【開催報告】第3回「Otemachi Discovery Salon 社会人が“社会のこれからを創る”ために、新しい参加の活動を学ぶ」

2021年9月に第3回「Otemachi Discovery Salon」を開催いたしました。第3回のテーマは、「社会人が“社会のこれからを創る”ために、新しい参加の活動を学ぶ」です。特定非営利活動法人二枚目の名刺 代表の廣 優樹さんからお話しいただき、意見交換を行いました。

先ずは、民間企業に勤務しながら立ち上げたNPO法人二枚目の名刺のミッションについてお話いただきました。


『”2枚目の名刺”は、組織や立場を超えて、社会のこれからを創る二枚目が持つ名刺であり、「新しい生き方、学び方、社会とのつながりの形」という意味合いを込めての名称です。二枚目の名刺のビジョンは、社会人が当たり前の選択肢として2枚目の名刺を持ち、社会の変化を仕掛けることです。
団体を設立した2009年当時、企業サイドは社外でのボランティア活動について理解が少ない状態でした。ボランティアをする暇があるなら仕事に集中しなさいという風潮でした。しかし、社会貢献活動もCSRからCSVへと変化していきました。当時の25~35歳の若手社員は、社会課題ネイティブでもあり、社内で閉塞感を感じ、社会を創る自由な活動を求めて、会社外へ踏み出し始めたのです。

その後ミドル層へも同様の動きが広がりました。人生100年時代、定年延長という環境の変化の中で、社会の中での自分の立ち位置や社会への還元といった考え方のもと、首都圏だけでなく地方都市へも広がり始めたのです。
「組織と個人の関係性の変化」を振り返ると、今後会社が社員に社会貢献をどのように促していくのか、とても重要なことと考えます。二枚目の名刺は、自身の価値観(やりたいこと、大事にしていること等)の定義或いは再定義を行い、活動に取組むきっかけを提供します。継続的な活動の必要性を感じています。』

二枚目の名刺には企業のCSR・社会貢献活動担当者は、社員参加について例えば下記のような悩みが寄せられます。

・サステナビリティと言っても実感がわかない社員が大半である
・“社会貢献的”なことと自分の担当する事業は、別物で距離があると認識されている
・経営陣も実際には本腰が入っていないこともある
・社員ボランティア制度はあるけれども活動が頭打ちになっている
・ボランティア活動を支持する層が社内で増えず、一部の意識の高い人たちの取り組みになってしまっている

この状況を打破するためには社員が社会課題や社会課題に取り組む人に触れ、当事者意識を持つしかけが必要です。

二枚目の名刺が行っているしかけは、「サポートプロジェクト」です。「サポートプロジェクト」は、NPOがプレゼンテーションを行い、共感した団体に手をあげたボランティア同士でチームを組んで支援活動を行います。期間は3~4か月、週に5~10時間の個人作業と2時間程のNPOやチーム内のMTが活動時間の目安です。これらの活動中、参加者個人の変化も重視します。そのため、各チーム毎の振り返りや各チーム間での学びの共有を目的とした中間報告会と最終報告会を実施します。これらのしかけの結果、「社会課題に向き合う団体との繋がりにより価値観を揺さぶられるようになった」と、プロジェクトに参加したボランティアの96%が自分の変化や成長を感じています。

チームにはプロジェクトデザイナーとしてコーディネーターが伴走します。このプロジェクトデザイナーの役割が重要で、1つの企業から複数の社員を受け入れる場合は企業の担当者の方にプロジェクトデザイナーの役割を担っていただくことも歓迎しています。社員を送り出す企業側も、社会貢献・人材育成・キャリア自立など様々な動機があり、それを社内で促進するためです。

最後に、企業の社会貢献としての社員参加の促進についてメッセージをいただきました。

・個人の変化が期待できる実働プロジェクトで当事者を増やし、社内循環させていく。それを体感できる機会が求められている
・社員参加のねらいに沿ったNPO(ソーシャルインパクト、レピュテーション、市民性創造等)をしっかり選ぶことが重要
・人事との連携:社会貢献のストーリーとして部署を超えて越境し社員への機会を提供すること
・プロジェクトに参加した社員へのプロジェクト資金の拠出や寄付原資拠出や社員指定先への寄付のしくみがあるといい
・まずはマネジメント担当者がプロジェクトに参加することが重要

個人の「社会の役に立ちたい」と思う割合は、この30年の間に47%⇒65%と増えている。一方でボランティア活動への関わりは25~26%と変化はないことから、意識はあるものの何をしたらよいのか分からないといった人々がいるのではないかという廣さんの仮説が紹介されました。また、経済産業研究所による「幸福感と自己決定-日本における実証研究(2018年)」によると「健康、人間関係に次ぐ変数として所得、学歴よりも自己決定が強い影響を与える」という調査結果も出ています。最後は、ボランティアによる社会貢献と人材変化のしくみの活動の輪を広げ、企業の社会貢献として積極的に取り組んでいただきたいとメッセージで締めくくられました。

第3回も参加者から多くの質問をいただきました。ご参加頂きました皆さま、有難うございました。

次回以降も多くの皆さまのご参加をお待ち致しております。

■第3回 ゲストスピーカー

廣 優樹( ひろ ゆうき)さん

特定非営利活動法人 二枚目の名刺 代表理事

本業で持つ1枚目の名刺のほかに、社会を創ることに取組む個人名刺を”2枚目の名刺”と位置づける。NPOと社会人をつなぎ、社会人の変化・成長を促すことで、ソーシャルセクター、企業の発展を同時に後押しするモデルを提唱。現在、新しい働き方、人材育成のあり方として、企業、行政、アカデミア等多方面から注目。2009年二枚目の名刺立上げ(2011年NPO法人化)、商社勤務の傍ら自らも2枚目の名刺としてNPO代表を務める。4児の父。慶應義塾大学卒業、Oxford 大学Said Business School MBA、2002年日本銀行入行、金融機関・金融市場モニタリング、経済調査等を担当。この間、2005~2007年に、経済産業省に出向し金融制度設計に取組む。2014年より、商社にて食料部門の海外事業開発・投資を担当。