開催報告:オンライン報告会「コミュニティ発のITツール・デザイン~高齢化による社会課題をテーマに日米で解決策を考える」


2021年7月23日(金)にオンライン報告会 「コミュニティ発のITツール・デザイン~高齢化による社会課題をテーマに日米で解決策を考える」を開催しました。

本報告会は、2020年12月から約半年にわたって実施した「地域人材の日米交流プロジェクト​:高齢化社会におけるコミュニティを主体としたテクノロジーの活用」(助成:在日米国大使館)の一環として行いました。当日は、NPO関係者、企業、研究者等70名以上に視聴いただきました。

報告会では、米国大使館からのビデオメッセージの後、本プロジェクトのパートナーである米国Caravan Studios (キャラバンスタジオ)の「コミュニティ主体のテクノロジーデザイン」の手法の紹介と本プロジェクトの成果物(手法のガイドブックと特設サイト)を紹介し、後半では、個別ワークとオンライン・ワークショップを通じてこの手法を体験してもらった各地域のプロジェクト参加者8名から、プロジェクトを通じた学びや気づき、提言などの共有がありました。


第一部:プロジェクトの概要

プロジェクトの背景と概要の説明

<発表者>土屋一歩(日本NPOセンター)

主な論点:

  • 背景:過去5年におよぶ地域やテクノロジーをテーマにした日米の知見交流プロジェクトの実施
  • 課題意識:アメリカの現地で見聞きした新たな知見やノウハウを日本で応用するための次のステップ:パートナー:米国Caravan Studios;プロジェクト参加者:日本各地のNPOのリーダーのほか、行政、大学、シビックテック関係者8名
  • テーマ:日本の地域における高齢化問題
  • 目的~学びたいこと:
    • 米国Caravan StudiosのCommunity-Centered Design Approach(地域コミュニティ主体のデザイン)の手法
    • 日本の高齢化による地域課題への応用:解決策(テクノロジーを利用したソリューション)を地域でデザインする方法とそのプロセス(デザイン思考)
  • 大切にしたいこと:双方向の学び
    米国の取り組み⇔日本の取り組み&プロジェクト参加者⇔プロジェクト参加者

コミュニティ中心のデザイン手法の説明~本プロジェクトの成果物

<発表者>
Marnie Webbさん(Caravan Studios)
Sarah Washburnさん (Caravan Studios)

Caravan Studiosがアメリカ国内、諸外国で実施しているコミュニティ中心のデザイン(Community-centered design)の手法とプロセスの説明と、日本で部分的にオンラインで実施した本プロジェクトの説明がCaravan Studiosの両名からありました。
発表資料(Caravan Studios)PDF

主な論点:

Caravan Studios の手法:

  • Caravan Studiosはテクノロジーと地域のリソースを使い、地域の最優先課題を整理・解決するプロジェクトを行っている。過去10年間、幅広い地域コミュニティと共に、課題の特定と課題解決に使えるテクノロジー(技術)の介入という参加型手法の開発に取り組んできた。
  • テクノロジーの介入は幅広い。アプリやソフトの開発という意味だけではない。地域の人たちが欲しているもの、データの入手といった場合もある。
  • 自分たちは経験から多くを学び、アクションを通じて手法の改善・洗練化。その経験から生まれたのが、5つの基本的ステップ。

① GENERATE(生み出す):地域の中でテクノロジーを活用した解決方法の機会についてのアイデアを可能な限り多く出し、地域コミュニティで最良だと考えるものを選ぶ。
② DESIGN(デザインする):それらの機会に対するテクノロジーの介入方法について手書き(※オンラインでは写メなど)でローファイ・プロトタイプをデザインする。
③ SELECT(選ぶ):このステップでは出された可能性から、皆で何ができるのか決め、取り組めるものを一つ選んでいく。
④ BUILD (構築する):開発者にアプリのコーディングを依頼。ただ、重要なのは、人々をまとめ一緒に仕事をすること:チームを編成し、データを集め、取り組みを成功させるためのテクノロジーの構築。
⑤ USE (使う):構築されたアプリ製品を使うステップ。次にどういったアイデアが生まれ、どう展開・変化していくのかを使う側と一緒に考えることが重要。

  • 皆が集まり、創造性を発揮して一緒に作業し、コミュニケーションをとる。アプリがデザインされた時点で、参加者がお互いに見せ合い、議論し合うことが鍵。
  • 参加者が作成したアプリを一枚のポスターにまとめ、図書館やコミュニティセンターなど目につく場所に展示。一般の人たちがアプリにアイデアを出したり、人気投票や意見箱などでフィードバック。そこから構築が始まる。

本プロジェクトへの手法の応用と学び:

  • 初めてのオンライン体験。日本NPOセンターと日本側参加者と共に、まずやってみることから開始。たくさんの学びがあった。相違・共通点を学び、信頼構築をする中で、プロジェクトをデザインするための共通言語が生まれていった。参加者のさまざまな視点や専門性から学ぶことが大きかった。参加者自身もワークショップのさまざまなインプットで変わっていった。
  • この共同プロジェクトはまさに「知識の共有」だった。2つの団体の知識を共有し、私たちの手法を日本の地域のリーダーに共有することが目的だったが、私たちも手法が日本でどう適用されるかを学びたかった。どんな方が共感を得て、どうすると手法をより良いものにできるのかを考える機会になった。
  • 言語・文化が違う中で、こちらがやりたいことをきちんと伝える明確なメッセージが重要。この手法を参加者に学んでもらい、自分の地域のやり方に合った形で使ってもらえればと考えている。ワークショップを通じて深く考えることで、参加者は自分のアイデアを前進させたいという気持ちが強まり、オーナーシップ(主体感)が強くなる。
  • コロナが起こり、これまで行ってきた対面式ワークショップからオンラインで実施することになったため、ファシリテーション方法を考え直し、以下のステップで実施した。

①ランドスケープ(状況)マッピング:地域のことを調査して、知る段階。地域の課題やリソース、代弁者などをオンラインで調べまとめる。通常我々が行うが、今回は各参加者にやってもらった。結果、参加者は地域のことを深く学び、他の参加者も共有されることで一緒に学ぶ経験となった。
②生み出す:デザイン・クエスチョンをつくり、その問いへの回答(アイデア)をブレインストーミングし、用意されたフォーマットにしたがってアイデアの重要性を評価するステージ。対面ワークショップではチームで行うが、今回個人ワークで行った。参加者は自分がやっていることが正しいのか、他からの意見やフィードバックがない中で孤独感を感じていることを我々は学んだ。その部分は日本NPOセンターが別途コーチング・コールを行ったり、ワークショップ中参加者の意見やアイデアを聞く時間を設けて補った。
③デザインする:製品(アプリ)をどんな人がどう使うのかを深く考え、アイデアを盛り込んだローファイ・プロトタイプをデザインするフェーズ。技術者としての背景を持っていないことを前提に設計されている。このステップもコラボレーションを重視。参加者と意見交換して、さらにアイデアを磨いていった。たとえば、参加者はZoomのブレイクアウト・ルームで分かれてそれぞれのアイデアをプレゼン後、ビデオ・音声を切ってもらい、他の参加者がコンサル役としてより良いものにするための話し合いをした。オンライン活用を工夫することで、他の意見からアイデアの創造性を高めるだけでなく、チームとしての一体感の構築につながった。 

本プロジェクトの学びの成果物:

ガイドブック(PDF)このプロジェクトで使ったワーク用パワーポイント資料をまとめ直したもの。他の地域がこのプロジェクトで行うプロセスを学べる。

特設ウェブサイト本プロジェクトを紹介する日本語と英語のバイリンガルサイト。手法の各プロセスの紹介と本プロジェクト参加者が作成した8つのアプリ(ローファイ・プロトタイプ)を掲載。訪問者はアプリへのフィードバックが可能。上述のガイドブックやワークショップの手引きもダウンロードできる。
https://www.jnpoc-caravanstudios.org/

プロジェクト参加者の市川希美さんによる当日のグラフィックレコーディング


第二部:パネルディスカッション~日本側プロジェクト参加者を交えて

<パネリスト>

  • 南信乃介さん (那覇市繁田川公民館 館長 / 特定非営利活動法人一万人の井戸端会議 代表)
  • 秋田大介さん (神戸市役所 エネルギー政策課長)
  • 宝楽陸寛さん (特定非営利活動法人SEIN コミュニティLAB所長)
  • 小柴徳明さん (黒部市社会福祉協議会 総務課 課長補佐/経営戦略係長)
  • 石本貴之さん (有限責任事業組合まぢラボ 研究員 / 全国コミュニティ財団協会 事務局長)
  • 小山弘美さん (関東学院大学社会学部准教授)
  • 大野 覚さん  (特定非営利活動法人茨城NPOセンターコモンズ 常務理事 / 事務局長)
  • 市川希美さん (一般社団法人シビックテック・ラボ / 市川電産デザイナー)

<モデレーター> 土屋一歩(日本NPOセンター 調査・国際チームリーダー)

第二部では、Caravan Studiosの「コミュニティ中心のデザイン手法」のプロセスを体験した日本のプロジェクト参加者8名に、どういった学びや気づきがあったのかをお聞きしました。

主な論点:

■ ランドスケープ・マッピングについて
地域コミュニティの状況マッピングで、人口統計情報や、地域のリソース資源や高齢者の代弁者、高齢者が集う場所などといった項目を主にオンラインでリサーチしてもらったが、このプロセスでどういった発見や気づきがあったか?

  • 普段はワークショップの主催者側なので状況把握の重要性は分かっている。通常のワークショップでは「課題解決」を前提にしてしまうが、まず現状の把握や可視化ができて良い(小柴さん)
  • 助成金の申請書などで課題の整理を書くが、今回面白かったのは、いくつか用意されていた項目の中に、地域の高齢者の擁護者・代弁者は誰か?という問い。アメリカではNPOは社会的弱者の声を代弁して発信するという考えがある。権利擁護の視点を意識して取り組む姿勢が日本でもっと必要だと感じた(大野さん)

■ 生み出す:デザイン・クエスチョンとアイデアの作成と絞り込み
状況リサーチに基づいて、デザイン・クエスチョン(「私たちは、どうすれば○○できるか?」という形式の質問)を作成して、その質問に答えるアイデアをブレストとリスト化をしてもらった。問いを自分で作成して、アイデアをブレストする過程はどうだったか。他の参加者の考えやフィードバックは役立ったか。

  • 地域に住む人たちを想定して4つのパターンでデザイン・クエスチョンを作った。時間もかかったが、対話型のコミュニティ・デザイン的なアプローチが増えているが、現場の話し合いの中で結論ありきになり、共通の価値観の見える化が疎かになる。このアプローチは、ワークに沿って課題を見える化するので、後で戻ることができる(宝楽さん)
  • 全ワークの中で一番難しく、かなり悩んだ。課題解決に導く問いを敢えて立てることを普段あまりしないので、そのプロセスも含めて新鮮だった。問いのクオリティの確認や整理をしてくれるパートナーがいるとより効果が発揮されると思う(南さん)
  • 問いの立て方が重要。地域課題はいくらでも出てきたが、問いにいろいろレベル感がある中でどれを選んだら良いのかに悩んだ。”本質的”な課題を解決しようとすると問いが大きくなりすぎ、咀嚼し過ぎると小さくなる。最終的にアプリを作ることにも引っ張られて、本質的な問いから離れてしまったかもしれないという反省点がある(秋田さん)
    • 問いの立て方の練習が大事だと思う。広すぎると対応しきれなくなる。良いデザイン・クエスチョンはあまりプロダクトにフォーカスし過ぎていない、一定の幅があって創造性の余地があるもの。きちんと問いに答えるアイデア数を制限するためにも一定のフォーカスを意識した上で質問を立てるのが良いと思う。(Sarahさん)
    • どの問いが正しいかはわからないので、アイデアをたくさん出すこと。出たアイデアから質問を修正する場合もある。地域コミュニティが何を求めているかによって、問いの広さや狭さは変わっていく。時に特定の具体的なソリューションを求めていることもあり、大きな変化を起こすことは必ずしも必須ではない。(Marnieさん)

次に出されたアイデアを整理・選択する一助として、いくつかの評価項目が入ったアイデアの採点表を使って、得点の高い3つのアイデアに絞ってもらった。ワークショップではこのアイデアを発表し合い、他の参加者が投票したり、フィードバックをした。この整理の仕方はどうだったか。

  • 他の参加者は、採点表で最高得点が出たアイデアとは違うものに投票して、評価が違っていた。実際に地域のアクションプランづくりの会議で聞いてみたら、他の参加者が投票したアイデアが良いという反応があり、ニーズの高さからそのアイデアに絞った(南さん)
  • 単純にアイデアが面白い・面白くないという視点ではなく、アイデアによってインパクトを受ける人数や意識向上につながるかといった5つの指標を使って採点ができたことが新鮮だった。(大野さん)
  • 指標が評価軸になるが、具体的なものと抽象度が高いものがあった。地域の人たちがつながれることも重要な指標だと思う。ケースによって指標を変える可能性もあるという気づきがあった(石本さん)

デザインする:ローファイ・プロトタイプ
次は、選んだアイデアをローファイ(簡易版)プロトタイプに落とし込み、デザインするというステップ。その際、自分の製品(プロトタイプ)を使ってくれる地域のユーザーを想定するために、マーケティングの分野でよく使われるユーザー・ペルソナという手法を、地域の高齢者に当てはめて作ってもらった。ペルソナづくりは、その後のプロトタイプのデザインやアイデアに何か役立ったか。

  • 地域でワークショップをする時にデザインするところまでいかない。今回はデザインするところまでいくので、そこが重要だと思った。また高齢者といってもターゲットが広い。具体的な人をイメージするユーザー・ペルソナでターゲットを落とし込むことで、アイデアが具体化しやすくなる(小柴さん)
  • ユーザー・ペルソナをつくるのは常識。今回ニュータウンでの高齢者の買い物難民をテーマに、支援を受けたい高齢者と支えたい元気な高齢者をマッチングする双方が使いたくなるアプリをデザインしたが、実際の利用者の顔が見えないと本当の支援ができないし、それによって支援の仕方が変わってくる。地域で本当の課題解決に結び付けるためにはユーザー・ペルソナ設定は重要。今回改めて勇気をもらえた(宝楽さん)

次に、技術面での実現可能性をいったん置いて、自分のアイデアをアプリに落とし込むローファイ・プロトタイプを作ってもらった。実際にどういったアイデアを盛り込んだかを、宝楽さんより作成した買い物サポートアプリCHAYAMAについて説明があった。

■ プロジェクト全体のふりかえり
今回のプロジェクトは、当初オンラインを使いつつも、最後はCaravan Studiosを招いてオフラインで実地のワークショップを行う予定だったが、コロナの影響で、すべての工程をオンラインで行うことになった。オンライン経験をどう感じたか。

  • すべてをオンラインでやれるのかと正直思ったし、実際個人ワークが多かったが、結果的にそれが良かった。ワークショップを複数人でやると、どうしても主体性が薄れてしまう。連携や協働、マルチステークホルダーなどみんなでやる前提が多い中、一人で考えられたのは良かった(小柴さん)
  • オンラインだからこそ参加できた。日程調整はあるが、移動時間を削減できるのでこの場にいられた。オンラインはネガティブなものではない(市川さん)

今回のプロジェクトでは、皆さんには、地域の代表という立場でコミュニティ主体のデザイン手法を体感してもらった。日本の地域で、どういった場面でどのように活用を想定できるか?この手法に関心をもったり、活用してみたいと思った方々へのメッセージやアドバイスもあれば。

  • NPO向けセミナーなどを主催して思うのは、人は変化を嫌い、弱みを出すのは勇気がいる作業だということ。その意味で新規の事業開発や団体設立、大型助成金申請の相談のタイミングでこのワークショップを提案できる。NPOだけでなく、社協や行政にもやってもらえれば。手段が目的化している団体に、自分たちは何を優先すべきなのか、地域に何を貢献できるのかを見つめ直してもらいたいと思った。いま実施している事業を改めて考えてもらう場をつくりたい(大野さん)
  • 中山間地域の住民自治をどう深化させていくかの仕事をする中でのポイントは、どう決めていくかのプロセス。共通課題まではわかっても、それをどう解決するのかを問いの形で整理したり、アイデアを出したり、評価したりが重要。ペルソナづくりがポイントだと思った。誰のために何をやるのかがより具体的になれば、当事者意識が高まり、地域の連帯感につながる。住民自ら意思決定して行動するプロセスの中に、こういったことを丁寧に挟むことで、物事を決めたり、行動に移しやすくなる効果があると期待。アプリづくりにこだわらず、いろいろなアクションを生み出すことに活用できるのではないか(石本さん)
  • このワークショップは組織内で使えるのではないかと思っている。頭の中で考えていることを社内で見える化することが重要。「社会福祉協議会は」や「地域は」というのは本当の主語ではない。デザイン・クエスチョンで良かったのは、それを「私たちは、どうすれば○○できのか」と言い換えることで、責任感と主体性を感じられる。その主語で考えていくと、良い事業が見えてくると思うので、社内でやってみたい(小柴さん)
  • 行政が仕掛けて総合計画や公共施設が作られた後、その先実際誰がやるのかなど、その後のプロセスが難しい。このプロジェクトで勉強になったのが、デザインする段階で、自分たちですべてやるのではなく、テクノロジーを使って一部担ってもらうという新しい発想。実際に作成したアプリをどう運用するのか、この先のプロセスを見てみたい(小山さん)
  • 地域のコーディネーターやサービス提供者が皆やるべきことではないか。とくに「ランドスケープ」や「生み出す」のプロセスは、コーディネーターが自分のためにもまずやっておくべき。6年前に日本NPOセンターのプロジェクトでCaravan Studiosに訪問して刺激を受けたからだと思う。その意味で今回良い手引きができた。コミュニティがどう主体的に課題解決していくのかという手法に、ニュータウンの人たちを主語に、生活者目線でアプローチした。今回集まったメンバーは実に多様で、そこを中心にどう課題解決できるのかを学べた。日本中のコミュニティでランドスケープやデザイン・クエスチョンについて意見交換ができると、それぞれの地域の課題解決の底上げにつながるのではないか(宝楽さん)
  • 構造化された丁寧な流れが作られているので、とてもやりやすかった。私は行政でオールジャンルの課題に取り組んでいるので、残っている社会課題は複雑。それを因数分解してペルソナを設定して、細かく切り分けた作業の中でプロダクトを作っていくが、一方的な因数分解だと視野が狭くなる危険性がある。複雑な問題を単純化すると、手段が目的化してしまうリスクがある。どこかのタイミングで問題に何度か立ち返り、生み出されたプロダクトが本当に使えるのかを確認する必要がある。この往復ができれば面白いものになる(秋田さん)
  • やってみたくなると思わせるプロジェクトだった。この手法は個人のワークやアイデア、動機が入る余白があり、地域で小さなアクションを起こすのにとても向いている。生活圏でさまざまな関係者が集まるところでワークをやると、アプリまで行きつかなくても、そのプロセス共有の中で、この部分を自分はやってみたいと思う人たちが増えるきっかけになるのでは。それを形にしたり、継続させるにはコーディネーターの存在が必須。コーディネートする人がやって理解した上で、身近な地域で実践してみる。それ自身が学びのプロセス(南さん)

プロジェクト参加者の市川希美さんによる当日のグラフィックレコーディング

質疑応答

Q:「地域」や「コミュニティ」という用語は、日本とアメリカで定義の違いがあるのか?
A:通常アメリカでは、「地域」は地理的なもの。「コミュニティ」はそこに住む人たちのことを指している。コミュニティというとき、参加者だけでなく、そこに住む、言語、文化、課題などを共有する人たちを含んでいる。両者を交換可能な用語としては使っていない(Sarahさん)
「地域」が日本でどう使われているのか興味深かった。アメリカでは、町、市、郡、州、国という構造で、それぞれ使えるリソースやソリューションを考える人も違う。今回のプロジェクトで日本の地域の概念について少し学べた。県や小学校区、ニュータウンといった日本独自の考え方がある。そして地域ごとのコミュニティ、つまり共通の話題や課題をもつ人たちのことを考え、そのコミュニティに対してのソリューションを考えていかなくてはいけない。地域の規模によってリソースやアプローチが違ってくるからだ(Marnieさん)

Q:今回のアイデアの中で実際にアプリの開発や計画が始まっているものがあるか?もしあれば、実行する中での課題や難しさなどについて聞かせて欲しい。
A:秋田さんのアイデアが別のプロジェクトで一歩前進していると聞いている。
(以下このプロセスの次のステップやその中での課題についてCaravan Studiosが回答)
次のステップは、先ほど共有したように一般の人たちからアイデアについてどう思うのか、ユーザーから何が改善できるのかのフィードバックをもらう「選ぶ」の段階になり、そのフィードバックをもとに何ができるのかを考える。ほとんどのケースで計画の実行で問題になるのが資金だが、その前にまずこの「選ぶ」の段階をクリアする必要がある(Marnie さん)

最後に

参加者の市川希美さんから、報告会中に描いてもらったグラフィックレコーディング(本ページに掲載)を説明いただいた後、主催者側からそれぞれふりかえりの挨拶を行った。

Caravan Studiosから:本当に素晴らしい経験になった。これまで対面で行っていたことをどうオンラインでやるかだけでなく、プロジェクトを通してコミュニティでやっていることを感じてもらえるようにすることが重要だった。私たちは、参加者がアイデアに持ち込む思慮深さやフィードバックを受け止めることを学んだ。またランドスケープを参加者自身がきちんと行うことの重要性も発見した。このような学びの機会をもらえたことに感謝したい。プロジェクト参加者だけではなく、本日視聴してくださった皆さんにも感謝いたします。

日本NPOセンターから:プロジェクトを始めるにあたって、主催者としてワクワクしつつも、コロナ禍によりすべてをオンラインでやることへの不安も正直あった。ただCaravan Studiosの手法は体系化されていて、普遍性を感じた。毎週オンラインでミーティングを行い、この手法をいかに日本の文脈に合わせ、オンラインで創造的に行えるか議論したが、ここにも一方通行ではない日米間の交流があったかと思う。プロジェクトの参加者はそれに応える形で主体性をもって取り組んでもらえた。デザインされたローファイ・プロトタイプは多種多様で、地域の実情に即しつつ、他地域でも展開可能な汎用性のあるアプリ。特設サイトを訪問いただきたい。最後にこの日米プロジェクトを可能にしてくれたアメリカ大使館にも感謝したい。いったん本プロジェクトは終了となるが、今後も日本NPOセンターは、地域とITの可能性について取り組んでいきたい。