【開催報告】第4回「Otemachi Discovery Salon 海外にルーツをもつ子どもへの日本語の学びの場から多文化共生の実現を考える」

2022年7月に第4回「Otemachi Discovery Salon」を開催いたしました。第4回のテーマは、「海外にルーツをもつ子どもへの日本語教育の現場から多文化共生の実現を考える」です。NPO法人多文化フリースクールちばの白谷秀一さんと社会福祉法人さぽうと21の矢崎理恵さんからお話しいただき、意見交換を行いました。

白谷さんからは、先ずは、千葉県の外国人児童生徒の増加に伴い日本語の指導を必要とする児童生徒数が、小学校から高校生までいずれも増えている統計情報をご紹介いただきました。一方で、母国の義務教育を卒業してから来日したり、日本で中学校を卒業したけれども日本語の習得が十分にできなかった外国にルーツのある子どもたちが、日本語を学ぶ場所がほぼ存在しない現状をお話しいただきました。

NPO法人多文化フリースクールちばは、この課題を背景に「日本語を必要としない親と子どものための進路ガイダンス」を千葉県内のNPOと連携して開催し、千葉駅近くの教室を拠点として1日4時間、年間200~220日、日本語及び受験用の授業を中心に運営しています。現在、団体が抱える課題として、増えるニーズに対応する教室や講師の確保があります。また、子どもたちは通学定期が申請できず通勤定期を活用せざるをえない場合があり、交通費支援についても社会的認知が十分でないことも紹介されました。

(写真)左:NPO法人多文化フリースクールちば 白谷 秀一さん 右:社会福祉法人 さぽうと21 矢崎 理恵さん

矢崎さんからは、日本で生活するインドシナ難民、条約難民、中国帰国者、日系定住者とその子弟の定住と自立に向けた支援を行う団体の設立経緯や概要を、まずご紹介いただきました。難民は、「目的をもって」「日本を選んで」来日したわけではありません。よって、経済的にも精神的にも困難な状況から「生活」をはじめるという困難な状態にあり、このような事情が一般的に理解されにくいことをご紹介いただきました。学習支援では、「日本語教育の形」にとらわれず、「学習者の求め」を最優先にしていること、こだわりや3つのキーワードを紹介いただきました。1つ目が、「一人も取り残さない」。現在の拠点は、仕組み、理解者、資金集めによって5つ展開。企業財団などからの助成をうけ、ボランティアによる学習支援で運営しています。近年は、新型コロナウイルスの感染拡大に応じて、企業の社員ボランティア等の協力を得てオンライン学習支援も新しくスタートしました。ロヒンギャ難民を対象とした「たてばやし教室」も新設しています。キーワードの2つ目が、「本領発揮」。ギターが得意な人がいたらギター部をつくり、ネイリストを志す人のためには、その練習の機会を学習支援の場につくります。参加を促しつつ、無理なく自分らしくできることに一緒に取り組んでいます。3つ目が、「人と人が繋がる」こと。人の繋がりから学びの場への参加の継続を促すのです。

質疑応答では、ボランティアとして関わる上でのポイントなどが共有されました。また、参加者の皆さんから、今までに触れる機会の少なかった海外にルーツのある子どもやその親の日本語の学びの現場の実情を学ぶ良い機会となりました、との感想をいただきました。

■ゲストスピーカー

白谷 秀一(しらたに しゅういち)さん

特定非営利活動法人 多文化フリースクールちば 理事長

元高校教諭。活動拠点は千葉市。2002年から始めた進路ガイダンスの中で、母国や日本の中学校を卒業したものの日本語力が不足で高校に進学できなかった生徒のために、多文化フリースクールを設立。「日本語を母語としない親と子どものための進路ガイダンス」や地域文化交流事業にも取り組む。

矢崎 理恵(やざき りえ)さん

社会福祉法人 さぽうと21 学習支援室コーディネーター

大学卒業と同時に青年海外協力隊に参加、フィリピン外務研修所で日本語教師のキャリアをスタートさせる。帰国後、主として日本語学校で予備教育の日本語教育に携わる。学生時代から、「国際協力」と「日本語教育」が関心をもつフィールドであったことから、2006年から社会福祉法人さぽうと21において学習支援室コーディネーターとなり、難民の自立支援の活動にかかわるようになる。現在もコーディネーターを続ける一方で、中国帰国者支援・交流センター等で日本語教師を続ける。