を採択とし、1団体は他の組織基盤強化プログラムの助成が決定したため団体への過度な負担が懸念されることから不採択とした。採択となった6団体のうち2団体については、本審査会で示された懸念点を伝え、補足説明資料を提出していただき、企画書への反映をお願いした。なお、一部減額での採択となった団体があった。
 また、本審査会では事務局による助成対象となった団体へのフォローアップを目的とした事業について審査を行い、採択を決定した。フォローアップ事業では、普段の相談対応に加えて現地訪問や報告会等を実施し、団体の組織基盤強化が着実に図られるよう伴走支援を強化する。
 以上の結果、第4回助成では、6団体の組織基盤強化事業と事務局のフォローアップ事業の合計7件、総額1,858万円の助成を決定した。

2.助成にあたって
 東日本大震災現地NPO応援基金を2011年3月に立ち上げ、多くの方々のご支援をいただきながら、被災者の生活再建や被災地の再生・復興に取り組むNPOへの助成活動を続けて8年が経過した。被災地では時間の経過とともに新たな“こまりごと”が浮上し、それに付随する様々な課題解決に向けた復興支援活動が求められている。助成対象となったNPOについては、これまでの実績を基礎に、地域の再生と活性化を目指した事業開発と人材育成につながるような組織基盤強化に努めていただきたいと願う。各団体の組織基盤強化事業への期待は「助成概要と推薦理由」を参照されたい。
 最後に、本審査会において、復興支援に携わるNPO自体が抱えるメンバーの高齢化、固定化、専門性を持ったスタッフや若手人材の不足、財政基盤の脆弱性など、地域の復興支援を行うNPOの支援のあり方をしっかりと考えていく時期であることを再確認したことを加えておきたい。

<審査委員>
萩原 なつ子(座長) 認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 代表理事
栗田 暢之 認定特定非営利活動法人レスキューストックヤード 代表理事
山岡 義典 特定非営利活動法人市民社会創造ファンド 理事長

[助成事務局]
認定特定非営利活動法人日本NPOセンター
特定非営利活動法人市民社会創造ファンド

助成概要と推薦理由

組織基盤強化テーマ 持続可能な活動を行うための基盤強化
団体名 特定非営利活動法人フードバンク岩手
主な活動地域 岩手県 盛岡市
推薦理由  本団体は社会的孤立や貧困などで困難な生活や将来に不安を抱く人たちを支援するため、フードバンクと困窮者支援に取り組み、岩手県内どこの市町村でも生活に困ったときに食料支援が受けられるような仕組みを構築した。陸前高田市や大船渡市では行政や市民と連携してフードドライブに取り組み、小中学生のいる準要保護世帯やひとり親世帯に食料品を無償で提供している。
 生活に困窮した世帯からのSOSの増加と共に、食品の譲渡量や必要となる活動資金が増え、フードバンク活動の持続性を高める能力や仕組みが必要となっている。今回の組織基盤強化事業では、事務局スタッフ全員が各地の団体を訪問したり研修を行ない、ボランティアコーディネートや広報、ファンドレイジングの強化、支援機関への適切なつなぎ方などを学習する。
 本団体の活動と運営は市民の参加と協力が不可欠なため、ボランティアコーディネートには特にしっかりと取り組み、スタッフの主体的な学習と行動を促され、被災地・東北という状況のなかでの戦略が見いだされることを期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 自伐型林業の担い手育成事業の自立運営化を目指した組織運営強化
団体名 東北・広域森林マネジメント機構
主な活動地域 岩手県 釜石市
推薦理由  本団体は、森林を活用した生業の再生と環境保全を両立する「自伐型林業」を実践し広めることで東北の復興に貢献し、持続可能な地域づくりを目指して活動している。こうした活動の一方で、被災地の山林は住宅再建のための伐採や人口減少・高齢化による荒廃が進んでいるのが現状である。こうした状況を解決するため、自伐型林業の担い手の育成を中核に事業を実施してきた。
 今回の申請では、この育成事業について、団体スタッフの能力強化を行うことで自立的な運営体制と財政の安定化を実現することを目的としている。これまで育成事業では、遠方からの講師に頼らざるを得なかったために開催費用が膨らんでいたが、それらを内部化することで収支の見直しが図られ、また、そのことによって収入を伴う新たな事業展開が見込めることが評価された。具体的な改善によって、自立化の成果が示されることが期待される。

 

組織基盤強化テーマ 足元固めて、笑顔で活動!
団体名 特定非営利活動法人りくカフェ
主な活動地域 岩手県 陸前高田市
推薦理由  本団体は、震災直後に岩手県陸前高田市に集まった住民・大学・専門家・企業の連携により、2011年8月に「まちのリビングプロジェクト」を発足した。翌年には法人化し、高台に仮設の建物を建設し、コミュティカフェとしての活動をスタートさせた。①誰もが楽しく集える場、②市内外を結ぶ懸け橋の場、③健康と生きがいづくりの場、の3つの事業を柱にして、住民主導のコミュニティスペースの運営や地域課題としての食育と介護予防事業に取り組み、コミュニティの再生・創造を促進し、復興まちづくりを展開してきた。
 今回の申請は、組織基盤の強化の中でも人材にスポットをあてたもので、改めてスタッフをはじめとする組織内部の人の育成と強化が主な目的となっている。新たに人材を育成することで持続可能な組織・事業づくりを目指したものであることが評価された。津波の大被害を受けた陸前高田において、住民主体によるコミュニティスペースが、変わりゆく地域に翻弄されずに、いつまでも維持できる体制づくりがなされることを期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 組織運営の体制づくりと認定NPO法人化に向けた取り組み
団体名 特定非営利活動法人こども∞感ぱにー
主な活動地域 宮城県 石巻市
推薦理由  本団体は、宮城県石巻市で活動し、津波被害により居場所を失った子どもたちの姿を見て、地域の人々と共に「子どもの居場所を作ること」を第一歩として活動がスタートした。「自分で遊びをつくり、自分の責任で遊ぶ公園」をコンセプトに、みんなの話し合いを基にして、自然の素材を用い、子どもの発想力や想像力が発揮できる公園づくりをしてきた。今では子どもだけでなく、多世代が集い、交流する場所へと移行している。
 今回の申請は、復興財源が減少する中、組織の財源バランスを見直し、支援性財源の割合を増加させる手立てを打つこと、中期目標をスタッフと役員全体で検討することにより、関係者全員が経営的視点を持つこと、の2つの改善を目指した点が評価された。組織が目指すものや将来の計画を組織全体で共有することが重要であることは言うまでもないが、共に中期計画を作ることで、組織の一人一人が運営感覚と経営感覚を持つことは重要であり、その点には大いに期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 移動の支え合いを広め続けるために組織を見直し再出発する事業
団体名 一般社団法人日本カーシェアリング協会
主な活動地域 宮城県 石巻市
推薦理由  本団体は、寄付で集めた車を活用し、宮城県石巻市の仮設住宅・復興公営住宅を中心に、「移動」を地域の支え合いによって確保する「コミュニティ・カーシェアリング」等の活動を続けてきている。公的支援による復興期間後も運営できる組織基盤の強化や、移動における課題を抱える他地域へのノウハウ移転が行える体制づくりが求められている。
 今回の申請は、組織における①事業計画づくり、②会議運営、③評価制度、④法務、⑤セキュリティ、⑥発信といった6つの側面において各専門家による伴走支援を受けて体制強化を行うもので、地道な改善による基盤づくりが評価された。通常の事業と並行して団体の組織基盤強化に取り組むための時間確保が重要となるが、スタッフ同士での協力と連携による取り組みのもと、より信頼性のある組織へと前進されることが期待される。

 

組織基盤強化テーマ 山元町と新地町の障害福祉エンパワメント促進事業
団体名 特定非営利活動法人ポラリス
主な活動地域 宮城県 山元町
推薦理由  本団体は社会的に弱い立場に置かれた人たちが安心して暮らしていける地域づくりをめざして、宮城県山元町と福島県新地町において障害者の日中活動支援や相談支援に取り組み、山元町ではアートプロジェクトを通じて、障がいのある人と地域の人たちが一緒に地域づくりを展開している。
 今回の組織基盤強化事業では、団体の施設において障害者の個別支援をおこなう専門スタッフのスキルアップに継続して取り組む一方で、スタッフが地域のなかへ入っていき、障害児者とその家族、住民が共に成長するコミュニティワークやソーシャルワークの実践力を養っていく。
 震災によって地域住民や行政の障害福祉に対する意識の低さと障害児者とその家族に対するケアの脆弱性が浮き彫りとなった。当事者と家族、住民、支援者、行政、地域が共に成長し変化する姿を喜びあい、分かちあうことができれば、持続可能な地域づくりにつながると期待したい。