東日本大震災現地NPO応援基金(一般助成・第2期)第8回選考総評

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第2期第8回選考結果のご報告(上記各ページのPDF版)

「被災者に寄り添う現地NPOの組織基盤強化のために」

選考委員長 島田 茂

【現地NPO応援基金の概要】

 東日本大震災発生から3年半が経過し、仙台市など復興住宅への入居が始まっている地域もあるが、未だに多くの方々が仮設住宅で生活をしている。東北特有の‘やませ’で霧に包まれた夜など、山間部で孤立した仮説住宅で暮らしている方々の寂しい生活が想われる。岩手、宮城、福島3県では計2,597人が行方不明のままとなっている。また、避難先などで亡くなる「関連死」は3県で3,000人を超えるなど、震災被害は今も拡大し続けている。特に、家族を失い悲しみが癒えず先行き不安な状況で暮らしている方々の心のケアや高齢者の孤独死を予防する見回りが求められている。一方で、現地に赴くボランティアは減少し、他県から支援をしてきた多くのNPOも撤退してきた。東日本大震災以降も地球の気候変動によって、多くの地域で台風や集中豪雨、土砂災害や竜巻被害をもたらし、9月末には御嶽山の噴火被害など、全国でのNPOによる支援活動も分散してきている。そのような中で現地NPOの存在は重要度を増してきている。

【一般助成の目的】

 [一般助成]は、「組織基盤強化」として、「今後の活動を充実していくために組織の力をつけていくこと」を目的とし、NPOの人材、資金、情報などの運営基盤の強化を主な助成内容としてきた。また、組織基盤強化につながる基礎的な支援ニーズ調査も助成の対象とした。助成の対象となる団体は、岩手県、宮城県、福島県において被災した住民の生活再建を直接支援する「現地NPO」または、それらの団体の「現地ネットワーク組織」あるいは「現地中間支援組織」とした。[一般助成]としては、応募団体のミッション・ビジョン・活動内容・実績を鑑みつつ、あくまで組織の自立的かつ長期的な運営基盤の確立を審査基準としてきた。

【第8回助成の経過】

 第8回助成(2014年10月~2015年9月迄の1年間以内)の助成金額は、1件当たり300万円以内(助成総額は新規助成・継続助成を合わせて1,300万円)で募集を行い、7月7日に締め切り、新規助成への応募が19件、継続助成への応募が5件、計24件の応募があった。選考委員は、全ての申請書に目を通し、各選考委員が事前審査を行い、7月29日に本選考委員会を行った。新規助成に関しては、震災以前から活動していた団体が3件、震災後一年以内に立ち上げた団体が3件、2年目以降に立ち上がった団体が13件で、そのうち4件の申請は活動実績が1年未満の団体であった。新規助成申請団体に関しては、活動実績が乏しい団体が多く、申請計画も組織基盤強化のためというより、助成金が無ければ活動資金が無いという団体もあり、団体として組織基盤強化以前の申請であった。そのため、選考委員の評価は一致点が多かった。継続に関しては、申請5件の内3件が助成2年目、2件が助成3年目の団体であった。審査の結果、【新規助成】候補2件、補欠1件【継続助成】候補3件(2年目 1件、3年目2件)が選出され、その後事務局による現地ヒアリングを実施した。
 9月4日の選考委員長決裁会合では、事務局によるヒアリングの結果報告を受け、新規団体の内1団体は申請内容と実情が異なり、助成対象外とした。継続に関して、助成2年目の1団体は、東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成]において、ほぼ内容が重複する助成が決定しており採択を見送った。選考委員会で選出した6件のうち、最終的に新規2件・継続2件を助成決定とし、助成総額900万円(新規助成500万円、継続助成400万円)を決定した。

【今後の方針】

 東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]は、震災直後の混乱の中で支援がスタートした第1期、そして、組織の持続性強化を目指した第2期8回と合計9回にわたり組織基盤強化のために支援を継続してきた。日本各地の個人・団体・企業、そして、海外から2014年9月末までの累計で約2億3,033万円の寄付を頂き、合計74件、総額1億8,083万円の助成を行うことができた。これまで寄付をしていただいた方々に心から感謝申し上げたい。
 現地NPOの多くは、復興にかける思いや被災した方々に寄り添いたいという個人の尊い熱意と行動力から始まり、仲間を突き動かし、グループや団体となり支援を開始した。自己資金だけでは支援活動の継続はできず、会費や寄付、そして、民間助成金や行政委託費を獲得して支援活動を行ってきた。残念なことに、震災後幾つかの団体は、活動に集中するあまり、組織の合意形成がされず、経理が不鮮明となり、関係者に不信感を与える結果となり、活動の継続が困難となっている。被災された方々の復興を伴走するためには、自らの組織が自立を目指していかなくてはならない。多くの現地NPOは、役員やスタッフ自らが被災している方々が多いなかで、自立していくことは困難であるが、尊い寄付や助成金などの支援を得るためにも組織としての民主的な合意形成(ガバナンス)や会計の透明性に努力をして欲しい。そのお手伝いをするために、今後現地NPO応援基金は、これまで支援をしてきた団体の組織基盤強化をするために、助成を継続する。


東日本大震災現地NPO応援基金(第2期第8回)選考委員

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